「シュール」の意味や語源とは?
「シュールな笑い」「シュールすぎるイラスト」など、当たり前のように使われている「シュール」という言葉。なんとなくニュアンスは掴めても、はっきりと説明することはできないという方も多いのではないでしょうか? 会話の中で間違った使い方をしないように、「シュール」の意味や使い方を改めておさらいしておきましょう。
意味
「シュール」は和製のカタカナ語で、「非日常的・超現実な表現や発想」のことです。わかりやすくいうと、現実ではありえないような変わった状況を表します。使い方としては、「シュールな光景」「シュールな笑い」など。
現在の日本では意味がやや派生して、「独創的で尖った作風」を表すことが多く、特にお笑いや芸術の分野で使われます。「シュールなイラスト」や「シュールな映像」、「シュールな芸風」などと評され、若者の間で話題になっているコンテンツも見られますね。
語源
「シュール」という言葉は、もともと「シュルレアリスム」の略語であると言われています。「シュルレアリスム」とは、フランスで起きた芸術思潮のひとつ。1924年に作家・アンドレブルトンが提唱した『シュルレアリスム宣言』に始まります。これは、フロイトの深層心理学に影響を受け、普段抑圧された夢や幻想、願望の世界を芸術の分野で表現するといった革新的な思想でした。
この思想に共感した画家たちは、現実からかけ離れた作品を描くようになり、「シュルレアリスム」は大きな芸術運動となっていきました。「シュルレアリスム」に影響を受けた画家には、スペインのサルバドール・ダリやベルギーのルネ・マグリットなどが挙げられます。ダリが描く奇妙に歪んだ時計の絵などはまさに、人間の意識下の世界が表現されたものといえるでしょう。
使い方を例文でチェック!
もともとはフランス語で、「シュルレアリスム」という芸術思想を表す言葉でしたが、現在の日本では意味が派生して、お笑いなどの様々な分野で使われています。ここでは、日常会話でのあるあるな表現を3つ紹介しましょう。
1:地方で人気になっているゆるキャラがシュールすぎる。
若者たちの会話では、「○○がシュールすぎる」「○○ってシュールだよね」などと言ったりしますよね。ご当地のキャラクターやクリエイターが書いたイラストには、「なぜこんなものが?」と思うような一風変わったデザインのものも多くみられます。現代の日本では、あまりに独創的で奇抜なものというニュアンスで使われることが多いようです。
2:あの芸人はシュールな芸風で知られている。
先述したように「シュール」は、お笑いのジャンルでもよく登場します。例えば、独特な世界観を持っている芸人や、ツッコミとボケというお決まりのスタイルに捉われない、型破りな芸風を持っている人など。こうした人は、まさに「シュールな笑い」を体現しているといえるでしょう。ちなみに、お笑いに対して「シュール」という表現を使うのは、日本独自の使い方だと考えられます。
3:子供たちが遊んでいる公園で、大人がひとり逆立ちしているさまは、まさにシュールな光景だった。
現実では考えられない奇妙な光景を見たときに、人は「シュールな光景だね」というものです。使う場面としては、この例のように周囲の環境とギャップを感じるものがひとつある場合。変だ、奇妙だという意味で「シュールだ」と表現することが多いでしょう。ただし、場合によっては馬鹿にしている、見下しているように思われる可能性もあるので、使うときは注意が必要です。
類語や言い換え表現とは?
「シュール」と似たような意味を持つ言葉を知っていますか? 一緒に覚えて表現力をアップさせてみましょう。
非日常的
「非日常的」とは「日常的ではないこと」で、現実ではありえないような出来事や状況を指します。当たり前のことや世の中の基準からは外れていることという意味で「シュール」の類語といえるでしょう。
現実離れ
「現実離れ」とは、「現実に即していないこと」。世俗的な価値観や感覚からかけ離れていることを言います。例えば、山奥で一人で暮らしていたり、反対に高層マンションに暮らしボディガードがついているなどの生活は、「現実離れしている」と言ってもいいでしょう。
不条理
「不条理」とは、「筋道が通らないこと」「道理に合わないこと」。フランスの作家・カミュは、代表作『異邦人』『ペスト』に絶望的な不条理に反抗する人間の姿を描いたことで有名です。「現実的には考えられないこと」という点において、「シュール」と意味が類似していますね。
「シュール」の対義語とは?
「シュール」の対義語には、日常的といった意味合いの「平凡な」「ありきたりな」が挙げられます。さっそく意味をチェックしてみましょう。
平凡な
「平凡」とは、「これといった特色もなく、ごく当たり前なこと」です。「平凡な人生」や「平凡な人」などと使われることが多いですよね。特別なことが起きず、退屈な日々や個性がなくつまらない人といったニュアンスで使われることが多いでしょう。非現実的で一風変わったものを表す「シュール」とは、正反対の言葉です。
ありきたりな
珍しくないことや、ありふれていることを「ありきたり」と言います。どこかで見たことがあるようなストーリーを「ありきたりな内容」というように、予想の範囲内であることに対して使われることが多いようです。突拍子もない発想や表現である「シュール」とは対照的ですね。
最後に
今回は、「シュール」の意味から語源、使い方について見ていきました。「シュール」は、フランスの「シュルレアリスム」が元になって生まれた和製のカタカナ語。日本では、変わったものや珍しい光景を見たときに「奇妙な」「独創的な」といったニュアンスで「シュール」と言うことが多いようです。今までなんとなく使っていたという方は、この機会にしっかりと意味を理解して使ってみてくださいね。
TOP画像/(c)Shutterstock.com