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「相容れない」の意味と読み方とは?
「相容れない」。ちゃんと読めますか? 意味をきちんと説明できるでしょうか。基本をおさえておきましょう。
「相容れない」の意味と読み方
「相容れない」とは「あいいれない」と読みます。「相」とはお互いに、という意味ですね。「容れる」は許容することですから、「相容れる」で互いに許容し合うこと。逆に「相容れない」は、お互いに許容し合うことができないという意味です。
「相容れない関係」とは?
「相容れない関係」とは、おもに2つの場合が考えられます。
両立しない
いわゆる「あちらをたてればこちらがたたず」という状態です。片方の事柄が成立すれば、もう片方が必然的に成り立たなくなる。そんな関係を「相容れない関係」といいます。
たとえば、資本主義と共産主義。資本主義とは自由な経済システムのことで、働いたらその対価としてそれ相応の対価が得られます。一方で、共産主義とは個人が財産を持つこと自体を否定する考え方で、資本や財産を社会全体で共有しようというものです。
簡単に言えば、自分の働いた分のお金はすべて自分のものとする考え方と、みんなでみんなの分を手分けして稼ごうという考え方ですから、両者は決して両立することはありません。「相容れない関係」なのです。
許容しあえない・互いに受け入れられない
立場の違いや、考え方の違いから、お互いに相手の意見を受け入れられない、ということです。
例えば、老舗の一人息子がいたとしましょう。お父さんやお母さんは何百年も続いてきたお店なので、自分たちの後を息子に引き継いでほしいと思っています。一方で、息子は彼女の家に養子に入り、先方の家業を継いで行きたいと考えているといった場合。
お父さん・お母さんは、親としては息子の意向を汲みたいと思っているかもしれませんが、老舗を守ってきた立場からは、彼の希望に「イエス」とは言えないでしょう。このような、立場による意見の食い違いなどから、お互いに認め合えない状況も「相容れない関係」にあるといえます。
人間関係において、お互いに嫌い、というのも「相容れない関係」といえますね。
「相容れない」の英語表現とは?
「相容れない」を英語で言うと「incompatible」となります。「compatible」は相性がいい、互換性があるという意味で、これを否定する「in」がついて、相性が悪い、両立しないという意味になります。
「相容れない」の使い方は? 例文でチェック
「相容れない」の具体的な使い方を見ていきましょう。
◆彼女と僕とでは将来のビジョンが全く相容れない
ほかの部分では分かり合えるふたりなのに、将来のビジョンだけがどうも合わない。そんな意味でしょうか。ささいな点ならともかく、一生をともに歩もうとする間柄であれば、将来の展望が共有できないというのは大問題です。
◆今年の労使交渉はまったく相容れない状況だ
経営者側と労働者側、この両者の関係は会社の発展を願うという点では意見の一致があるかと思いますが、そこに至るまでの道のりの面では、立場の違いから、意見の食い違いが多くなります。例えば、ボーナスを低く抑えたい経営者サイドと、1円でも多いほうがいい労働者サイドでは、意見が相容れない状況となります。うまく妥協点を見出せるかどうかがポイントとなりますね。
◆この相容れない状況を打破するには転職しかない
自身の働きを全く会社側が評価してくれない。自分としては会社のためにいいと考えてやっていることが、会社側に理解されない。そんな状況は「相容れない」状況といえるでしょう。会社の進もうとしている方向と、自分の思いが相容れないときは、乗る船を変える、すなわち転職するしか手がないと考えられます。
「相容れない」の類語にはどのようなものがある?
「相容れない」を別の言葉でいうとどうなるでしょう。類語を調べてみました。
◆二律背反
「にりつはいはん」と読みます。両立し得ないことが同時に主張されることを言います。この「二律背反」は、ドイツ語のアンチノミー(Antinomie)の訳語として知られます。ドイツの哲学者・カントが使った言葉です。
◆不倶戴天
「ふぐたいてん」と読みます。お互いにこの世にいることはできない、殺したいほど憎いという意味の言葉なので、単に両立できない、認め合えない、という意味では使いませんが、相容れない関係ではありますね。
もともとは親の仇について言った言葉で、古代中国から伝わる儒教の教典『礼記(らいき)』には「父の讐(あだ)は倶(とも)に天を戴(いただ)かず」というように登場します。
◆共存不可能
2つの意見が、ともに成り立つことがないととき、少し比喩的な表現として「それらの意見は共存不可能だね」と言ったりしますね。
◆分かり合えない
「相容れない」をもう少しマイルドに言うと「分かり合えない」となるでしょうか。「馬が合わない」「反りが合わない」というような言い方もできると思います。
◆まるで水と油だ
全く違うもののたとえです。「彼女とキミは、姉妹なのに、まるで水と油だね」と言われれば、似ていて当然だと考えられる姉妹のふたりに全く共通項が見られないというような意味になります。
ちなみに、「水と油」は、英語で言うと「apples and oranges」です。
「相容れない」関係になってしまったら?
「相容れない」関係には、ひとつ大きな特徴があります。それは、どちらも間違いではないということです。どちらも正しいからこそ、意見が食い違ったまま硬直してしまうのですね。
こんなとき、どうしたらいいでしょう。まずは、自分が主張するのをやめること。そして、相手を否定しないこと。
相手の意見をよく聞けば、どこかに共通項が見出せる場合があります。もし、共通項がなかったとしても、お互いが折れる、という方法もありますね。
主張をし続けているだけでは、一向に解決しないのです。
最後に
「相容れない」という言葉について解説しました。「相容れない」という表現を使う機会はそう多くはないかもしれませんが、職場や人間関係、子育てなど、日常のさまざまなシーンで「相容れない」ことは多いのではないでしょうか。
日常生活においては、相容れないまま放っておくわけにはいきません。何とか上手に“落としどころ”を見つけて、やっていくしかありません。大人の身のこなしとして、より良い妥協点の見つけ方も身につけたいものですね。
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