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「風雲急を告げる」の意味と由来
「風雲急を告げる」は、今にも世の中が大きく変わりそうな、不穏な流れが近付いていることを表します。
そもそも「風雲」とは、「風や雲」または「何かが起こりそうな時代の情勢」のことです。
「風雲急を告げる」の意味は、風が起こり、空で雲が渦巻き、大自然が変事の予兆を告げるさまに由来しています。
政治や社会情勢を語る際に用いるのが一般的ですが、個人的な事情でも使用できます。ビジネスシーンにおいても、何か悪いことが差し迫っている状況や心情を表す言葉として活用してください。
風雲急を告・げる
出典:小学館 デジタル大辞泉
今にも大きな変動が起きそうな、さしせまった情勢である。「―・げる政界再編の動き」
「風雲急を告げる」の使い方
「風雲急を告げる」は、以下のようにビジネスシーンで活用できます。
・発売間近の製品に欠陥があることが判明した。部署内は関係各位への対応に追われ、今後の流れに風雲急を告げる有様だった
・「13時から会議室に全員集まるように」とだけ告げ、その場を去った課長の姿は、メンバーに風雲急を告げるものだった
・クレームを受け確認したところ、システムの不具合は1週間前から発生していたらしい。誰も気付かなかっただけで、すでに風雲急を告げる事態にあったのだ
「風雲急を告げる」の類語や言い換え表現
「風雲急を告げる」には、以下のような類語や言い換え表現があります。
・一触即発(いっしょくそくはつ)
・呉越同舟(ごえつどうしゅう)
・嵐の前の静けさ
・風前の灯火(ふうぜんのともしび)
「一触即発」や「呉越同舟」のような四字熟語は、状況や思いを端的に伝えたいときに便利です。
ビジネス上のコミュニケーションスキルを高めるため、「風雲急を告げる」の違いとともに、それぞれの意味合いを確認していきましょう。

「一触即発(いっしょくそくはつ)」
「一触即発」は、ほんの些細なきっかけで、物事が悪い方向へ急展開するような様子を表します。
不穏な流れを察知している点は「風雲急を告げる」と同様です。ただし「一触即発」の場合は、より危険度が高い場面に適しているといえます。
ビジネスでは、事態の急転に備え、より注意深い行動が求められる状況を表現できます。危険と隣り合わせともいえるような、緊迫感の高いシーンで使用しましょう。
・土地の所有権をめぐる一触即発の事態を緩和するため、両社の責任者による話し合いの場が設けられた
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「呉越同舟(ごえつどうしゅう)」
普段は敵対する者同士が同じ場所に居合わせること、困難を迎えて互いに協力するさまは「呉越同舟」と言い表します。不穏な状況を迎えるという点から、「風雲急を告げる」の類語とされる四字熟語です。
語源は中国の戦国時代の武将「孫子」が、戦のノウハウについて記した「九地」にあるといわれています。「困難を乗り越えるためには、敵対するものであっても力を合わせなければならない」と、協力の大切さを説いた言葉です。
・入社以来ライバル関係にある2人だったが、経営不振を乗り切るべく呉越同舟し、新たなプロジェクトに乗り出した
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「嵐の前の静けさ」
「嵐の前の静けさ」は、不吉なことが起こる前の不気味な静けさを表す言葉です。「風雲急を告げる」と同様、自然の様子を不穏の予兆にたとえています。
実際に、台風の前は大気の状態が乱れて雲の形が変化したり、水蒸気の関係で美しい夕焼けが現れたりするといいます。
穏やかな情景が台風の前兆であるように、何か不吉なことが待っているのでは? と思えるほど静かで穏やかな状況に適した表現です。
・「昨日のトラブルについて問い詰められるかと思ったのに、課長は朝からずいぶん機嫌がよさそうだね」「たしかにそうですね。嵐の前の静けさじゃないといいけど… 」
「風前の灯火(ふうぜんのともしび)」
「風前の灯火」は、目の前に危機が迫り今にも命が尽きそうなことのたとえです。ともした灯りが風にさらされ、消え入りそうな様子を表しています。
命だけでなく、物事が滅びることに対しても使用できる表現です。ネガティブなニュアンスが強いため、メールや会話文などでは慎重に使用しましょう。
・多大な負債を抱え、取引も打ち切られた。さらには新たな融資のめどもない。我が社はまさに風前の灯火だ
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「風雲急を告げる」の対義語
ここからは、「風雲急を告げる」の対義語について確認していきましょう。
・天下泰平(てんかたいへい)
・平穏無事(へいおんぶじ)
対義語を知ると、もとの語句への理解がより深まります。それぞれの使用例も参考にしてください。

「天下泰平(てんかたいへい)」
「天下泰平」とは、世の中が平和に治まっていることです。「天下太平」と書き表すこともできます。
「泰平」、「太平」ともに平和で穏やかな世を表す言葉です。不穏を予感させる「風雲急を告げる」とは、対極的な位置にある言葉といえます。
また、「天下泰平」には「心配事を抱えずのんきに暮らす」という意味もあります。2つの意味があることをふまえ、使用例を確認しましょう。
・主人公が激動の時代を乗り越え、天下泰平の世を迎えるまでを描いたドラマが評判を読んでいる
・定年を迎え毎日趣味に打ち込む父は、天下泰平な暮らしを楽しんでいるようだ
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「平穏無事(へいおんぶじ)」
「平穏」と「無事」には、どちらにも「普段と変わらず穏やか」という意味があります。2つを重ねた「平穏無事」は、心配事のない穏やかな状況を表した言葉です。
以下のように、「風雲急を告げる」のような不穏な予兆のない、なにひとつ変わらない様子を願う様子に適しています。
・今年は仕事もプライベートもトラブル続きの1年だった。来年こそ平穏無事に過ごしたいものだ
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不穏な状況は「風雲急を告げる」と言い表そう
「何か嫌な予感がする」、「トラブルが起きそう」という状況は「風雲急を告げる」という言葉で表現できます。
また、より緊迫度が高い場合は「一触即発」、不気味なほどの静けさは「嵐の前の静けさ」など、類語や言い回しを知っておくと、表現の幅がより広がります。対義語も含め、ビジネスシーンでぜひ活用してください。
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