五風十雨とは?
五風十雨は、「ごふうじゅうう」と読みます。世の中が平穏無事であるという意味です。
ここでは、五風十雨の意味や言葉の由来を解説します。
言葉の意味
五風十雨とは、5日ごとに風が吹き、10日ごとに雨が降るという意味があり、気候が穏やかで順調である様子を表す言葉です。農業に適している気候や、豊作の兆しという意味で使われることもあります。
また、穏やかな気候で作物が育ち、多くの収穫があれば、人々の暮らしも安定します。そのため、五風十雨は世の中が平穏であることを表す意味でも使われる言葉です。
ごふう‐じゅうう〔‐ジフウ〕【五風十雨】
出典:小学館 デジタル大辞泉
《5日に一度風が吹き、10日に一度雨が降る意》
1 天気が順調で、農作のために都合がよいこと。
2 世の中が安泰であること。
中国の古典が由来
五風十雨は、中国の思想書である「論衡(ろんこう)」に収録されている「是応(ぜおう)」が出典とされています。
書物には、「五日にして一たび風ふき、十日にして一たび雨ふる」という一節があり、順調な天候で農業に適した条件がそろい、豊作が見込まれることを伝えています。五風十雨は、これを訓読みにした四字熟語です。
五風十雨の使い方・例文
五風十雨の使い方を理解するために、いくつか例文をみていきましょう。
・今年は五風十雨の気候が続き、どの地域でも豊作に恵まれそうだ
・あの国は内戦ですっかり荒れ果ててしまったが、かつては五風十雨といわれる時代が続いていた
・五風十雨というべき穏やかな日々が続いており、この状態が永遠に続くことを願いたい
・ようやく五風十雨の季節が訪れ、多くの農作物が順調に収穫されている
・定年後は地方に移り住み、五風十雨のような平和な毎日を過ごしたい
・この地域の気候はまさしく五風十雨で、1年を通して快適に過ごせる
五風十雨の類義語・言い換え表現
五風十雨には、次のような類義語・言い換え表現があります。
・天下泰平(てんかたいへい)
・平穏無事(へいおんぶじ)
・鼓腹撃壌(こふくげきじょう)
どの言葉も五風十雨と同じく、穏やかで平和な様子を表す言葉です。
それぞれの意味や例文をみていきましょう。
天下泰平
天下泰平とは、世の中が平和で、穏やかな様子という意味です。何の心配ごともなく、のんびりしていることを表す場合もあります。平和な暮らしを表している点で、五風十雨とよく似た言葉です。
出典は古代中国の書物「礼記」で、孔子と弟子の問答を描写した一節に「天下太平」の記述があります。この「天下太平」が、「天下泰平」の字に転じて定着したとされています。現代でも、「天下太平」と書くのは間違いではありません。
〈例文〉
・これまでの歴史を振り返ると、現代がいかに天下泰平の世の中であるかがよくわかる
・冗談を言い合って笑っている様子をみると、天下泰平であることが実感できる
・彼はいつも天下泰平で、周りが忙しそうにしていてもゆったりと構えている
平穏無事
平穏無事とは、変わったこともなく穏やかな様子という意味です。「平穏」は穏やかで安らかであることを表し、「無事」は普段と変わりないという意味があります。似た言葉を組み合わせることで、意味を強調している言葉です。
〈例文〉
・毎年、初詣に行ったときは「今年も平穏無事であるように」とお祈りしている
・台風が近づいているため、スタッフは皆イベントが何事もなく平穏無事に終わることを願っていた
・平穏無事な毎日を送れることに感謝しなければならない
鼓腹撃壌
鼓腹撃壌とは、平和な様子を楽しむという意味です。「鼓腹」は腹つづみを打つことを表し、「撃壌」は大地を叩いて歌うという意味があります。
古代中国で、大地を足で踏み鳴らして拍子をとり、腹つづみを打って歌いながら天下泰平の世の中を喜んだという故事が由来となっています。
〈例文〉
・現代の日本は鼓腹撃壌といえる。ずっとこの状態が続いてほしいものだ
・鼓腹撃壌の世の中になれば、将来のことを心配する人も少なくなるかもしれない
五風十雨の対義語
五風十雨には、次のような対義語もあります。
・多事多難(たじたなん)
・内憂外患(ないゆうがいかん)
世の中の平和を表す五風十雨に対し、どちらも困難な状況を表す言葉です。
それぞれ、詳しく解説します。
多事多難
多事多難とは、事件や困難なことが多く、解決することが難しい状況を表す言葉です。「多事」は多くの出来事や事件という意味で、「多難」は困難や災難が多いことを表します。
〈例文〉
・会社を設立した当初は順調に進んでいたが、今は売り上げが伸び悩んでいる。取引先の支払いも滞っていて、多事多難が続いている状況だ
・新年早々、事故を起こしてしまい、今年は多事多難の年になりそうだ
内憂外患
内憂外患とは、国内の心配ごとと外国との間に生じる困った事態という意味です。「内」は国内で、「外」は国外を表し、「憂」と「患」はどちらも物事を憂えるという意味があります。国内も対外的にも、憂慮すべき問題が多いことを表す言葉です。
また、内憂外患は、組織や家庭などを国に見立てて使われる場合もあります。社内や社外、家庭内や世間の双方に問題があるときに使われる傾向にあります。
〈例文〉
・総理大臣が就任早々、内憂外患の事態に遭遇している
・社内は人手不足で業務が回らず、業績も伸び悩んでいる。まさしく内憂外患の状態だ
五風十雨は世の中が平和なことを表す言葉
五風十雨は穏やかな気候を表現し、豊作の兆しや、世の中が平和なことを表す言葉です。中国の古典が由来となっています。
五風十雨の類義語には、天下泰平や平穏無事、鼓腹撃壌などがあげられます。五風十雨と同じく、敬和な状態を表す言葉です。対義語には多事多難や内憂外患といった言葉があり、一緒に覚えておけば五風十雨の理解も深まるでしょう。
日常的にはあまり馴染みのない言葉ですが、例文も参考にしながら、ぜひこの機会に五風十雨を覚えてください。
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