目次Contents
なぜ鬼がいない間に洗濯しないといけないの?
まず、なぜ「鬼」がいない間に洗濯しないといけないのでしょうか?実は、このことわざの「鬼」は、単に怖い存在を表すだけでなく、厳しい人や口うるさい人という意味も含まれています。
また、ここでいう「洗濯」とは単純な家事ではなく「命の洗濯」という意味だとする説もあります。命の洗濯とは、「日頃の苦役(くえき)から解放され自由に過ごす」という意味。昔は、家の中で女性は特に立場が低く、夫や姑に対してつねに気を遣って生活していました。「鬼」、つまり気兼ねする人がいない間、思い思いに過ごしたいという気持ちを表した慣用句が「鬼の居ぬ間に洗濯」なのです。
「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味、例文
「鬼の居ぬ間に洗濯」の使い方や意味を、例文とともにご紹介しましょう。
「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味
先述のように、「鬼の居ぬ間に洗濯」とは、怖い人や気兼ねする人がいない間に思う存分くつろぐことという意味です。日常生活における息苦しさや緊張から解放され、自由な時間を過ごしたいという普遍的な人間の願望を表現した慣用句なので、家族が留守の間にこっそりと友達を招いたり、上司が出張中に仕事をサボったりすることを表現する際に使われます。
例文
1.奥さんが実家に帰省したので、気兼ねなくだらけた生活をしよう!まさに「鬼の居ぬ間に洗濯」だ。
2.いつも口うるさい姑の外出時だけは、「鬼の居ぬ間に洗濯」とばかりにのびのびとした時間を楽める。
「鬼の居ぬ間に洗濯」の類語
「鬼の居ぬ間に洗濯」と同じ意味を持つ慣用句を2つ紹介します。
類語1
「鬼の留守に豆を炒る」
本来は「鬼がいない間に豆を炒って楽しもう」という意味の言葉。これが転じて、主や責任者がいない間に、勝手気ままに行動することを表す言葉になったようです。また、「鬼の留守に豆拾い」という言葉もあります。
類語2
「羽根を伸ばす」
私たちも普段からよく使う言葉ですよね。
鳥が羽根を広げて自由に飛ぶように、しがらみや束縛、やるべきことから解放されて、思い思いに楽しむことを表す言葉です。また、忙しい毎日や日々のストレスから解放されて、リフレッシュするという意味合いもあるようです。
「鬼の居ぬ間に洗濯」の対義語
「鬼の居ぬ間に洗濯」と反対の意味をもつ慣用句をご紹介します。
対義語
「池魚籠鳥(ちぎょろうちょう)」
池の中にいる魚や、籠に入る鳥が拘束されて不自由であるように、自由がなく束縛されている状態を表す四字熟語です。
比較的古い言葉で、具体的には主に宮仕えの役人のことを指し、不自由な暮らしのことを籠の中の鳥にたとえた言葉のようです。
「鬼の居ぬ間に洗濯」に似た表現は英語にある?
英語にも、「鬼の居ぬ間に洗濯」に似た表現があります。
When the cat’s away, the mice will play.(猫がいないと、ネズミは遊ぶ)
直訳すると「猫がいない間、ネズミが遊ぶ」となりますが、これが日本の「鬼の居ぬ間に洗濯」とほぼ同じ意味です。
他にも、「Strike while the iron is hot」 (鉄が熱いうちに打て) や 「Make hay while the sun shines」 (日が照っている間に干し草を作れ) などの表現も、状況を最大限に活用するという意味で、「鬼の居ぬ間に洗濯」に通じるものがありますね。
まとめ
「鬼の居ぬ間に洗濯」は、日本語特有のおもしろい慣用句のひとつ。
あまり頻繁に使う言葉ではないにしても、厳しい先輩や上司が席を外すと気分的にリラックスできたりするなど似たシチュエーションはたくさんありますよね。知識の一つとして覚えておくと、いざという時に役立つかもしれません。
TOP画像/(c)Adobe Stock
コマツマヨ
WEBサイトライティングをメインに、インタビュー、コラムニスト、WEBディレクション、都内広報誌編集、文章セミナー講師など幅広く活動。