「柳に雪折れなし」という言葉を聞いたことがありますか? 初めて聞いたという人もいれば、「聞いたことがあるけれど、どういう意味なの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。
そこで、この記事では、「柳に雪折れなし」の意味や使い方、英語表現や似たことわざなどを解説します。
「柳に雪折れなし」とは?
「柳に雪折れなし」とは、柔軟なものの方が、堅いものよりかえって強く、折れにくいという意味のことわざです。「柳の枝に雪折れはなし」ということも。
柳の枝は、柔らかく、しなやかですよね。例えば、堅い枝だと、雪が積もった時に重さに耐えられず、折れてしまうこともあります。
ですが、柳はしなやかさゆえに、雪が積もったとしても、ぽきっと折れてしまうことはありません。その様子から、「柔軟さは、堅いものよりもよく耐える」という意味で、比喩として使われるようになったのが、「柳に雪折れなし」という言葉です。
由来には諸説ありますが、雪がよくある地方で、木々を保護していたことが背景にあるという説も。雪がたくさん降る地方では、庭の木が雪の重さに折れてしまうことがあります。これを防ぐために、「雪吊り」という、支柱や縄を使って、木が折れにくいようにする処置をすることも。雪国では冬の風物詩と言える光景かもしれませんね。
この雪吊りが、柳には要らないことから、「柳に雪折れなし」という言葉が、比喩として使われるようになったと言われていますよ。
なお、柳に雪折れなしは、人に対して使われることも多い表現です。例えば、人の心で考えてみると分かりやすいかもしれません。「何ものにも動じない鋼の精神」というと、一見強そうに見えますよね。
ですが、あまりに負荷がかかると、突然心が折れてしまうこともあるでしょう。一方、しなやかで柔軟な心の持ち主の方が、環境にうまく適応しやすく、心が折れにくいということもありますよね。
柳は少しの風が吹いただけで揺れるため、一見弱弱しそうに見えますが、一方で、しなやかな強さを持っていると言えるのではないでしょうか?
そのため、「柳に雪折れなし」を座右の銘にしているという人もいらっしゃるようですよ。
柳に雪折れなしの使い方
ここからは、柳に雪折れなしの使い方を例文で見ていきましょう。
例文:「彼女は物腰が柔らかいけれど、あのハードな環境でも心が折れないのはすごい。まさに柳に雪折れなしだね」
このように、柔和な印象なのに、困難にも心が折れずにしなやかに対応できる人を、「柳に雪折れなし」と言うことも。
反対に、一見屈強そうな人が、ある日突然心や体の不調などで倒れてしまうこともありますよね。また、人間関係などでも、頑なになりすぎて、周りとぎくしゃくしてしまうこともあるでしょう。
特に変化が激しい環境の中では、ある程度の柔軟さがあった方が、うまく切り抜けられることも多そうですよね。「絶対に譲らないぞ!」という強い姿勢の人は、たしかに強そうに見えます。
ですが、案外ハードな環境に強いのは、柳のようなしなやかさがある人かもしれません。このようなことを昔の人は、しなやかさゆえに雪のなかでも折れない柳に例えて言うようになったのでしょう。
なお、だれにでも良い顔をして、言うことがころころ変わるというのは、「柳に雪折れなし」とは少し違いますので、注意が必要です。例えば、こんなケースを見ていきましょう。
Aさんは、自分の意見を言うのが苦手で、誰にでもいい顔をしてしまうくせがありました。一見柔軟さがあるように見えますが、困ったことに、誰かが悪口を言っていることにもつい「そうですよね! 私もそう思います!」と同意してしまっていたそうです。誰かの悪口を聞くたびに毎回、同意し続けたAさん。
そのうちに職場でそれが噂になり、気付けば周りが敵だらけになってしまったと言います。さらに、「Aさんは、言うことがすぐに変わるので信用できない」というレッテルを貼られてしまい、結局職場を退職することに…。
このようなことにならないよう、くれぐれも人の噂や悪口などへの対応には気をつけたいですね。
「柳に雪折れなし」を英語で言うと?
「柳に雪折れなし」を、英語ではどのように言うのでしょうか? いくつか例文を見ていきましょう。
1:Willows do not break but bend under the snow.
柳は、英語で、willowsと言います。この例文は、「柳は雪が降るとしなるが、折れない」という意味で、「柳に雪折れなし」を直訳するとこのように言えるでしょう。
ですが、柳は、地域によっては見慣れないということも。また、雪が降らない国の人にとっては、この表現はイメージがしにくいということもあるかもしれません。そのようなときのために、次のような表現も覚えておくと便利でしょう。
2:Oaks may fall while reeds survive the storm.
「葦は嵐を乗り越えられても、オークの木は倒れるかもしれない」という意味です。オークと言えば、家具などにも使われ、「オーク材」などと聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか? かなり丈夫なイメージのある木ですよね。
一方、葦は、柳と似て、しなやかな植物です。嵐の中、しなやかな葦の方が、丈夫なオークの木よりも折れにくいという意味で、まさに「柳に雪折れなし」と似た言葉と言えるでしょう。同じようなことわざが英語にもあることも、面白いですよね。
「柳に雪折れなし」に似たことわざは?
ここからは、「柳に雪折れなし」に似たことわざをいくつか解説します。いろいろな表現を覚えておくと便利ですので、一緒に見ていきましょう。
1:柔よく剛を制す
柳に雪折れなしによく似た表現に、「柔よく剛を制す」という言葉があります。武道などをやっていた人は、よく聞く言葉かもしれませんね。
「柔よく剛を制す」は、しなやかな方が、堅くて強いものに打ち勝つという意味の言葉。たしかに、柔らかさを活かせば、強いものの攻撃を巧みにそらすこともできますよね。なお、「柳に雪折れなし」に比べると、勝負に勝つというニュアンスが強いと言えるでしょう。
2:柳に風
「柳に風」も、柳に雪折れなしに似た表現です。「柳に風」は、柳が風に吹かれても折れずになびく様から、巧みに何かを受け流すことを指す表現。逆らうのではなく、穏やかにあしらうイメージですね。
なお、「柳に風折れなし」ということもあるようです。意味は柳に雪折れなしと同じですので、セットで覚えておきたい言葉ですね。
最後に
この記事では、「柳に雪折れなし」ということわざの意味や英語表現、似たことわざなどを解説しました。何かトラブルやプレッシャーがあるとき、「柳に雪折れなし」の精神で、しなやかに乗り越えたいですよね。
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