「一触即発」とは
危機的な状況を表す際に用いられる「一触即発」。意味を知らなくても、漢字を見ると、何かよからぬことが起きそうだと感じませんか?
「一触即発」は、争い事に関連して使われる言葉です。危険なことを表す四字熟語ですので、正しい意味や使い方を把握しておきたいですね。「一触即発」とは何を指し、どのような状況に用いられる言葉なのか、一緒に見ていきましょう。
意味と読み方
いっしょく‐そくはつ【一触即発】
ちょっと触れればすぐに爆発しそうなこと。危機に直面していること。危機一髪。「―の国際情勢」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「一触」が示すのは、ちょっと触れること。「即発」とは、ただちに爆発することを表します。少しでも触れると爆発するような、重大な危機の瀬戸際を表すときに用いることが多いでしょう。たいへん緊迫した状況であることを感じさせる四字熟語です。
「一瞬即発」は誤り
「一触即発」を「一瞬即発」と表すことがありますが、これは誤り。このような四字熟語は存在しませんので、注意したいですね。また、「一色即発」「一食即発」という言葉もありません。書き間違いや変換ミスに注意してくださいね。
「一触即発」はどのように使う?
「一触即発」の使い方を見ていきましょう。この言葉を使うシチュエーションや、言い回しなどを紹介します。
シチュエーションは?
「一触即発」を使うのは、揉め事や争い事が生じたときがほとんど。たとえば「会議で意見が分かれたことから衝突し、険悪な雰囲気になった」「家族間での話し合いがこじれて今にもケンカに発展しそう」という状況を表します。
さらには、ちょっとしたきっかけがあれば今すぐ大きな事件が起こりそうな状態や、危険な状態にさらされて緊迫しているさまを表すときにも使われるでしょう。
使い方の特徴
「一触即発」は状況や状態を表す言葉。日常や会社はもちろん、裁判や政治、国家間に生じることに対しても使います。ニュースや報道などで「一触即発」という言葉が出てきた場合は、危機的な状況であると考えていいでしょう。
「一触即発の状態」「一触即発の状況」という言い方をすることが多い言葉です。
「一触即発」の使い方を例文でチェック
「一触即発」の具体的な使い方を見ていきましょう。例文と会話の例を紹介します。
例文
「一触即発」のシーン別例文は次の通りです。
■日常で使う場合
・父と兄が進路をめぐって対立し、どちらも譲らず今にも殴り合いになりそうな一触即発の状態だったが、なんとか回避できたらしい
・遠距離恋愛をしている彼の部屋で、女性用のコスメを発見して大ゲンカになった。彼は誤解だというけれど、私の怒りはおさまらず一触即発の状態が続いている
■ビジネスシーンで使う場合
・事業撤退の件でステークホルダー同士の意見が分かれ、一触即発の状態に陥っている
・成長戦略の変更を決める会議で役員同士が衝突、罵声が飛び交う一触即発の状況になった
■ニュースや報道で使う場合
・依然として両国の対立関係は厳しい緊張状態が続いており、一触即発の危険をはらんでいます
・移民同士が激しく対立し、一触即発の状態にある
会話でも使える
「一触即発」を会話で使う場合を見ていきましょう。オフィスで、後輩Aさんと後輩Bさんが、先輩CさんとDさんについて話しています。
後輩A「今日の朝礼のあと、CさんとDさんが険悪すぎて怖かったよ。一触即発とはあのことだね」
後輩B「あの二人、また揉めたみたいよ」
後輩A「何があったの?」
後輩B「詳しいことは知らないけれど、新規プロジェクトのことじゃない?」
後輩A「CさんとDさんはどう見ても相性が悪いんだから、同じチームにしなきゃいいのに」
後輩B「課長もそう思ったから、部長にそれとなく提案したけど、スルーされちゃったらしい」
後輩A「課長も大変だよね…」
もともと相性の悪い先輩同士が一触即発の状態になり、ヒヤヒヤする後輩たちの様子を表す会話例です。
ビジネスシーンでよくある人間関係のこじれ。ちょっとした行き違いや、ミスコミュニケーションがきっかけとなり、「一触即発」の状態に陥ることはめずらしくありません。こうなる前に対策をしたいところですが、そう上手くはいかないことが多いもの。ある意味、誰もが経験することといえます。
「一触即発」を使うときに注意したいこと
例文などからもわかるように、「一触即発」は危機的状況や、深刻な状態を表す際に用いられています。そのため、それほど深刻でない場合は、「一触即発」を使うのは避けるのがベター。
冗談で言ったつもりが、言葉のイメージから誤解が生まれ、大きなトラブルになるかもしれません。安易に使わないほうがいい言葉であることを意識したいですね。
「一触即発」と似ている言葉
「一触即発」と似ている言葉を紹介します。紹介するのは、4つ。それぞれの意味をチェックしてみてください。
「絶体絶命」
「絶体絶命」とは、どうにも逃れようのない、差し迫った状態や立場にあることを表します。読み方は「ぜったいぜつめい」。「絶体絶命の状態」「絶体絶命の苦境」のように用いられています。
なお、「絶対絶命」と書くのは誤りですので、間違えないようにしたいですね。
「瀬戸際」
勝負や成否(成功するか失敗する)などの分かれ目を表す「瀬戸際」。「せとぎわ」と読みます。前に「生きるか死ぬかの」という言葉をつけて使うことが多いでしょう。
「ピンチ」
「ピンチ」は、英語の「pinch」が由来のカタカナ語。複数の意味を持つ言葉ですが、追い詰められた苦しい状態や、苦境という意味を持ちます。「ピンチに陥る」「ピンチを救う」のように使われる言葉です。
「一髪千鈞を引く」
ひとすじの細い髪の毛で千鈞の重さのものを引くという意味の「一髪千鈞を引く」。中国の書物が由来とされており、「いっぱつせんきんをひく」と読みます。「千鈞」は、非常に重いことの意。非常に危険なことをするたとえとして使われています。
最後に
「一触即発」について、意味や使い方、似ている言葉をまとめました。危機的な状況や、緊迫した状態を表す際に使う「一触即発」は、さまざまなシーンで用いられる言葉。この言葉が使われたときは、相当な危機的状況を表しているといえるでしょう。また、何かしらの争いや諍いが勃発しそうな予兆があるときにも使われる言葉です。
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