上司や同僚との会話の中で、「風の便りで、〇〇さんは地元に帰ったと聞いたよ」などと言っているのを耳にしたことはありませんか? 中には「風の便りって何?」と思ったことがある方もいるかもしれませんね。本記事では、「風の便り」の意味や使い方、類語などを解説します。目上の人との会話の中で出てきた時のために、詳しい意味をチェックしてみてくださいね。
「風の便り」の意味
「風の便り(かぜのたより)」の意味を辞書で確認してみましょう。
1 どこからともなく伝わってくるうわさ。風聞。「―に聞く」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2 吹く風が伝えるもの。風の使い。
「花の香を―にたぐへてぞ鶯(うぐひす)誘ふしるべにはやる」〈古今・春上〉
3 ふとした折。
「如何なる―にか、此の君に見え初められ参らせ給ひしより此の方」〈義経記・七〉
「風の便り」には複数の意味がありますが、一般的に会話の中で使われるのは1番目の意味でしょう。あくまでも直接本人から聞いた話ではなく、誰からともなく聞いたうわさ話で、風のようにふわっとどこからか聞こえてきたという意味合いを持ちます。
使い方を例文でチェック!
「風の便り」は、具体的にどのような場面で使われるのでしょうか? よくあるケースを例文で見ていきましょう。
1:会社の元同僚だった彼は、故郷で元気にやっているようだと、風の便りで聞いた。
しばらく会っていなかった人の近況を、誰かから伝え聞いた時に、「風の便り」が使われます。会社で親しくしていた人でも、退職してから疎遠になってしまったという人も多いはず。「今はどうしているのかな?」と思っていた時に、故郷で元気に暮らしているという話を聞くと、「よかった」と安心しますよね。
2:風の便りによると、あれから彼女は結婚したらしい。
同窓会以来、会っていなかった友人の近況を聞いた時、「彼女ならあれから結婚したらしいよ」などと聞くこともあるでしょう。独身だった人の結婚や出産の知らせを聞くと、「あれから時間が経ったんだな…」と実感することもあるかもしれませんね。
3:小学生だった頃の担任の先生が、先月亡くなったことを風の便りで知った。
かつてお世話になっていた人の訃報を、風の便りで知ることもあるでしょう。風の便りをきっかけに昔のことを振り返り、「そういえば、先生によく絵が上手だと褒められていたな」などと、懐かしい思い出が蘇ってくることもあるはずです。
類語や言い換え表現は?
間接的に話を聞くことを表す言葉は、他に「又聞き」「人づて」「伝聞」などがあります。それぞれの意味や使い方を見ていきましょう。
1:又聞き
「又聞き(またぎき)」の意味は以下の通りです。
[名](スル)伝え聞くこと。間接的に聞くこと。「うわさを―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
話を聞いた人からさらに聞くことを、「又聞き」と言います。こちらも、体験した本人から直接聞いたのではなく他人を介して聞いた話なので、どの程度信ぴょう性があるのか若干疑わしいですね。
(例文)
・この話は又聞きだから、どのくらい本当なのかわからないよ。
・AさんとBさんが、社内恋愛しているという噂を又聞きした。
2:人伝(ひとづて)
「人伝」という言葉を会話の中で使ったことがある方も多いのでは? 辞書を見てみると、
直接にでなく、他人を通して話を伝えたり、聞いたりすること。「―に消息を聞く」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
という意味になります。間に誰かを通して話を聞いた場合に、「人伝に聞いたんだけど…」などと言いますよね。また、連絡先を知らない相手に何か伝えたいという時に、第三者を通じて、連絡をとってもらう時にも使われます。
(例文)
・3年前に別れた元カレの様子を人伝に聞いた。
・しばらく会っていない友人の消息を人伝に聞いた。
3:伝聞
「伝聞(でんぶん)」の意味は、以下の通りです。
[名](スル)
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
1 人から伝え聞くこと。また、その内容。「―するところでは」
2 文法で、人から伝え聞いたことを述べる言い方。動詞に、口語では助動詞「そうだ」、文語では助動詞「なり」を付けて言い表す。
「伝聞」は文字通り、人から伝え聞いた話のことです。言い伝えやうわさ話もこれに当たりますね。「伝聞するところでは、〜らしい」という形で使われることが多いですが、やや古めかしい表現なので、話し言葉として使われる機会はそう多くないでしょう。
(例文)
・伝聞するには、その一族は没落したらしい。
・私が伝聞したところでは、彼は今アメリカにいるらしい。
「虫の知らせ」とは何が違う?
「風の便り」と似た意味だと勘違いしやすいのが、「虫の知らせ」という言葉。辞書で意味を見ていくと、
よくないことが起こりそうであると感じること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
となります。なんとなく「これからよくないことが起きるのでは?」と予感をすることです。類語としては、「直感」や「第六感」が当たりますね。
「虫の知らせ」は、「知らせ」とありますが、誰かからうわさを聞くことではなく、自分自身が予感することなので、「風の便り」と同義語ではありませんね。
(例文)
・虫の知らせで、父が危ないのではないかと感じた。
・その夜は、虫の知らせで嫌な予感がしていた。
「風の噂」は間違い?
「風の便り」をネットで検索すると、「風の噂」という言葉が出てきますが、辞書に「風の噂」は載っていないようです。おそらく、「風の便り」に「どこからともなく伝わってくるうわさ」という意味があるので、混同して「風の噂」と間違って使われているのかもしれませんね。正しくは、「風の便り」なので会話の中ではこちらを使ってみてくださいね。
最後に
「風の便り」とは、「どこからともなく伝わってくるうわさ」のこと。まるで風に乗って流れてきたうわさ話のように、ふわっと他人の近況が耳に入ってきた時などに使います。「風の便り」は、あくまでも間接的に聞いた話なので、信憑性を問われると怪しいところ。ビジネスシーンで上司に報告する際には、確実な内容を伝えたいですね。
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