「水を差す」の意味
「水を差す」は、「水を加えて薄くする」ことを表す言葉として使われるほか、「うまく進行していることに対して、わざわざ横から邪魔をする」という意味でも使われ、慣用句としての役割を持ちます。
慣用句としての「水を差す」
慣用句とは、“二つ以上の単語を組み合わせ、定型的な表現として用いられる言い回し”のことを指します。「水を指す」のほか、「根も葉もない」「歯を食いしばる」なども慣用句です。
今回は、「うまく進行していることにわきから邪魔をする」という意味での、慣用句としての「水を差す」について解説していきます。
「水を差す」の語源
「水を差す」が“邪魔をする”という意味になった由来は、適温のお湯や料理に水をそそぐことからきています。
温度や味の調整をするために料理に「水を差す」のではなく、“水を加えることで台無しにしてしまう=良い状態のものをわざと悪くする行為”を表現することから、「うまく進んでいるのにわざと邪魔をして物事を台無しにすること」を意味するようになったと考えられます。
「水を差す人」とはどんな人?
「順調に進んでいる物事に対して、わざわざ横から邪魔をする」という意味で用いられる「水を差す」。人に対して使うことが多いですが、どんな人が当てはまるのでしょうか。またはその対処法は? まずは、「水を差す」の使い方から紹介します。
「水を差す」の使い方
「水を差す」は、「水を差す発言」「水を差す行動」「水を差す人」など、その人または人の行動に対して様々な使い方をします。
「水を差す人」の特徴
職場やプライベートで水を差す人がいると、ストレスが溜まってしまうこともありますよね。どのような関わり方をすればよいのか、水を差す人の特徴を考えてみましょう。
注目されたい人
人からの注目を浴びたい、自己アピールをしたいという気持ちが強い人は、つい余計な発言や行動をしてしまい、それが水を差す結果になってしまうことがあります。自分に自信を持っている人が多く、自分を認められない=頼りにされないことを不満に感じ、余計なことをしがちなのかもしれません。
無神経、空気を読むのが苦手な人
空気を読むのが苦手な人は、他人の意見や方向性を考えず、自分勝手な意見を通したり独断で行動してしまうことがあります。
「水を差す人」への対処法
「水を差す人」には、無意識的に水を差す行動をしてしまう人と、意識的にそういった行動を取る人に分かれます。水を差す人とは、どのような関わり方をすればよいのでしょうか。
悪意がないことを理解した上で注意する
無意識で水を差す行動をしてしまう人には、その人の行動に悪気がないと分かっていることを相手に伝えつつ、その行動が迷惑や邪魔になっていると柔らかく注意すると、改善する可能性があります。空気を読むことが苦手な人には、理解を示した上で都度注意をしていくといいかもしれません。
受け流す
わざと水を差す行動をする人に対しては、注意や声掛けをしても時間と労力がかかるばかりになる可能性が高いので、極力関わらず余計な発言などは受け流すことが大切です。
嫌味っぽくアドバイスや余計なことを言ってくる人に対しては、「ありがとうございます」「勉強になります」などの反応をし、嫌味を言っても意味がないと思わせるのも効果的です。
「水を差す」の類語、言い換え表現
「水を差す」は、他の言葉に言い換えるとどのような表現になるのでしょうか。3つの言い換え表現を紹介します。
横槍を入れる
「横槍(よこやり)を入れる」とは、「第三者が横から干渉し、邪魔をすること」を指す言葉です。仕事中や人と話しているときに余計な口出しをしたりすることをいいます。
戦で両軍が戦っているところに、別の部隊が横から槍で攻め入る様子から転じて「邪魔をする」といったニュアンスで使われるようになりました。
物事が順調に進んでいるときにわざわざ邪魔をする「水を差す」に対し、「横槍を入れる」は状況に関わらず邪魔をするときに使います。
茶々を入れる
「茶々(ちゃちゃ)を入れる」は、「冷やかして邪魔をする」という意味です。話が盛り上がっているときにわざわざ割って入って、その場に合わない冗談や冷やかしを言ったりすることを「茶々を入れる」と表現します。
「茶々」は「お茶」のことを指し、仕事中などにお茶を入れて一服をすることから転じて、やっていることを中断し何かを挟むことを表現するようになったといわれています。
腰を折る
「腰を折り曲げる」と「話を途中で妨げる」の意味があり、「水を差す」の類語としては後者の慣用句としての「腰をおる」が使われます。体を支える中心である腰は非常に重要な部分であり、それを折ることから「物事の重要な部分を折る」という意味合いを持ちます。
一般的には「話の腰を折る」という使い方をし、「話を途中でさえぎって邪魔をする」といったニュアンスで使われます。ビジネスシーンにおいては、「話の腰を折るようで恐縮ですが」などのクッション言葉としても使うことがあります。
「水を差す」を使った例文
日常生活でもビジネスシーンでも使う場面の多い「水を差す」。例文から具体的な使い方をチェックしましょう。
せっかく盛り上がっていたのに、彼が水を差したせいで気まずくなった
友人や仕事の会議などで会話が盛り上がっている時に、誰かが口を挟んだり無理やり話に入ろうとしてきて、嫌な気持ちになったことがある人は多いのではないでしょうか。
「〜さんが水を差したから」「〜さんに水を差されたせいで」など、誰かのせいでその場の空気が悪くなってしまった時などに使います。
父に大人の話に水を差すなと叱られた
真剣な話をしている時に、つい「何の話をしてるの?」などと会話に入り込んでしまったことはないでしょうか? 子供の頃に親の井戸端会議が始まった時など、手持ち無沙汰になり話に入りたくなったりしますよね。
このように、何らかの理由で自分の存在をアピールしたい時などについ水を差す行動をとってしまうことがあります。自分に関係のない話の時は、極力話に入らないよう気をつけたほうがいいかもしれません。
水を差すようで申し訳ございませんが、話を本題に戻しましょう
クッション言葉としてビジネスシーンで使える例文です。会議や商談などで、話が横道に逸れてしまった時、いきなり「話を戻しましょう」などと発言すると、失礼な人、空気が読めない人と思われてしまいます。話を戻したいときは、「水を差すようで申し訳ありませんが…」と前置きすることで、丁寧な印象にすることができます。
「水を差す」の英語表現
「水を差す」の英語表現は、「throw cold water on~」です。直訳すると、「冷たい水を〜の上に注ぐ」ですが、日本語のように「邪魔をする」という意味でも使うことができます。
例文
throw cold water on the talk
話に水を差す
Don’t throw cold water on her studying.
彼女の勉強に水を差さないで
最後に
「水を差す」の意味や例文、英語表現を紹介しました。日常生活はもちろん、使い方を正しくマスターすればビジネスシーンでも使える「水を差す」。言い換え表現などもチェックして、正しい使い方を心がけましょう。
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