「餅は餅屋」の意味とは?
「餅は餅屋」ということわざを聞いたことが、あるでしょうか? 日常生活で使うことは少ないものの、比喩表現として色んなシチュエーションで使いやすい言葉です。まずは意味から解説していきます。
「餅は餅屋」とは、餅は餅屋さんでつくられたものが1番美味しい。つまり、「どんなものでもその分野の専門家が最も優秀である」という意味のことわざです。商売には色んな専門があるのだから、専門業者に任せるのが1番良いということですね。同義で「餅屋は餅屋」と言ったりもします。
江戸時代には「貸餅屋」という、希望した日に道具を持って餅をつきに来てくれる職業が存在していました。お正月に忙しくて餅を準備できない人々が、この貸餅屋に餅つきを頼んでいたのです。そして、貸餅屋がついた餅が美味しかったことから転じて「餅は餅屋」と言われるようになったのだそう。以前は「酒は酒屋」などと、他の商売についても言われていたようですが、「餅は餅屋」が人々の間で最も浸透し、今では他の表現をほとんど使わなくなったようです。
また「餅は餅屋」は、江戸時代後期に広まった「いろはかるた」にも由縁があります。「いろはかるた」には江戸・京都・大阪の3種類があることをご存知でしょうか? その中でも、上方の「も」の取り札には「餅は餅屋」と記載されており、餅屋のイラストが描かれていたそうです。「いろはかるた」の中で取り上げられたことで、人々がこのことわざ広く知るきっかけになったようですね。
「餅は餅屋」の使い方を例文でチェック
では実際に「餅は餅屋」を使った例文を紹介していきますね。使い方がいまいち分からないという方も、こちらを参考にしてみてください。
1:ラジオが壊れてしまったけど、餅は餅屋と言うし下手に触らず修理に出そう。
なにか不具合が起こった時や故障してしまった時、一度自分の力でなんとか直してみようと試みますよね。しかし、何も考えずにいじってしまうとさらに複雑な修理が必要になることも…。修理の場合は特に、早いうちにプロの方に任せた方が良いかもしれませんね。
2:私たちが数十分かかって作業していたところを、業者の人は5分程度で終わらせてくれた。やはり餅は餅屋で最初から任せておけば良かった。
素人と専門家では、作業のスピードも比べものになりません。その分野に特化している人達ですから、速いスピードに比べて高いクオリティを提供することができます。効率良く作業を進めるなら、専門的な部分は専門家に頼るべきですね。
3:同僚の持ってきた手作りのお菓子があまりにも美味しくて、聞いてみたら元パティシエだったらしい。やっぱり餅は餅屋なのだと改めて思った。
「餅は餅屋」は、褒め言葉として使うこともできます。専門家のスキルを称賛する際に「餅は餅屋とはこのことですね」などと表現しても良いでしょう。
類義語や似たことわざを3つ紹介
では、「餅は餅屋」に似たような意味のことわざにはどのようなものがあるのでしょうか? 確認していきましょう。
1:蛇の道は蛇(じゃのみちはへび)
読み方を間違えないように気をつけましょう。中世では「蛇の道はちいさいけれどもくちなはがしる」という言い方をされていましたが、短縮されてこのようなことわざになりました。
意味は、一般人ではなかなか分からないことでも、その業界に身を置く人は簡単に理解できること。また同類の仕事をしている者同士は、お互いの行動に大体推測がつくという意味でもあります。
2:弱くても相撲取り(よわくてもすもうとり)
いくら弱い力士であっても普通の人に比べると断然力が強い。転じて、専門家であれば、たとえその分野の中ではたいした人でなくとも、素人に比べると断然すぐれているという意味です。
確かに相撲界の中でどれほど力の弱い力士でも、我々素人と比較するとはるかに力持ちですよね。「まだ業界の中では新人だけど、“弱くても相撲取り”と言うように何か力になれることはあると思うからなんでも言ってね」というように使います。
3:海の事は漁師に問え(うみのことはりょうしにとえ)
なにごとも専門家に相談することが最善の策であるという意味です。「海の事は舟子に問え、山の事は樵夫に問え(うみのことはふなこにとえ、やまのことはきこりにとえ)」も同じ意味で使うことができるでしょう。
4:芸は道によって賢し(げいはみちによってかしこし)
「芸は道によって精し(げいはみちによってくわし)」とも言います。意味は、ある芸を極めた人はその芸に関して誰よりもすぐれているということ。つまり、専門の事柄はその人が最も精通しているということを表しています。
対義語にはどんなものがある?
次は対義語について見ていきましょう。代表的な対義語には「猿も木から落ちる」や「左官の垣根」があります。
1:猿も木から落ちる(さるもきからおちる)
木登りが得意な猿でも時には誤って落ちることから、その分野にすぐれている人でも時には失敗するという意味。これはよく耳にすることわざですよね。「弘法にも筆の誤り(こうぼうにもふでのあやまり)」や「河童の川流れ(かっぱのかわながれ)」なども同じ意味をもつことわざとして覚えておくと良いでしょう。
2:左官の垣根(さかんのかきね)
左官(さかん)とは、壁塗りを専門とする役職のこと。いくら建物の壁を塗る職人であっても、垣根を作ることまでは上手くできないことから「左官の垣根」と言われるようになりました。「専門家が専門外のことをやっても上手くできるとは限らない」という意味を表しています。
最後に
「餅は餅屋」について理解していただけましたか? あまり会話の中で使うことわざではありませんが、「専門的なことは専門家に頼れば良いのだな」という程度に、心に留めておくと良いでしょう。類義語や似た意味のことわざも多いため、シチュエーションによって使い分けれるようになれると良いですね。
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