自分を律する意味とは?
日常生活の中で、おいしそうなスイーツの看板を見かけると食べたくなったり、ショーウィンドウのおしゃれな服を買いたくなったりしたという経験は、多くの人があるのではないでしょうか? 反対に、やらなければならないタスクがあっても、ついサボってしまったりといったことは珍しくありません。
このように、人はさまざまな感情に駆られるものであり、自分を律するというのは難しいこと。そこで、どのような方法で自分を律すればいいのかを紹介します。
そもそも「自分を律する」とは、一定の規範を設けて、自分自身を統制・管理すること。言い換えると「自分をコントロールする」ということです。
なんだか我慢を強いられるみたいで、ちょっと自分には無理かも… と思ってしまうかもしれませんね。そこで、これまで5万人以上のキャリアサポートをしてきた、キャリアコーチの菊池啓子(きくち・ひろこ)さんに「自分を律する意味って? 」というお話を伺いました。
「『自分を律する』と言うと、堅苦しく難しいことだと思う人は、多くいますね。
でも、こんな風に考えてみてください。『こうなりたいな』『こうだったらいいな』と思うことは、ありませんか? それを実現させるために、自分にとって正しい選択をして、それを実行するように心掛けることが、『自分を律する』ということです。
わかりやすく言うと、自分で決めたことをやること。感情や衝動に流されずに、自分のベストをつくそうとすること。言い換えると、セルフコントロールができるということです。
例えば、ダイエットをしているのに、新作スイーツに目がいってしまうことは、ありますよね。その時に、『ま、いっか』と食べてしまうのか、我慢をして食べない選択をするのか。
私たちは、日常で常に選択を迫られています。その選択の積み重ねが人生を作っているとも言えるでしょう。
どちらがいいのかは、わかっているんです。わかっているけど、ついつい… ということをなるべくなくしていく。これが自分を律すること・セルフコントロールです」(キャリアコーチ・菊池さん)
自分を律することができない原因は?
自分を律することができると、目標を達成し、充実した人生を送れる。とはいえ、わかっているけど、ついつい… ということはありますよね。実は、ちょっとしたコツがつかめると、誰でも自分を律することができるようになります。
まずは、自分を律することができない原因を見ていきましょう。
1:目標や目的が腑に落ちていない
自分を律しよう! と決意をする時は、何かしらの目標を立てていることがほとんどです。さて。その目標は曖昧ではありませんか?
例えば、ただ何となくダイエットをしてきれいになりたい… と思っているだけであれば、いろいろな誘惑に「今日はまぁ、いいか! 」と流されるのは当たり前です。しかしながら、「半年後の結婚式にこのドレスを絶対に着たい! 」という時には、誘惑に打ち勝つことができますよね。まずは目標や目的が、自分で腑に落ちていることが大事です。
2:一度の失敗が尾を引くと思っている
実は、常に自分を律し続けるということは、どんな人でも難しいものです。人間なので、「わかっているけど無理だった」ということはあります。そこで大切なのが、その次の機会では、必ず自分の決めた「よきこと」の方を選ぶということ。ベストをつくそうと心がけ、「ついつい… 」の選択を減らしていくことがポイントです。
3:自己暗示をかけている
残念な選択をした時に、ことさらに自分を責める人がいます。そのたびに「やっぱり自分には無理! 」と自分に言い聞かせて自己暗示をかけているのです。
また、やらない理由を常に考えてしまい、言い訳が見つかった時に安心をして「やらないのは仕方がない」と妥協の自己暗示をしてしまいます。
4:環境が整っていない
自分を律することは、自己管理をすること。しかし、環境が整っていないと、自分を律することが難しくなります。例えば、スキルアップのために学ぼうとしても、それをからかうような人がいると、やる気がそがれてしまいますよね。
自分を律するようになるトレーニングは?
自分を律するようになるには、毎日のちょっとした積み重ねで、「自分は決めたことができる人だ」ということを、自分に信じさせることです。ここでは、すぐに取り組めるトレーニングを5つピックアップしました。
1:決めたことを常に目に入れる
人は、すぐに忘れる生きものです。自分で決めたことを、常に思い出せるような工夫が必要。目標と目的をセットで書き出し、目につくところに貼っておくのは、思っている以上に効果があります。
また、アプリなどを使って、決まった時間に何度も目標と目的がアラート音とともに表示されるようにしておくのも有効です。
2:ルーティン行動を決めて行う
毎日同じ時間に必ずやることを決めておきます。その時、「毎日必ず絶対に、自分の意志をもってしてできること」を決めておきましょう。これは、体調が悪かろうが平日だろうが休日だろうが旅行先だろうが、です。決めたことを続けることが目的なので、些細なことでもOK。
・目が覚めたら伸びをする。
・メイクをする前に3回深呼吸をする
・食事の直前に水を飲む
・お風呂上りに英単語のアプリを開く(開くだけで、OK! )
ルーティン行動をとる前に、「今から決めたことをやる! 」と自分に伝え、終わった時に「決めたことができた自分はえらい! 」と自分褒めをしてください。この繰り返しをすることで、自分を律することができるようになり、自己効力感も上がっていきます。
3:1日のやることリストを3つ書く
ここでのポイントは、最大で3つまでとして、書き出すこと。そして完了した時には、消さずに見えるように残しておくことです。やったことが積み重なっていくことで、「決めたことをやれている自分」を確立していくことになります。
4:振り返りの時間を持つ
可能であれば毎日行いたいのが、振り返りの時間です。自分がどのような行動をとったのか、それによってどのような結果が出たのかなど、評価や判断をすることなく、客観的な事実だけを記録していきます。振り返りをすることで、自分の行動の成果が見えるようになり、誘惑をふりきる精神が育っていきますよ。
5:ありたい姿と短期目標を決めて取り組む
人生においてどんな自分でありたいのか、そのために何が必要なのかなど、まずは大きく抽象的な人生の目標や目的を明確にします。そのうえで、バックキャスティング(逆算思考)で目標を設定。例えば、50歳の自分のありたい姿を描きます。そのためには40歳の時にはこうなっているということは… とどんどん逆算をしていくと、3年後の自分の姿が導き出されるでしょう。その3年後の姿を実現させるためには、今の自分がやるべきことは何かがわかってくるものです。
このように逆算をしていくと、今取り組んでいることの目的と意味が腑に落ちるので、ちょっとした誘惑には打ち勝てる自分になっていけます。
終わりに
自分を律するとは、望む状態になるために、感情や衝動に流されずに、あるべき姿に向けて行動していくことができること。トレーニングでコツをつかんで、決めたことができる自分になっていきましょう!
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キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン