「豚もおだてりゃ木に登る」の意味
「豚もおだてりゃ木に登る」ということわざは、一見すると現実離れしたイメージを呼び起こす表現かもしれません。
しかし、実際には深い教訓が込められています。この慣用句にはどのような意味があり、どのような状況で使用されるのでしょうか。
本章では言葉の解釈や例文、由来について解説していくため、ぜひ参考にしてください。
「豚もおだてりゃ木に登る」の意味
「豚もおだてりゃ木に登る」という言葉は、本来は能力が低い人であっても、おだてられて気分がよくなれば、備わった能力以上の結果をもたらすという意味をもつことわざです。
豚もおだてりゃ木に登る
出典:小学館 デジタル大辞泉
能力の低い者でも、おだてられて気をよくすると、能力以上のことをやり遂げてしまうことがあるというたとえ。
他人から甘言を受けることで、本来の能力以上のことを成し遂げてしまう場合があるという教訓が込められています。
その一方で、やや皮肉的なニュアンスが込められた言葉でもあるため、使用には注意が必要です。
「豚もおだてりゃ木に登る」の例文
「豚もおだてりゃ木に登る」という言葉を使う場合の例文を紹介します。
1. マネージャーが新入社員におだてると、彼は自信をもってプロジェクトに取り組み、能力以上の成果を上げました。まさに「豚もおだてりゃ木に登る」です。
2. 先生からほめられた学生は、勉強に励む。「豚もおだてりゃ木に登る」という言葉通り、声がけ次第では成績を大きくアップできる。
3. チームで一番ヘタと言われていた彼も、コーチの「やればできる」という声がけによって、一気に上達した。私は「豚もおだてりゃ木に登る」とは、このことだなと思った。
「豚もおだてりゃ木に登る」の由来
「豚もおだてりゃ木に登る」という言い回しは、もともとは特定の地域でのみ、ことわざとして使われていました。
また、言葉が誕生したのも比較的最近、昭和20年ころとされています。現在では全国各地に広まり、多くの人が知ることわざとなっています。
「豚もおだてりゃ木に登る」の類語3つ
「豚もおだてりゃ木に登る」ということわざと、似た意味をもつ類語・言い換え表現は以下の3つです。
1. 煽る
2. よいしょする
3. けしかける
いずれも誰かを褒めちぎって、もち上げるという意味をもつ言葉です。本章では、それぞれの意味について解説します。
ただし、やや皮肉めいたニュアンスももっている点に注意してください。
1. 煽る
「煽る(あおる)」とは、相手をおだてたりそそのかしたりして、ある状態が起こるように仕向ける行為のことです。
この言葉には、なんらかの手段を使って、状態を引き起こす意味も含まれます。個人だけでなく世論や人気、景気など、さまざまな状態に対して使用される表現です。
たとえば、「派手な宣伝を行うことで、消費者の購買意欲を煽る」というような使い方があります。
2. よいしょする
「よいしょする」は、相手を積極的にほめて気分をよくさせることを指します。この表現には「おだてて自分に気に入られるようにすることや、甘い言葉で相手をだまそうとすること」という意味合いも含まれます。
ビジネスシーンにおいては、顧客や上司などの相手を積極的にほめる場合に使われる表現です。具体的な形としては、顧客や上司を「よいしょする」という言い回しが使われます。
3. けしかける
「けしかける」は、犬などに勢いを与えて相手に立ち向かわせることを意味する言葉です。これから転じて、犬以外にも相手をそそのかして、自分の思う通りに行動させることを指すようになりました。
相手をおだてたりそそのかしたりして、望ましい結果を得るように仕向けるという意味があり、自分の都合のよい結果を引き出すために用いられます。
この表現は一般的に、人や動物など生物に対して使用されます。
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「豚もおだてりゃ木に登る」の対義語
「豚もおだてりゃ木に登る」の対義語は複数あります。代表的なことわざは、以下の4つです。
・猿も木から落ちる(さるもきからおちる)
・河童の川流れ(かっぱのかわながれ)
・弘法にも筆の誤り(こうぼうにもふでのあやまり)
・策士策に溺れる(さくしさくにおぼれる)
いずれも、特定の行動が得意とされていた者でも、失敗することがあるという教訓がこめられています。
1. 猿も木から落ちる
「猿も木から落ちる」ということわざは、「ある分野に長けた人でも、時には失敗することがある」という意味です。
猿は豚とは違い、木登りが得意ですが、それでも時には木から落ちることがあります。達人であっても、時には失敗することがあるという教訓が込められていることわざです。
ただし、「猿は木から落ちる」という表現は誤りです。
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2. 河童の川流れ
「河童の川流れ」という表現も、たとえ泳ぎの名手であっても、時には失敗することがあるという意味のことわざです。
しばしば誤認されている「河童が流れるようにスムーズに進む」という意味の言葉ではありません。
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3. 弘法にも筆の誤り
「弘法にも筆の誤り」という言い回しも、名人や達人であっても間違えることがあるという意味のことわざです。ことわざに関連したたとえ話として、次のようなものがあります。
昔、空海という真言宗を開いた僧侶がいました。空海は筆の名手として知られ、弘法大師としても知られていますが、彼も時には筆を誤ることがあったそうです。つまり「弘法も筆の誤り」です。
この言葉は、ミスを非難するために使う表現ではありません。むしろ、それくらいの些細なミスは誰にでもあるという意味で用いられる表現です。
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4. 策士策に溺れる
「策士策に溺れる」という言い回しは、策略に長けた人が策略に過剰に執着し、結果的に失敗する可能性があることを表現したことわざです。
策略を好む人は、時には複雑な考えに陥り、結果としてうまくいかないことも。しばしば、自信過剰な状態を戒めるために使われます。
「策士策に倒れる」と表現することもありますが、策士才に溺れるという表現は誤りです。
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「豚もおだてりゃ木に登る」の意味を正しく理解しよう
「豚もおだてりゃ木に登る」という表現は、相手をほめることで、本来の能力以上の結果をもたらすことを表したことわざです。
一般的に好意的な意味で用いられることは少なく、やや嘲笑するニュアンスを含んでいます。
相手によっては「馬鹿にされている」と感じさせる可能性があるため、使用する際には十分に注意してください。
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