「一球入魂」の意味を知っていますか?
スポーツ選手のインタビューや、スポーツの物語などに登場する「一球入魂」。見聞きしたことがある人は多いでしょう。漢字から意味を推測することもできますが、正しい意味を把握しておくのもいいですね。本記事では「一球入魂」について、一緒に見ていきましょう。
意味と読み方
「一球入魂」の「入魂」には、次の意味があります。
にゅう‐こん〔ニフ‐〕【入魂】
読み方:にゅうこん
1:精魂を注ぎこむこと。「—の技」「一球—」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2:そのものに魂を呼び入れること。「彫りあげた仏像に—する」
「精魂」とは、魂(たましい)や精神のこと。一球一球に自分の魂や精神を注ぎ、全力を傾けることや、次の一球に集中して、全力で投げることを意味する四字熟語が「一球入魂」です。
球技に関連して使われる言葉ですが、特に多いのが野球でしょう。選手や指導者の中には、「一球入魂」を格言や座右の銘とする人も。ボールを扱うその瞬間ごとに、全神経を注いでプレーすることを表します。
由来は学生野球の父?
「一球入魂」は、野球から生まれた造語であるとする説があります。この言葉を説いたとされるのが、明治時代、学生野球の指導者として名を馳せた飛田穂洲(とびたすいしゅう)です。
西洋からやってきたベースボールをこよなく愛した穂洲は、「一球一球に精神を注ぎ込み、ボールに食いついていけ」という意味通りに生き、数多くの賞を受賞。また、新聞の野球記者として、学生野球の発展に大きく貢献しました。ついには、「学生野球の父」と呼ばれるまでになり、野球人最高の栄誉とされる野球殿堂入りを果たしています。
実は、「一球入魂」の由来は定かではありません。しかし、穂洲の存在があったからこそ、「一球入魂」は広く知られるようになったといえるでしょう。
「一球入魂」はどう使う?
ここからは「一球入魂」の使い方を見ていきましょう。そもそもこの言葉はどんなときに使うのでしょうか?
どんなときに使う?
「一球入魂」を使うのは、やはり球技をしているとき。特に野球は多いでしょう。野球の試合で、投手が全神経を集中して一球を投じるさまを表す際に用いられています。
また、上記の意味が転じて、目の前の行動の一つひとつに全力を尽くすことを表す際にも使われることがあります。
使い方の特徴
「一球入魂」がよく使われるのは、野球における投手の投球や、守備、打撃のときでしょう。もちろん、野球以外の球技で使われることもあります。
また、チームの士気や選手のモチベーションを高めるとき、助言をするときなどに用いられることも。試合に挑む選手の様子や、試合中の選手の奮闘を伝える際に使うことも多いでしょう。
言い回しで多いのは、「一球入魂の投球」「一球入魂の精神」「一球入魂の気持ち」などです。
「一球入魂」の具体的な使い方
「一球入魂」の具体的な使い方を例文で紹介します。また、会話で使う場合についても見ていきましょう。
例文
《例文》
・彼が持つすべての力をぶつけたような一球入魂の投球は、今でも鮮明に思い出すことができる
・監督が何度も言っていたのは、何事においても一球入魂の精神で挑むことが重要ということだ
・一球入魂の気持ちで挑んだが、負けたことはとても悔しい
いずれの例文も、目の前の一球にすべてをかけ、挑んだことを表しています。「一球入魂」は、一つひとつのことに全力を尽くすことの大切さを教えてくれる言葉といえるでしょう。
会話例も
「一球入魂」を会話で使う場合についても見ていきましょう。オフィスで先輩と後輩が話している様子をイメージしてください。
先輩「昨日のうちの野球部の試合、見応えがあったよね」
後輩「はい。特に投手の◯◯さんの奮闘には感動しました」
先輩「あの場面で三振をとるなんて、すごいよね。三振をとった瞬間は感動でふるえてしまったわ」
後輩「気迫あふれる、一球入魂のピッチングでしたよね」
先輩「球場まで応援に行って本当によかったよ」
所属している会社の野球部の試合を現地で観戦し、試合内容に感動したことがわかる会話例です。ピンチの場面で三振を奪った投手の奮闘ぶりがうかがえますね。
「一球入魂」と似ている言葉
「一球入魂」と似ている言葉を見ていきましょう。「全力投球」「奮戦」「奮闘」を紹介します。
「全力投球」
野球で、投手が全力を尽くして投球することを表す「全力投球」。「ぜんりょくとうきゅう」と読む、「一球入魂」に近い意味を持つ言葉です。
また、この意味が転じて、全力を尽くして物事を行うという意味でも使われています。球技に限らず、仕事や趣味などに関連することで使うことも多いでしょう。
《例文》業務に全力投球していたら、あっという間に終業時刻が来た
「奮戦」
「奮戦」とは、気力をふるい起こして力いっぱい戦うことや、全力でがんばることを意味する言葉。「ふんせん」と読みます。スポーツだけに限らず、育児などで使うことも多い言葉です。全力で目の前のことに挑むことを表すため、「一球入魂」と近い意味を持つといえるでしょう。
《例文》育児に奮戦していて、電話をかけるのを忘れてしまった
「奮闘」
力をふるって戦うことや、力いっぱい努力することを表す「奮闘」。「ふんとう」と読み、スポーツ以外のことにも用いられている言葉です。「奮戦」と同じ意味を持ちます。
《例文》彼は強敵を相手に奮闘したが、力及ばずで負けてしまった
「一球入魂」の英語表現は
「一球入魂」を英語で表現する場合を見ていきましょう。3つピックアップして紹介します。
《英語表現》
putting one’s heart and soul into each pitch
→日本語訳:一球一球に心と魂を込める
one ball, one spirit
→日本語訳:一球に魂を込める
every pitch with all one’s heart
→日本語訳:一球一球に心を込める
上記の表現であれば、「一球入魂」の意味合いが伝わりやすいでしょう。
最後に
「一球入魂」について、言葉の意味や使い方、似た言葉、英語表現をまとめました。「一球入魂」は、手抜きや油断をすることなく、自分の持つ能力のすべてを発揮し、目の前のことに取り組む大切さを教えてくれる言葉といえるかもしれません。
多くの人を魅了する、野球をはじめとするスポーツから教えられることは多いもの。ふだんの生活や仕事にも生かしていきたいですね。
TOP画像/(c)Adobe Stock