「自分を信じる」って、どういうこと?
「自分を信じる」って、難しいことだと思っていませんか? 本記事では「自分を信じるとはどういうことなのか」をひも解きながら、自分を信じられるようになるためのポイントを、キャリアコーチの菊池啓子(きくち・ひろこ)さんにお話をききました。
「自分を信じるとは、『自分の価値観や判断基準などを、確かなものとして自分自身が受け入れていること』。簡単に言うと、『好き嫌い』や自分にとっての『良し悪し』を自分で判断できていて、『それでいいや』と思えていることです。自分にとってこれは大事なこと。自分にとってこれは譲れないこと。それを『そうである』と疑うことなく確信が持てている“感覚”です」(キャリアコーチ菊池さん)
「自分を信じる」と言うと、強い信念のもと、ゆるぎない自分を確立する! といった感じにかた苦しく考えがち。そして、「自分を信じる」イコール「自信がある」という流れになるので、「私は自信が持てない」という悩みにも発展していきます。実はそこまで大げさに捉えることでもないのです。
感覚的なものなので、自覚をするのが難しいという人もいるようですね。特に「自分は自信がない」と強く思っている状態のときは気づきづらいもの。
ただ、こんな風に考えてみてください。「自信がない自分である」ということを強く思っているのだとしたら。疑うことなく「自分が自信を持っていない」と確信をしているのであれば、これは「自信がない自分である」ということに自信を持ち、信じているということなのです。この「感覚」を、他のことに広げていくことをしていきましょう。
「自分を信じている」人の特徴は?
「自分を信じている」という感覚を、常に持てている人たちの特徴を見ていきましょう。
1:ありのままの自分を受け入れている
良い状態の自分も悪い状態の自分も、「そんなものだよね。ま、いいか」と思えている状態です。どんな人でもいろいろな側面があります。うまくいくこともあれば、残念な結果になることも。自分に対する思いを、無理にポジティブにする必要はありません。「自分を認める」「自分を好きになる」と躍起になることなく、「ま、いいか」「そんなこともあるよね」と軽やかに受け止めています。
2:多様性を受け入れる
自分が「疑うことなく信じていること」に対して、同調しない人もいます。そのことを知っているので「私はそう思うけど、あなたは違うのね」とその事実を受け入れられるのです。いろんな考え方や感じ方がある事がわかっているので、他人と違いが見えてきても、流されることなく振り回されることなく過ごすことができています。
3:「間違いはあるものだ」と知っている
自分を信じられなくなる・自信がなくなる原因として、間違いをおかしたと思い自分を責めてしまうことがあげられます。また、環境や時代が変われば、それまで正しいとされていたことが変わってくることもあるでしょう。
誰でも、どんなことでも間違いはあるもの。信じていたことが間違いだったとしても、それに気付けたことに目を向け、柔軟に対応することができます。
「自分を信じる力」を養う方法は?
「自分を信じる」という感覚は、小さく少なかったりしたとしても、実は誰でも持てているもの。その感覚を育てていくために有効な方法が3つあります。
1:違いを面白がる
自分と違う価値観や考え方・感じ方があるのは当たり前。その違いをネガティブに捉えてしまうと、周囲に振り回されてしまい自分の軸が揺らいでしまいます。違うことは「間違い」ではありません。「どちらが正しい?」と争うと、論破されるたびに自分を信じられなくなります。自分との違いを感じた時に、「なるほど! そういう捉え方もあるのですね」「私とはこんな風に違うんですね」と興味を持って面白がることで、人に振り回されることが少なくなっていくのです。
2:客観的視点を持つ
違いを面白がるためにも、客観的視点を持つことが大事です。客観的視点とは、主観はひとまず置いておいて、事実ベースで事柄を捉える観点のこと。それができると、すべてのことはポジティブに捉えられる部分とネガティブに捉えられる部分がある事に気付けます。そのうえで、自分にとって「これは譲れない」「これは大事なこと」と感じることができると、自分の軸となる「信じる力」が育まれていくわけです。
3:成し遂げてきたことを書き出す
幼い頃から今日まで、「成し遂げてきたこと」を思いつくまま書き出します。ここでは大きなことも些細なことも、同じ土俵に上げていきましょう。「寝ないで勉強した末に難関志望校に合格したこと」や、「仕事で全社表彰されたこと」などはもちろんですが、「歩けるようになった」「着替えができるようになった」「字が書けるようになった」などでも構いません。
今のあなたからしたら「そんな些細なこと」だったとしても、小さかったあなたは、きっと達成感を得たことでしょう。質は問わず数多く出していくことがポイント。「自分の力で、できるようになったことが多くある」ということを自覚することで、自分という存在の確かさを信じることができます。
「自分を信じる」ことにつながる3つの名言
日常を過ごしていると、ふと自分を信じる力が発揮できないこともあります。そんなときには、「座右の銘」と言える言葉を心に置いていきましょう。ことわざや四字熟語などはリズム感もあり、フレーズとして覚えやすいので、信じる力を取り戻すのに有効です。ここでは3つの言葉を紹介します。
1:一念通天(いちねんつうてん)
一念通天は、「何事も信じて念じ続ければ、天に通じて成し遂げられる」という意味があります。自分の行動が本当に正しいのかと不安になった時に、力を与えてくれる言葉です。
2:桜梅桃李(おうばいとうり)
桜梅桃李とは、桜・梅・桃・李(すもも)のこと。「それぞれが美しい花を咲かせるように、他人と自分を比較するのではなく、個性を磨くことが大切だ」という教訓も含む言葉です。
他人と比較して自己嫌悪に陥ってしまうのではなく、自分らしさを大切にすることを教えてくれる言葉ですね。
3:Just trust yourself, then you will know how to live.
英語のフレーズとして、文豪ゲーテの名言を。「自分自身を信じるだけでいい。きっと、生きる道が見えてくる」。自分を信じることで、人生がひらいていくことを示唆しています。
最後に
自分を信じる力は、誰にでも備わっているもの。自覚ができない・自分を信じられないという感覚がある時は、ぜひ本記事の3つの方法を試してみてください。自分を信じられる実感があると、人生を充実させることができますよ。
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キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン