「気にしすぎ」がもたらす影響
「返信が無いのは、嫌われているからかも… 」「あの時の言い方で、気を悪くしたのではないか… 」など、自分の言動に自信が持てず、気になって仕方がないことはありませんか? 誰でも「やっちゃった… 」と落ち込むことはありますよね。ただし、あまりにも頻繁だったり、長く引きずることになると、毎日がつらくなってしまいます。
わかっているけど、どうにも気になってしまう… 。そんな「気にしすぎる性格」との上手な付き合い方を、5万人以上のキャリアサポートに関わり、コミュニケーションスキル向上やストレス対処法にも詳しいキャリアコーチの菊池啓子(きくち・ひろこ)さんにお話を伺いました。
「気にしすぎてしまうというのは、色々な出来事や関わる人に対して、過度に心配や不安を感じてしまう『心のクセ』を持っているということです。
気にしすぎで悩んでいる人は、多くの場合、『読心』というフィルターを通して、出来事をとらえています。これは、相手の気持ちや状況を推察し、ちょっとしたこともキャッチし、先回りして動けるように、心のアンテナを張り巡らしている感じです。
この心のクセを上手に使えているときは、共感力が高く気遣いができるので、周囲との関係も円滑です。ただし、必要以上にアンテナを張りすぎていると、いろいろなことが気になりすぎて疲れ果ててしまいますし、自分のことを後回しにしてしまうので、焦燥感に駆られてしまいます」(キャリアコーチ・菊池さん)
気にしすぎる人は、周囲に対して気を遣いすぎたり、些細な出来事を大げさに考えすぎてしまうという傾向も見られます。また、他人に共感しすぎて、あたかも自分のことのようにとらえて、辛くなってしまうことも…。
様々な出来事に、心が大きく揺さぶられることが多いと、心が疲れてしまいますね。そうなると、常にストレスを感じている状態になります。「理由はわからないけど、いつも不安を感じている」、「なんだかモヤモヤし続けている」というような状態が続いているとしたら、毎日がつらいものになってしまいますよね。
気にしすぎるというのは、見方を変えると日常生活でいろいろなことに目が向けられるという「才能」でもあります。これは、多くの情報が得られるということ。そして、自分の関わることすべてが、良い状態であってほしいという心持ちでもありますね。
ただ、すべてに対して良い状態であろうと責任を持つことは、一個人としてできる範疇を大幅に超え、エネルギー不足になりがち。「気にしすぎる」というのは、エネルギーを向ける配分を間違えているということが言えるのです。
あなたの「気にしすぎ度」をチェック!
誰でも、何かに気をとられてしまうことはあります。ただ、気に「しすぎ」てしまうと、ストレスになってしまうもの。ここではあなたの「気にしすぎ度」をチェックしてみましょう。
1:自分の行動に対して、不安や後悔を感じて引きずることが多いですか?
責任感の高さゆえ、「これで良かったのか… 」「もっとできることはあったんじゃないか… 」と自分を責めてしまうことはありませんか? 不安や後悔も適度であれば糧になりますが、引きずることで得られるものは、ありません。振り返れば見えてくることがあったとしても、その時のベストは尽くしているもの。声に出して「あれがあの時のベストだった」と言い、自分をねぎらってあげましょう。
2:他人からの評価が気になりますか?
「できる」「できない」「良い」「悪い」など、仕事の場でもプライベートの関わりでも、評価はつきまといます。そのすべてにポジティブな判定をもらうのは、不可能なこと。評価を気にしないのが一番ですが、それができれば苦労はしませんよね。
気にしすぎる人の傾向としては、「欠けていること」や「できていないこと」に目を向けがち。これは向上心にもつながることですが、自分をどんどん追い込むことでもあります。他者からの評価ではなく、「自分がどう思ったのか」に焦点を当てて考える癖をつけていくといいですよ。
3:嫌われることに恐怖を感じますか?
自分の言動をふりかえったときに、「嫌われたのではないか」という思考にとらわれて、落ち込んでしまうことはありませんか? これこそが、気にしすぎ・考えすぎのポイント。自分の言動を、大げさにとらえてしまっているのです。
「嫌い」という感情は、かなり強いもの。そもそも、他人に対して気配りをする人が、一発で嫌われるほどのインパクトある言動をとれるものでしょうか?
「嫌われたかも… 」と思ったときには、「そこまでのことではない」と、自分に言い聞かせてください。
今日から始められる「気にしすぎ」克服法
「気にしすぎ」を克服したい時、気にしすぎを「やめる」ことに焦点を当てると、うまくいかないもの。「気にしすぎをやめる」のではなく、「気を配る配分」を決めてみましょう。すべての人や出来事に、まんべんなく気を配るのではなく、優先順位をつけて気を向けていくのです。
ここでは、気にしすぎの克服につながる3つの方法をお伝えします。
1:好きなことや大切なことを書き出してみる
やっていて楽しい活動や、一緒にいたいと思える大切な人などを書き出してみます。これが自分にとって「気を配る境界線」になります。
境界線をつけることに、罪悪感を持つ必要はありません。優先順位をつけたら、自分が大切だと思うことに集中。そのことに、思う存分エネルギーを向けていきましょう!
2:感情日記を書く
感情日記で書くことは、「起こった出来事」と「その時の自分の気持ち」、「他人事だとしたら、伝えられるアドバイスは? 」の3点です。
文字に書き起こしてみると、自分の「気にしすぎポイント」が見えてきます。これは、状況を客観視することにつながるからです。「気にしすぎ」は「思い込み」であることも。自分で気付くことで、思い込みの修正につながります。
3:呼吸を整える
気にしすぎて、心配や不安を感じているときは、呼吸が乱れます。無意識に息を止めているか、呼吸が浅い状態になっているかも。
「気にしすぎている自分」に気付いたときには、目を閉じてちょっとだけ上を見上げます。そして、ゆっくりと息を吐きだし、1分ほど深呼吸。自分の呼吸に意識を向け、息を吐くときに、心配事や不安がどんどん身体から出ていくことをイメージしましょう。
落ちついてみると、自分の気持ちとうまく向き合うことができます。
おわりに
気にしすぎてしまい、心配や不安にかられてしまうことは、誰にでもあること。そんな自分を責めるのではなく、気配りの配分をちょっと変えてみましょう。まずは自分の気持ちや都合を優先することにチャレンジ。思いのほか、楽に過ごせることに気付けますよ。
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キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン