「先輩に好かれる方法」が、キャリアをひらくきっかけになる
仕事をし、キャリアを築いていく上で、周囲の人と良い関係でいることはとても大切なこと。中でも、仕事を評価する「上司」でもなく、気軽につきあえる「同期」や「後輩」とは違い、「先輩」との関わり方は、ちょっと気を遣いますよね。
先輩に好かれるように振る舞うことを、「媚びを売る」「我慢をする」と、ネガティブに捉えている人もいるのではないでしょうか? 職場の先輩に好かれることで、得られることはたくさんあります。これまで5万人のキャリアサポートをし、社内の人間関係についての悩み相談を得意とする、キャリアコーチの菊池啓子(きくち・ひろこ)さんにお話を伺いました。
「先輩後輩の関係性を最初に意識をしたのは、中学生や高校生の頃ではないでしょうか? その頃にちょっとネガティブな体験をした人は、『先輩』というだけで身構えてしまうかもしれませんね。先輩とうまくやるためには、媚びたり我慢をする必要があると、思い込んでいるケースもあります。
仕事において先輩に好かれるために一番大切なことは、仕事に真摯に向き合うこと。ただ、気が合う仲良しを作ろうということではないのです。
多くの人のキャリアサポートをする中で、仕事ができて人望が厚い人には共通点があります。それは、後輩の成長を願い、サポートをすることに喜びを感じていることです。ご機嫌取りのためにすり寄るよりも、自分の意見をしっかりと伝えられることが、優秀な先輩たちと良い関係を築けていくポイントになります」(キャリアコーチ・菊池さん)
仕事に一生懸命に取り組むことが、結果として先輩に好かれることにつながるのですね。先輩に好かれることのメリットには、何があるのでしょうか?
「先輩たちは、多くの経験と知識を持っていて、職場で明文化されていないルールや文化を理解しています。
先輩に好かれることで、仕事で成果を出し、信頼を得ていくために必要な情報が得られることに。また、組織に馴染んでいくためには、すでに組織の一員である人を媒介にする方が、早く確実に受け入れてもらえます。
とはいえ、こんなドライに捉えることに抵抗を覚える人もいますよね。単純に、男女問わず素敵だと思う先輩と仲良く過ごせることは、毎日仕事に行く楽しみにもなりませんか? 」(キャリアコーチ・菊池さん)
キャリアアップにつながるメリットもありますが、先輩たちといい関係が作れていれば、仕事も楽しくできそうですよね。
これはNG! 気をつけたい3つのポイント
オープンな性格で誰とでもすぐに仲良くなれるタイプもいれば、人見知りで人づきあいが苦手というタイプもいます。中学生や高校生の時は、そんな性格的なもので左右されることもあったかもしれません。でも、大人の付き合いの先輩後輩関係では、性格的な特徴よりも意識して調整ができる「態度」が大事。3つのNG事例から、注意しておきたいポイントをまとめました。
1:自己中心的な態度
自分の利益だけを優先したり、他の人の気持ちや意見を蔑ろにするような態度です。仕事は多くの人との関わりで成り立っています。自分の利益だけに焦点があたっていないか、視野の狭さで相手の意見やニーズを見落としていないか、自分の都合で周囲を振り回していないか、常に振り返る習慣を持ちましょう。
2:ネガティブな態度
イラつきや不安などストレスを感じることは、仕方のないことです。だからといって、感情に任せてネガティブな態度をとることは、ただの八つ当たり。周囲への配慮が足りない行動と受け止められます。自分の機嫌は、自分で取りましょう。
3:受け身のコミュニケーションスタイル
「声をかけてもらうのを待つ」のは、受け身の姿勢。「何を思っているのか」「何に困っているのか」「どうしたいと思っているのか」などを自分から発信することが大事です。勇気がいるかもしれませんが、自分から働きかけていきましょう。
先輩に好かれる5つの方法は?
先輩から好かれるとは、積極的に関わりを持ってもらえる状態ということ。関わりが増えれば、それだけ良質で多くのリソース(資源)が得られます。先輩に好かれるために、次の5つの方法を心掛けましょう。
1:礼儀を忘れない
どんなに親しくなったとしても、礼儀を欠く態度は相手を不快にさせます。関係性を意識した言葉遣いや態度を忘れずに。
2:謙虚な姿勢
仕事で成果が出てくると、自信を持つことができます。そこで忘れてはいけないのが、「謙虚さ」です。へりくだり控えめに見せるということではありません。その成果は「自分の力」とともに、「周囲のおかげ」であることを忘れないということ。
3:感謝を伝える
周囲との関わり・つながりを意識していくと、自分だけでは賄えないことが多くあることに気付きます。そして、先輩からのサポートの多くは、さり気ないことです。何かしらのサポートを受けたことに感謝の気持ちを忘れず、言葉で表明していきましょう。感謝を伝えた先輩との関係性が、より良いものになっていきます。
4:柔軟性と適応力
自分のやり方や経験に固執して、先輩からのアドバイスに抵抗を示す人もいます。まずは素直に試してみたり、従ってみることも必要です。実は先輩たちも同じ道を通ってきているもの。スキルアップへの最短距離である可能性もあります。
また、ビジネス環境は、常に変化があるものです。状況の変化に柔軟に対応していくことは、チームで働くにあたって大切なことですね。
5:成長意欲を持つ
仕事を通じて成長を望んでいる姿は、周囲へポジティブな影響を与えます。先輩たちも、人間です。「関わり甲斐のある人」とより親密な関係を築きたいと思うもの。やる気が見えない人よりは、自分の経験や知識を与えることで伸びていく人と、仕事をしたいと感じます。
また、後輩の成長を目の当たりにすることで、先輩自身もさらなる成長を目指していくようになります。成長意欲を見せることは、自分のためにも周囲のためにも有益なことです。
終わりに
先輩に好かれる方法とは、個人的な気の合う友達を見つけるということではありません。「先輩」という身近な存在から信頼を得ることが、仕事を円滑に進め、人からの信頼を得て、多くの成長のチャンスをつかむことにつながります。
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キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン