目次Contents
「天下太平(てんかたいへい)」という四字熟語には、どこか穏やかで落ち着いた響きがあります。けれど、その意味や背景を丁寧に捉え直してみると、意外な発見があるかもしれません。
そこで、この記事では、「天下太平」という言葉が持つ意味や使い方について丁寧に見ていきます。
「天下太平」とは? 読み方と意味をわかりやすく解説
「天下太平」という言葉を見聞きしたことはあっても、意味や由来をきちんと説明できる方は少ないかもしれません。まずは基本的な意味や読み方を丁寧に整理していきます。
「天下太平」の読み方と意味
「天下太平」は「てんかたいへい」と読みます。辞書では次のように説明されています。
てんか‐たいへい【天下太平/天下泰平】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名・形動]
1 世の中が平和でよく治まっていること。また、そのさま。「―な(の)世」
2 なんの心配事もなくのんきにしていること。また、そのさま。「―な(の)暮らしぶり」
つまり、「天下太平」とは、世の中が平和に治まっている状態を表す言葉です。国の情勢や歴史的な時代を語る場面で使われることも多いですが、場面によっては、個人の落ち着いた暮らしや、のどかな様子を表す際に使われることもあります。

「天下太平」と「天下泰平」の違いとは?
「てんかたいへい」という言葉には、「天下太平」と「天下泰平」という2つの表記があります。漢字が違うと意味も変わるのでしょうか? ここでは、その違いを見ていきましょう。
そもそも「太平/泰平」とは?
まずは、「太平/泰平」の意味を辞書で確認しましょう。
たい‐へい【太平/泰平】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名・形動]
1 世の中が平和に治まり穏やかなこと。また、そのさま。「―の夢を破る」「―な(の)世」「天下―」
2 「太平楽二」に同じ。
「わざと弱味をみせぬつもりの―なり」〈滑・続膝栗毛・九〉
どちらの表記にも、「穏やかで平和な状態」という共通の意味があることがわかります。
どちらが正しいの? 表記の使い分け
「てんかたいへい」と辞書で引くと、「天下太平/天下泰平」と並列で表記されています。つまり、どちらも誤りではなく、意味の上でも明確な違いはありません。
「天下太平」とはどういう場面で使われる?
言葉の意味を理解しても、実際に使うとなると難しいと感じる人もいるかもしれませんね。例文を通じて「天下太平」の使いどころを紹介します。
「戦乱が収まり、ようやく天下太平の時代が訪れた」
これは歴史的な場面を想定した使い方です。長く続いた混乱や争いが終わり、国や社会が安定し平和になった様子を「天下太平」と表現しています。政治や治世の安定を語る際に用いられます。
「テレビの中では天下太平なムードでも、現実はそうとも限らない」
この例文では、「天下太平」があくまで外面的・表層的な印象であることを示しています。ニュースやメディアの演出と現実の乖離を、比喩的に描写しています。

「天下太平な日々に慣れてしまうと、小さな変化にも過敏になるものだ」
この例文では、「天下太平」が平穏な日常を意味しています。平和が続く中で、人の感覚が変化していく様子を客観的にとらえた表現です。
「天下太平」に似た意味を持つ四字熟語は?
「天下太平」と同じように、穏やかで平和な状態をあらわす四字熟語は他にも存在します。ここでは、ニュアンスの近いものを2つ紹介します。
鼓腹撃壌(こふくげきじょう)
政治が安定し、人々が豊かで平和な暮らしを楽しんでいるさまを表す言葉です。中国の堯帝の時代、ある老人が満ち足りた気持ちで腹をたたき、大地を踏み鳴らしながら歌ったという故事に由来します。国家の平和と民の安寧を象徴する表現とされています。
平穏無事(へいおんぶじ)
特に目立った混乱や問題もなく、穏やかな日常が続いている様子を指します。社会全体というよりも、家庭や個人の暮らしの安定を語る場面に適しており、日常的な表現としても使いやすい言葉です。

「天下太平」は英語でどう表現する?
「天下太平」という言葉を英語で伝えたいとき、日本語とぴったり一致する表現は少ないかもしれません。それでも、近い意味を持つ表現はいくつか見られます。ここでは代表的なものを紹介します。
The world is at peace.
この表現は、「世界が平和である」という意味になります。広く平和な状態を指し、「天下太平だ」と言いたい場面で使うことができます。
Peace reigns over the land.
「平和が地上を支配している」という直訳になりますが、比喩的に「どこも穏やかで落ち着いている」ことを表します。歴史的な情景や詩的な文脈でもよく使われる表現です。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
最後に
「天下太平」は、言葉そのものにゆるやかな広がりを感じさせる表現です。理想としての平和、あるいは比喩としての静けさを伝えるときに、ふと思い出したくなるような言葉かもしれませんね。
TOP画像/(c) Adobe Stock