泣きたいのに泣けない原因は?
「泣きたいのに泣けない」という状態は、自分にストッパーをかけているということ。心の中での「泣きたい」と「泣かせない」のせめぎあいには、主に3つの理由があるとされています。
1:「泣いてはいけない」の思い込み
「泣くこと」は、いけないこと。そんな思い込みに囚われて苦しんでいる大人が、たくさんいます。幼い頃は、感情のままに泣くことができましたよね。いつの頃からか泣きそうになった時に「泣いてはいけない!」と自分に指令を出すようになってしまっています。
これは、こどもの頃に泣くことで不利益を感じた経験があったから。先生や親に「泣くんじゃない!」と怒られたり、泣いていることでいじめっ子にからかわれたり。実は、泣くことを我慢する方がストレス度が高くなります。泣く事のメリットをしっかり理解して、自分に泣くことを許可してあげましょう。
2:緊張状態が続いている
ショックなことが起こったときは、心身とも緊張状態に陥っています。「緊張している」ということは、過度のストレス状態だということ。苦しいという自分の気持ちを自覚するよりも、その場を何とかすることの方が優先されます。
また、一息ついてほっとしたとたんに、涙があふれるという経験をした人も多いのではないでしょうか。これは、「泣いても大丈夫」という安心感が得られたから。緊張状態が続いているときは、物理的・時間的に距離を置くことが必要になります。
3:泣いても無駄だと思っている
「泣いても、自分の思い通りに物事は動かない」という経験から、泣かないことを選ぶ人もいます。たしかに、泣いているだけでは苦しみの解決にはつながりません。
感情が大きく揺さぶられているのは、ストレスを感じているということ。人間は、ストレス状態だと知能指数が下がり、冷静で建設的な思考ができなくなるとも言われています。泣くことで気持ちを落ち着かせ、解決に向けての効果的な行動を自分で見つけることはできるのではないでしょうか。
泣きたいのに泣けない人の特徴は?
「泣きたい気持ちがあるのに、涙が出てこない」、「泣き方が分からない」。そんな状態にある人の特徴として、3つの要素を挙げていきます。
1:弱みを見せたくない
「泣くのは弱いから」、「泣くことは恥ずかしい」、「人前で泣くなんてみっともない」など、自分自身に制限をかけているケースです。物事を勝ち負けでとらえたり、優位なポジションにいたいとの思いから、弱みを見せることを恐れている人が多いようです。
2:他人に迷惑をかけたくない
自分が泣くことで、まわりに気を遣わせてしまうのではないかと不安を感じている人も。「困らせてしまうのではないか」、「自分だけが大変なわけではない」との思いから、周囲へ感情を悟られないようにふるまいがちに。「私は大丈夫」が口グセになっていて、適切なSOSが出せない状態です。
3:理知的でがまん強い
泣きたいのに泣けない人は、辛いことや困りごとがあった時、まずは「どうすればよいのだろう」ということに意識をむけて、論理的に思考をしていきます。また、「今はそんな場合じゃないから」と自分の気持ちを後回しにするクセがついている人も多いです。思考を優先させ、その瞬間の気持ちをがまんしていくことで、自分の感情に反応がしづらくなり、泣けなくなっている状態と言えるでしょう。
泣くことで得られる効果
実は、涙には心身に良い影響を与える成分がたくさん入っています。また「泣く」という行為が、脳にリラックスを与える事になるとも言われています。泣くことによるメリットを知ることで、「泣けない自分」から解放されて、日々をもっと楽しく過ごすことができるのではないでしょうか。
1:ストレス緩和とリラックス
ストレス状態というのは、自律神経の中の交感神経が優位になって緊張・興奮状態が続いているということ。泣くことで副交感神経のスイッチが入り、ストレスがリセットされます。また、泣くことで幸せホルモンともいわれるセロトニンが分泌され、リラックス状態になるのだとか。
2:痛みの緩和
涙の中には、苦痛を和らげるエンドルフィンという成分が含まれています。エンドルフィンの鎮静作用はモルヒネより大きいと言われていて、痛みをおさえ落ち着きと幸福感をもたらすのだそうです。心身に痛みを感じた時に涙を流すのは、人体に備わっている有益な機能だととらえましょう。
泣きたいときに泣ける方法
泣くことには、沢山のメリットがあります。しかし、涙が流れれば良いというわけではありません。玉ねぎを切って出てくる涙ではなく、「感情をともなう涙を流す」ことがポイント。泣きたいと思ったときに、泣くことを選べる準備をしておきましょう。
1:自分好みの涙腺を刺激する映画や音楽を見つけておく
自分事では泣けないという人も、定期的に泣いてデトックスをする習慣を持つことが大事。そんな時のおともとして、エンターテインメントの力を借りましょう。好みもあるので、ネットで「泣ける映画」「泣ける音楽」などを検索して、自分のとっておきを見つけてみてはいかがでしょうか。
2:お風呂にゆっくりつかる
意外に思われるかもしれませんが、身体が冷えて固い時には、感情に意識を向けられないものなんです。あたたかい場所で一人きりで解放されるお風呂は、絶好の「泣けるスポット」。お風呂にゆっくりつかりながら、自分をいたわるようにマッサージをすると、心も体もほぐれてきて、涙をこぼすことができるかもしれませんね。
最後に
感情的に泣きわめく、というようなことは大人の嗜みとしてはイマイチ。とはいえ、上手に泣ける自分であることは、より良い人生を生きるために必要なことです。泣くことを上手にコントロールし、活用することで素敵な日々を送っていきましょう。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン