「打たれ強い」とはどういう意味?
日々の仕事や人との関わりの中で、うまく行かないことや失敗してしまうことはありますよね。そのような時に、ひどく落ち込む人や、いつまでも引きずってしまう人もいれば、全く気にしていないように見える人もいます。嫌なことや困難に動じない「打たれ強さ」を、うらやましく思うこともあるかもしれませんね。この「打たれ強さ」、実は誰でも身につけることができる「スキル(技術)」なのだそう。
5万人以上のキャリアサポートに関わり、ストレス対処法にも詳しいキャリアコーチの菊池啓子(きくち・ひろこ)さんにお話を伺いました。
「まず、『落ち込まない人はいない』ということを忘れないでください。平気そうに見えるあの人も、鈍感なわけではなく、実はちゃんと凹んでいるのです。人は誰でも、嫌だなと思う出来事に直面すると、ストレスを感じます。では、打たれ強く見える人と打たれ弱い人の違いは何か。それはレジリエンス・スキルを、うまく使えているかどうか、ということです」(キャリアコーチ・菊池さん)
レジリエンスとは、「回復力」「復元力」「弾性(しなやかさ)」を表す英単語です。困難なことや脅威に感じること、大きなストレス状況でも、立ち直ることができるしなやかな回復力のことを意味します。これは、生まれ持った才能ではなく、誰でもトレーニングをすることで身につく力。嫌なことがあっても、自分の力で乗り越えられることは大きな長所になります。
打たれ強い人の6つ特徴とは?
打たれ強く見える人は、レジリエンス力が発揮できているということ。ここでは打たれ強い人の特徴を見ることで、どのような状態を目指すのかを確認しましょう。
1:ちゃんと落ち込める
打たれ強いからと言って、落ち込まないわけではありません。むしろ、「自分が落ち込んでいる」ことの自覚があるからこそ、落ち込みをおざなりにすることなく、ダメージ度合が把握できます。
「どれだけ落ち込んでいるのか」というスタート地点がわからないことには、どのように回復していくのかも見えてこないものです。
2:気持ちの切り替えが早い
ストレスからの回復に必要なことのひとつに、「気が済む」という段階があります。自分がどんな気持ちになっているのかが自覚できれば、気が済んで気持ちの切り替えが早くできるのです。
ちゃんと落ち込んで、「自分はこれだけ大変な思いをしているのだ」と自分でわかることで、早く気持ちを切り替え、次に進むことができるようになります。
3:物事を客観的にとらえることができる
何かしらの出来事に打たれて凹んでいるときには、主観的に状況を捉えることで、自分を守ろうとします。ともすると、悲劇のヒロイン思考におちいり、よりネガティブな状態になってしまうことも。
物事を客観的にとらえることで、自分の思い込みで過剰に反応していたことや、見えていなかった事実を見つけることができ、落ち込みからの回復に向かいやすくなります。
4:自分軸が明確
「打たれ強さ」の特徴の中で、「他人の意見に振り回されない」ということもあげられます。批判や非難に動じないという姿勢です。これは、「自分にとって何が大切なのか」がわかっているからできること。自分の判断基準を信じている状態です。
5:多様性を受け入れている
自分軸が明確だと、批判や非難を受けても動じなくなります。でも、自分軸に外れることは許せない! という状態になると、新たな問題も起こるでしょう。本当に打たれ強い人は、「自分が大切に思うことがあるのと同じように、人にはそれぞれ大切なことがある」ということを知っています。
「あなたが大切にしていることと、私が大切にしていることが違うだけ。別に争うことではない。それぞれを尊重しましょう」という意識があれば、批判や非難も「ひとつの意見」として、凹むことなく受け止められるようになります。いわゆる「多様性を受け入れる」という姿勢です。
6:体調管理ができている
意外に思うかもしれませんが、打たれ強さのポイントとして、元気な身体でいることも大事な条件。心と身体はつながっています。身体のコンディションが整っているときには、精神的な攻撃を受けても、ダメージは小さいものです。
嫌なことがあったら、とりあえず寝る! こんな習慣は、心と身体の回復力アップにつながります。
打たれ強い女性を目指す! しなやかメンタルを作る3つのポイント
「打たれ強い」といっても、「屈強な精神力でどんな困難やストレスも跳ねのける!」ということを目指すわけではありません。ちゃんと落ち込み、しなやかに回復をし、凹んだ経験を活かして、自分にも周囲にもやさしく前向きに接していく。そんなしなやかなメンタルを手に入れるために3つのことを意識しましょう。
1:できることに集中する
「できないこと」があるのは、伸びしろがあるということです。できないことに目を向けて落ち込むのではなく、それを事実として受け止めつつ、今できることに集中。ひとつずつの活動の積み重ねで、必ずできるようになっていくものです。
2:いいかげんにあきらめる
「いいかげん」に「あきらめる」と言うと、無責任でひどい人のような気がしますか? 打たれ弱い状態の人は、過度に自分を追い込んでいる傾向があります。物事にはすべて「良い塩梅」「良い加減」があります。「これで十分」と自分を楽にしてあげることも必要。
そして、「あきらめる」とは、「事柄を明らかにする」という意味も。苦しいなと思うことを明らかにしてみることで、自分の望んでいることが見えてくることがあります。
3:すぐにできる気分転換法をもつ
凹んだ気持ちのまま、何かに取り組もうとすると、自分の本来持っている力や長所が発揮しづらくなります。まずは気持ちの立て直しをすることが最優先。落ち着くことで解決の糸口やサポート先が見えてきます。そこで、いつでもどこでもすぐにできる、自分なりの気分転換法を準備しておきましょう。
お気に入りのアロマスティックを持ち歩く。スマートフォンの待受画面を大好きなものにしておく。心を落ち着ける呼吸法を覚えておく。凹んだときにすかさず実行することで、気持ちを切り替えて動き出せるようになります。
最後に
打たれ強いとは、「しなやかなメンタルを持つ」ということ。鈍感なわけでも気にしていないわけでもなく、嫌な状態を短く小さく整えて、早く回復できるというスキルでした。嫌だなと思う経験も、自分の力で乗り越えていくことで、素敵な自分を作り上げていくことにつながりますね。
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キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン