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「俎上」の意味とは?
「俎上」とは、まな板の上という意味の言葉です。「俎」は音読みでは<そ>、あるいは<しょ>と読みますが、訓読みだと<まないた>と読みます。
俎上(そ-じょう):またいたの上
俎上(まな-いた):《「真魚板」の意》包丁で切る際に下に置く板や台。
引用:小学館 デジタル大辞泉
まな板の上に置かれた食材は、その後、包丁で切られたりして調理されますよね。そのような状態を表して、「相手のなすがままに、まかせるほかない」ときにも用います。
「俎上」の使い方を例文でチェック
「俎上」という言葉は、どのように使うものなのでしょうか。具体的な例文で勉強してみましょう。
彼はまるで俎上の鯉だ。
「まな板の鯉」という表現がありますが、それと同様に「俎上」を使うことができます。例文は、「彼」が追い詰められてしまい「もうなされるがまま」という様子を表しています。
彼の起こしたトラブルは、次回の会議で俎上に載せることとなりました。
「俎上に載せる」とは、議題にあげる、議論の題材にするという意味です。例文は、「彼」が起こしたトラブルについて次回の会議で話し合うことになった、という意味になります。
先般、直木賞をとったあの作品を俎上に載せて、みんなで語り合おうよ!
「俎上」に載せるのは、悪いものばかりではありません。議論の対象となれば、いいことでも悪いことでも、どちらにも使えます。ただし現実的には「まな板の鯉」から連想されるように、ネガティブな意味合いで使うケースが多いことも覚えておきましょう。
女の子たちが、やけに盛り上がっているね。どうもタカシくんのことが、俎上に載せられているようだよ。
「俎上」に載せるのは、ものだけでなく人でも構いません。例文は、女性たちの話題のネタがタカシくんである、ということになりますね。
どうも僕は、明日の役員会で俎上に載せられることとなりそうだ。
自分のことをいう場合にも、「俎上に載せる」と表現してOKです。そもそも「まな板の上」という意味ですが、実際にはこういった使い方が多いですね。
今日、俎上にあげた、わが社の製品の品質がとても悪く、市場で大きなクレームに発展することが予想されます。
「俎上に載せる」と同じ意味で、「俎上にあげる」と使っても構いません。緊急対策会議などの場で、このような表現がよく用いられますので、フレーズとして覚えておくと便利です。
今回、俎上にのぼった被害の原因をすぐに明確にしないと、再び同じ被害を繰り返すことになります。
「俎上に載せる」は、「俎上にのぼる」とも言います。議論されている被害について、早急に原因を究明しないと再発するのではないか、ということですね。これもビジネスシーンでよく使われます。
次回の国会では、金融改革を俎上に載せることになる
「俎上」に載せるという言葉には、固いイメージがあります。ですから、国会において「俎上」に載せると表現するのは違和感がありません。しかし、家族会議などのフランクに会話する場で「旅行先を俎上に載せる」といった使い方はあまりしません。
いかがでしょうか、以上の例文で「俎上」に載せるもののイメージや、ニュアンスは掴めたでしょうか。言葉に慣れるには、自分で使ってみるのがいちばん。どんどん使って覚えましょう。
「俎上」の類語には、どのようなものがある?
「俎上」を言い換えるなら、どんな言葉があるのでしょう。「俎上」の類語には次のようなものがあります。
議題にする
日常的に使う言葉としては「議題にする」が、もっとも「俎上」に近い言葉だといえます。「議題」という言葉は、小学校の学級会などでも使いますので、大人から子どもまで幅広く理解できますね。
論点とする
「俎上」に載せるとは、議題にするということですから、さらに言い換えれば「論点とする」ともいえるでしょう。「議題」よりも「論点」のほうが、マトが絞られているニュアンスがありますね。その場に合わせて使い分けてみましょう。
取り上げる
もっとやさしく言えば、「取り上げる」も「俎上」に載せるの類義語です。ただし、「俎上」に載せるには、議論の対象となるという意味を含みますので、単純に取り上げるだけの場合には不向きだといえます。
言及する
言及するとは、読んで字のごとく「言い及ぶ」という意味。物事の細部に至るまで話し合うことです。「俎上」に載せるだけでは、「言及する」レベルに達するかわかりませんので、そのあたりはニュアンスで使い分けましょう。
ネタにする
フランクに言えば「ネタにする」という表現も、「俎上」に載せるに近いものがあります。先にあげた例文「女の子たちが、やけに盛り上がっているね、どうもタカシくんのことが俎上に載せられているようだよ」のような場合、「ネタにされているのはタカシくんだ」といった言い換えができそうですね。
「俎上に載せる」の英語表現には、どのようなものがある?
では最後に、英語ではどう表現するのかをお伝えします。
Today’s agenda will discuss the new building we will create.
「今日の議題は、今作ろうとしているビルについてです」と訳すことができます。「俎上」に載せるを英語にする場合は、「〜を話し合う」「議題は〜」という構成にするといいですね。
be doomed (like a fish laid on the chopping board).
「まな板の鯉も同然の状況です」という意味です。be doomedは、「運命づけられている」ことを表します。カッコの中の(like a fish laid on the chopping board)は、まさに「まな板の上に寝かされた魚のよう」です。英語でも日本語でも同じ表現をするなんておもしろいですね。
His affair will come up for discussion at the meeting.
訳すると「彼の行いは、会議で議論されるだろう」ですね。Take up 〜 for discussionという言い方もあります。
「俎上」を使った慣用表現
「まな板の鯉」は「もうどうしようもない」ことだと説明しましたが、ほかにも「俎上」と魚を使った言い回しがあるのです。それは、「俎上の魚江海に移る(そじょうのうおこうかいにうつる)」。江海(こうかい)は、大きな河や海という意味で、危険な状態から脱して安全な場所に移ることを表しています。
「もうだめだ!」と諦めかけた時に事態が急転して、うまくいくことがありますよね。そんな時、「まさに、俎上の魚江海に移るだね」などと言えば、物知りっぽく見せることができるかもしれません。
じつは… いろんな場面で使える言葉!
以上、「俎上」という言葉についてご紹介しました。一見難しそうですが、蓋を開けてみれば結構使えるシーンが思い浮かぶのではないでしょうか。トラブルなどに直面したとき使える改まった表現は、知っておくととても便利です。ぜひ、覚えておきましょう。
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