自分を知るとは?
「自分を知る」とは、自分の特徴・特性を理解しているということ。先日、Oggiブレーンの方から、こんなお悩みをいただきました。
「転職したばかりで、今後のキャリアアップについての漠然とした不安があります。」(Sさん・39歳・女性/三重県)
新しい環境で不安に感じることはありますよね。このお悩みが「自分を知る」ことで、どのように解決につながるのか。キャリアコーチの菊池啓子さんにお話を伺いました。
「Sさんは転職したばかりということなので、これまでのお仕事の振り返りや長所などをワークシートに書き込んだりしながら、『自己PR』をする為に自己分析などは行われたと思います。心理テストや適職診断なども利用しながら、『自分って、こんな人』ということを言語化されたのではないでしょうか。
就職・転職活動における自己分析は、『採用をされる』という評価を得るために、『他人に向けて自分の“良さ”をアピールする』ための情報収集です。いわば、他人軸による自分像を組み立てていくようなものです。
一方、自分のキャリアをつくっていくために必要な情報は、他人からの評価はひとまず気にする必要はありません。Sさんの不安を払拭するのに有効な『自分を知る』は、自分軸を明確にし、自分が何を望んでいるのかを理解し、それに向けて動き出せている自分を感じることができている状態です」(キャリアコーチ・菊池さん)
特徴とは「他と比べて際立っている様子」のこと。また、特性とは「その人の中で、一貫してあらわれている行動や態度の傾向」のことです。「わたし」を構成している考え方のクセや行動・感情のパターン、好き嫌いの傾向や、できること・できないこと、何を幸せと感じてどのような人生を送っていきたいかなどを、自覚して言語化できている状態ともいえます。
「キャリア」とは仕事のことだけではありません。仕事を含む人生そのものがキャリアともいえるでしょう。「どのような人生を送っていきたいと思っているのか」を理解していることが、「自分を知る」ということでもあります。そして、望む人生を実現させるための手段として、仕事や会社があるわけですね。
社会人経験があるということは、すでにある程度のビジネススキルはあるということ。そこで、「自分はどのように過ごすことができれば幸せを感じられるのか」を明らかにしてみましょう。それを実現させるために何が必要なのかが見えてくると、漠然とした不安は目指すべきゴールや超えていく課題へと変化します。それにより、今後取り組むことが見えてくることでしょう。
「自分を知る」ことで得られるメリットは?
自分を知ることで得られるメリットとして、不安に思うことが少なくなります。そして、何かを選択するときに迷うことが少なくなるでしょう。これは、自分の特徴・特性を把握することで、得手不得手や優先順位が見えてくるからです。
自分のことは、わかっているようでわかっていないもの。これは、自分の特徴・特性が自分にとって「あたりまえ」すぎるから。自分にとって「あたりまえ」で「簡単にできる」ことは、他人からみるとスペシャルな「才能」であるということに、気付いていないだけなのです。因みに、才能と言うと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、「人にやさしくできる」や「コツコツ続けることができる」や「困りごとを見つけることができる」ということも、立派な才能です。才能を発揮しているとき、人は幸せを感じることができます。
あたりまえすぎて気づいていないことは、人と話してみたり、本を読んでみたり、性格診断のアプリなどを利用してみると、「あれ? 自分でこんな面があったんだ」と見えてくることがあります。いろんな刺激を取り入れてみてください。
自分を知るための7つの質問
ここで、自分を知るために有効な7つの質問を列挙しておきます。ぜひ、ノートを用意して、書き込んで残してみてください。定期的な見直しをしていくことで、自分の変化や成長の記録になっていきます。
1:何に対して、お金と時間をかけている?
大切に思うことや興味関心が向いていることには、お金と時間を費やしているものです。お金と時間を費やしている「理由」と、それによって得られているもの・得たいと思っているものはなんでしょうか? これが、望んでいることの明確化につながります。
2:どんなことにイラっとする?
イラつきポイントは、自分が大事だと思っていることが損なわれているから。まずはイラつきのエピソードをいくつか出して、共通点を見つけてみましょう。そこから、自分が大事にしたいと思っていることがわかります。
3:他人からよく頼まれることは?
他人からの頼まれごとは、「それができる人だ」と周囲から認識されているということ。ここに、あなたの才能が眠っているかもしれません。頼まれごとの中でも、自分が楽しんでできることは、充実感を得られる活動につながります。
4:絶対にやりたくない仕事・作業は?
ネガティブなことからも、自分の特徴を知ることができます。やりたくないと思うことの理由は? どのような状態であれば、その仕事や作業に向き合えそうですか? 「やりたくない」「嫌だと思う」の反対側に、あなたのやりたいことや望んでいる過ごし方が見えてきます。
5:どんなふうに褒められたい?
人によって、うれしく思うポイントは違います。仕事の進め方でも「いつも丁寧ですね」と言われるのと、「スピード感がありますね」と言われるのでは、こだわりポイントが違いますよね。ファッションでも、「かわいい」と「かっこいい」では、意識しているテイストが違います。褒められてうれしいことは、自分のありたい姿を見つけるきっかけになるでしょう。
6:自分史をひも解いてみる
幼い頃からの印象的な出来事(ポジティブ・ネガティブどちらも)を書き出してみましょう。まつわる人たちとのエピソードや、そのときの自分の気持ちなど、出来事を分析していきます。ネガティブだと感じた経験は、それをどのようにして乗り越えてきたか。そこから、その経験で得たスキルや考え方・人生観などが明確化されるとともに、自分の行動や選択のパターンが見えてきます。
7:最後のとき、何を思っていたい?
「幸せだな」と感じられる人生を送った自分が、この世を旅立つとき、何を思っていたいでしょうか。何に対して感謝の気持ちを持っているでしょうか。考えるのはまだ早いのでは? と思うかもしれませんが、最終章の締めくくりをイメージすることで、自分のありたい姿が見えてきます。
最後に
自分を知ることは、生きている限り続く探究の道であり、キャリアや人生を築いていくために必要な情報収集です。自分自身に興味を持って日々を過ごすことで、自分の特徴や特性が明らかになり、不安が解消され、自分が望んでいる選択ができるようになります。
※本記事はOggiブレーン会員に対して2022年10月に行った「働き方アンケート」に回答いただいたOggi読者の回答をもとにしています。
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キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン