もしかして病気? 自分の気持ちがわからない原因は?
「自分の気持ちがわからない」と不安になることはありませんか。そんなときネットで調べてみると「うつ」や「アスペルガー」「発達障害」などというキーワードがでてきて、「病気なのでは?」と悩んでしまう人も。実は、「自分の気持ちがわからない」ことは、ありがちなこと。
自分の気持ちなのに、どうしてわからなくなってしまうことがあるのか。キャリアコーチの菊池啓子(きくち・ひろこ)さんにお話を伺いました。
「全ての感情が言語化できたり、明確に捉えられるわけではありません。恋愛関係でも、友達でも、家族でも、『好き、だけども嫌』なんてことは、あるものです。いろいろな気持ちが複雑に絡み合うのは、人として健全な証拠でもあります。ただ、わからないままだと不安はつのるもの。少しでもスッキリさせるために、自分の気持ちに向き合う習慣を作っていきましょう。
そして、何よりも大事なことは、『どんな気持ちにも、そう思った理由があり、どんな気持ちになるかは自由』だということ。どれだけネガティブな気持ちであっても、です。ある人に対して『一生、絶対に許さない!』という怒りを持ったとします。
その気持ちのままに、トラブルになるような行動をするのは、適切ではありません。でも『怒り』の感情が湧くのは自由です。どんな気持ちも、そう思う自分を許してあげましょう」(キャリアコーチ菊池さん)
では、なぜ「自分の気持ちがわからない」ということが起こるのでしょうか。
1:周りを優先しすぎている
周囲の人たちの気持ちや状況が見えてしまい、自分のことは後回しにしてしまうことはありませんか。感情は「なまもの」なところもあるので、その場で感じておかないと、鮮度が落ちてしまいます。
「本当は嫌だけど、みんなが盛り上がっているのを崩したくない」「私も大変だけど、この人の方が大変だよね。頑張って元気を出して、はげましてあげよう」などと、周りを優先していると、自分の気持ちをキャッチする感度が落ちていきます。周りへの気遣いを見せる前に、まずは自分が「こう思った」を意識しましょう
2:こなさなければいけないことが多い
日々「やらなければいけないこと」に追われているときは、自分の気持ちをキャッチする感度を下げています。頭を使って客観的に論理的に判断をすることを優先させるからです。「気持ち」は、極めて主観的なもの。そして気持ちを味わっているときには、行動は止まるもの。立ち止まる暇がないほど、多くのことをこなしていると、自分の気持ちに気付きづらくなります。
3:感情を出してはいけないと思っている
「ネガティブな感情は人の前で出してはいけない」などと思っていませんか? ポジティブなものもネガティブなものも、「感情」としては同じもの。どちらか片方だけを出すということはできません。また、「ポジティブな感情だとしても、はしゃぎすぎるのはみっともない」などと思って抑えていることもあります。
しっかりと抑え込むことで、全部の感情に気付きづらくなるという習慣ができてしまいます。因みに、感情を表現するのに、感情的になる必要はありません。悲しいからと言って泣き叫ぶ必要はなく、「今言われたことで、私はとても悲しくなったんだよ」と、しっかりと言葉と表情で伝えていけばいいのです。
自分の気持ちを理解するための方法は?
「自分が今、どんな気持ちでいるのか」に気付くことは、「何を求めているのか」「どうしていきたいのか」などを明らかにして、自分らしく過ごすために必要なこと。「自分の気持ちがわからない」ときには、3つの方法を試してみましょう。
1:気の置けない人と話してみる
気の置けない人と、ゆっくり「おしゃべり」や「雑談」をしてみましょう。何か目的のある会話ではなく、ただ話すだけ。相手の言葉や自分が言った言葉で、ちょっとでも「気持ちが動く」ことに意識を向け、その気持ちを「うれしい」「不安」「イラっとした」など言語化します。気持ちのゆらぎを捉える練習です。
2:「そのとき私は…」構文を使う
出来事を振り返りながら、「そのとき私は…」という文章を頭に思い浮かべます。例えば、「仕事でミスした後輩を注意したら、嫌な顔をされてしまった。そのとき私は…」という感じです。ちなみに、感情とは「喜怒哀楽・恐」というようなもの。「そのとき私は『そんな顔しなくてもいいじゃん。ミスをしたのはあなたでしょ』と思った」ので「イラついた(怒りの感情)」という感じで、「感情」にたどり着くまで掘り下げていきましょう。
3:「快」「不快」の二択で仕分けをする
気持ちがわからなくなっているときは、ひとまずシンプルに捉える練習も効果的です。「なんとなくいい」「なんだか嫌だ」といった感じで、「快」「不快」の二択で仕分けをします。そのうえで、もうちょっと深掘りできるようでしたら、気持ちを言語化してみましょう。
自分の気持ちに気付きやすくなる習慣
「気持ちに気付く」ということは、自分の気持ちの変化に意識が向いているということ。これは習慣です。自分の気持ちがわからないときは、2つのことを意識して過ごしてみましょう。
1:ドラマや小説などに触れてみる
「自分の感情が動いた」ことに気付くために、ドラマや映画、小説や漫画などのエンタメの力を借りましょう。自分事でなくても、気持ちが動くということを実感できればOKです。
「笑う」「泣く」を意識し、その感情のままに、笑い声を出したり涙を流したりをすることで、日常の心の動きが捉えやすくなります。
2:感情を表す言葉を集める
例えば「怒り」の感情は「イラつく」「カチンとくる」「ムカつく」「腹が立つ」「怒る」「激怒」「憤怒」など、まだまだいっぱいあります。そして、それぞれのニュアンスによって、気持ちの度合いは違ってきますよね。「感情辞典」というものもあり、気持ちを表現する言葉は沢山あります。表現の幅を広げることで、自分の気持ちを表しやすくなります。
最後に
「自分の気持ちがわからない」と不安に思ったときは、「どんな気持ちが出てきてもいい」と、自分を許してあげることからはじめてみましょう。感情に良いも悪いもありません。嫌な気持ちになることは、自分にとっての「こうだったらいいのに」を見つけることになります
良い気持ちになることは、「もっとこうしていきたい」を見つけること。それがわかっていれば、自分の気持ちとうまく付き合えるようになっていきます。
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キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン