どこか懐かしい感じのする「鉛筆なめなめ」という言葉。今では見聞きする機会は、少なくなっています。この表現、昭和全盛期の人たちは日常的に使っていたようです。その語音からは、何か不衛生な感じで、気色悪いと思う人もいるかもしれませんね。
でも、覚えておくと年配の人との会話なんかには、世代間のギャップを埋めてくれる言葉になるかもしれません。そのためにも、この言葉の裏表の意味と、どう使うのかを理解しておきたいですね。
「鉛筆なめなめ」とは?|意味と意外な由来
「鉛筆なめなめ」という言葉は、単に鉛筆を舐める行為を指しているのではなく、昔からのビジネス用語として、文書や数字を調整する際に使われてきました。その背景を知ることで、より深い意味が見えてきます。
「鉛筆なめなめ」の意味の表裏
「鉛筆なめなめ」には、主に2つの意味があります。
1つ目は、文章や書類を思案しながら仕上げること。慎重に見直し推敲ながら、内容をよりよく仕上げることを指します。
もう1つは、書類上の数字を都合のいいように書き換えること。帳簿などの帳尻を合わせるために、数字を操作するという意味があります。
表向きに解釈すれば、「内容をよりよく仕上げること」ですから、決して悪いことではありません。しかし、裏向きの解釈をすると「見栄えをよくするために数字を操作」したり、「都合のいいように書き換える」となります。ということは、使い方を間違えると大変なことになってしまいますね…。
「鉛筆なめなめ」の由来
この言葉の由来には、諸説あるようです。そのうちの一つを紹介しましょう。
昔の鉛筆は、今ほど品質がよくなかったようです。空気が乾燥すると、鉛筆の芯がかすれて文字が薄くなってしまいました。そこで、芯を舐めて湿らせることで、より濃く書けるようにしたそうです。
この行為が、真剣に何かを考えながら書き進める様子や、数字をあれこれと操作する行為の比喩として使われるようになりました。やがて「鉛筆なめなめ」という表現が定着したとされています。
「鉛筆なめなめ」の言い換え表現や類語
「鉛筆なめなめ」を使うシーンでは、類語や言い換え表現を知っておくと、さらに会話の幅が広がります。それぞれの意味を理解し、適切な場面で使いこなしましょう。
改ざん
「改ざん」は、書類や帳簿を悪意を持って変更することを指します。「鉛筆なめなめ」が軽いニュアンスで使われることが多いのに対し、「改ざん」はもっと厳しい意味を持つ言葉です。公的な書類を改ざんする行為は法律で禁止されているため、注意が必要です。
帳尻を合わせる
「帳尻を合わせる」は、数字や結果が整合性を保つように調整することを指します。たとえば、経費や収支が合わない場合に、無理にでも一致させるという意味で使われることがあります。「鉛筆なめなめ」と同様、都合よく数字を操作する意味を含みます。
熟考
「熟考」は、じっくりと考えることを意味します。「鉛筆なめなめ」のもう一つの意味である、書類や文章を入念に仕上げる行為に近い表現です。特に、重要な決断をする際に時間をかけて深く考えることを表します。
その他にも、「折り合いをつける」、「辻褄を合わせる」、「調整をつける」などの言葉が該当します。
会話に役立つ「鉛筆なめなめ」の例文
ビジネスシーンで「鉛筆なめなめ」を自然に使いたいなら、具体的な例文を知っておくと便利です。幾つかのシチュエーションでの使い方を見ていきましょう。
予算のやり繰りや調整や依頼する場合
「この予算じゃ、鉛筆なめなめしないことには赤字になってしまうよ」
このフレーズは、限られた予算の中で「何とか、やり繰りしないといけない」というニュアンスで使われています。遠回しに嫌味や文句を言いたいときにも使えます。
データの調整を頼む場合
「営業成績の数字が少し悪いから、鉛筆なめなめしておいてもらえる?」
このフレーズは、実際の業績が振るわない場合に、数字を多少ごまかして見栄えよくしてほしいときに使われます。完全な改ざんではなく、曖昧に調整することを意味します。
再考・修正を依頼する場合
「明日の会議までに、この企画書を鉛筆なめなめしてもらえる?」
文章や企画書の内容を再考し、よりよく仕上げてほしい時にも使われます。この場合、単なる訂正ではなく、内容の質を高める意味で使われています。
「鉛筆なめなめ」と同じ意味を持つ英語表現
「鉛筆なめなめ」を英語で表現する場合のフレーズを紹介しておきます。
英語へ置き換えるとすると「wing it」や「fudge the figures」といったフレーズが該当するでしょう。「wing it」は、準備不足や即興で対処することを意味します。「fudge the figures」は数字をごまかすという意味です。
これらの表現を使うことで、ビジネスシーンでも応用できるでしょう。
最後に
「鉛筆なめなめ」は、ただの古い表現ではなく、ビジネスシーンで微妙なニュアンスを伝えたい時に使える言葉です。特に上司や年上の同僚との会話で、データの調整や書類の再考をお願いする際には、便利なフレーズとなるでしょう。
ただし、相手によっては誤解を招く可能性があるため、適切な場面で使うことが重要です。次の会話で「鉛筆なめなめ」を試してみてはいかがでしょうか?
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