常套手段とは?
「常套手段」は、「じょうとうしゅだん」と読みます。詐欺の常套手段などのように、悪いイメージが先行する言葉ですが、本当にそのイメージ通りなのでしょうか。まずはその正しい意味から理解しましょう。
常套手段は本当に悪い意味?
「常套手段」は、同じような場合にいつも決まって使う手段、いつものやり方、ありふれたやり方という意味ですから、本来は良い・悪いという意味合いはありません。「あいつのいつもの手口だ」というような言い換えもできることから、あまり良い印象がないのかもしれませんね。
ちなみに「常套」には、決まりきったやり方、ありふれたやり方という意味があり、「手段」はある事を実現するための具体的な方法のこと。いつものやり方で目指している事を実現しようとするのが「常套手段」なのです。
使い方を例文でチェック!
悪い意味だけではなく、良い意味で使う場合の例文を紹介します。ぜひ参考にしてください。
1:「常套手段が最善の場合もあるよ」
「常套手段」というのは、いつものやり方で成功している、うまくいっているからこそ成り立つもの。この場合は、たとえば商品開発や問題の解決などさまざまな場面で、新しさや奇抜さばかりを追い求めるのではなく、実績のあるいつものやり方に注目してみては、という意味になります。
「なるほど。ここは常套手段が上策かもしれませんね」「わかりました。常套手段をとりましょう」など、常套手段=最善の策、というのはとても良い意味の使い方ですね。
2:「ビジネスがうまくいく常套手段などありません」
相手や扱う対象によって当然、ビジネスのやり方は変わります。いつものやり方、ありふれたやり方では通用しないことも多いのが世の中というもの。この例文は、良い意味でも悪い意味でもない、一般論としての常套手段の使い方です。
3:「リードしているときの時間稼ぎは常套手段だ」
サッカーなどでリードしているときの戦略として、時間稼ぎがありますね。これもひとつの常套手段。やはり一般的な話として常套手段を使っています。
4:「わざと冷たくするのは彼の常套手段だから」
好意を持ってくれているはずなのに、なぜかいつも冷たくされる、と悩む友人へ向けたアドバイスの例文。気になる相手にわざと冷たくして気を引くのは彼のいつものやり方、とういうわけですね。
5:「自分の手を汚さないのは、あの人の常套手段だ」
典型的な悪い意味の使い方です。政治の世界やビジネスシーンなどでは、「嘘で塗り固めるのは、〇〇さんの常套手段だ」と表現することもありますね。上の立場の人間は指示をするだけで、実際に行なうのは部下というのは、よくあるパターンだと言えるでしょう。
類語や言い換え表現は?
常套手段をわかりやすく言い換えるとすれば、「いつものやり方」「いつもの手口」「いつもの手段」などですが、ここでは類語としての熟語や単語を紹介しましょう。状況に合わせて使い分けてみて。
1:常用手段(じょうようしゅだん)
意味は常套手段と同じで、使い方もほぼ同じ。常套手段のほうがより一般的な言葉ではありますが、表現したい内容によって使い分けると良いでしょう。例えば、「常套手段」にどうしても良いイメージが持てない場合や、相手に誤解を与えてしまうかもしれないと心配な場合は、「常用手段」を使ってみては?
「常用」は、常に用いると書くように、「いつもそうしています」というやわらかなニュアンスにもなりますよ。
(例文)
「私のストレス発散の常用手段は、ウォーキングです」
「明日の朝早いから、というのは彼女が飲み会を断る常用手段だよ」
2:通例(つうれい)
「通例」は、その社会での一般的な習わし、通常のやり方。「常套手段」が主に個人に向けて使われるのに対して、広く社会で通常的に行なわれているやり方や決まり事、という点が大きく違います。
(例文)
「そのような場合はこちらから出向くのが通例では」
「イベントは通例に従って行いましょう」
「美術館は月曜休館が通例ですよ」
3:ワンパターン
「ワンパターン」は、行動や発想が型にはまっていて代わり映えのしないこと。いつも同じやり方で新鮮味がない、という意味です。常套手段に比べ、プライベートな場面で日常的に使われていますよね。同じような意味でも常套手段よりずいぶんソフトな印象です。
(例文)
「あなたの発想はいつもワンパターンですね。(ほかになにかいいアイデアはないの? )」
「デートの場所がワンパターンで飽きちゃった」
「二次会がカラオケとは私たちもワンパターンよね」
4:お約束
「お約束」は、約束の尊敬語・謙譲語ですが、「定番の状況設定や典型的な物語の展開」という意味もあります。簡単に予想がつく、というイメージです。
(例文)
「最終回で泣かせるのが、彼のドラマ作品のお約束です」
「ここで拍手をするのがお約束です」
「彼女がこのような言い訳するのはお約束だよ」
「そんなお約束の手口にだまされるなんて」
英語表現
英語では、「常套手段」に近いフレーズが思いのほか多くあります。そのうち代表的な言い方を紹介しましょう。使う状況や相手により、良い意味や悪い意味、一般論にもなりうるのは、日本語の場合と同じです。
・That’s how(he) usually does it. (それが彼のいつものやり方だ)
・That’s (his) old trick.(それが彼の昔からのやり方だ)
・That’s (his)usual play.(それが彼の通常のやり方だ)
・That’s (his)usual device.(それが彼のいつもの考え方だ)
・That’s (his)customary means.(それが彼の従来の手段だ)
また、
「a well−worn device(tactic)(使い古されたやり方)」「customary means(従来の手段)」慣習的な手段とも訳すことができますし、通例に近いニュアンスとしても使えます。
最後に
「常套手段」とは、いつものやり方。ですから決して悪い意味ではありません。ただ、いつもの手口という意味で使われると、犯罪を想起させてしまうことも。また状況によっては「新鮮味がない」と捉えられることもあるかもしれません。ゆえに使う際には、常套手段でよいか、言い換えたほうがよいかなどの配慮することが大切といえるでしょう。
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