「旅は道連れ、世は情け」という言葉を耳にしたことはありませんか? なんとなく聞き覚えはあるものの、詳しい意味はよく知らないという方も多いはず。上司が後輩に向けて、人生を生きていくための秘訣としてこの言葉を使うこともあるため、意味を押さえておきたいですね。
本記事では、「旅は道連れ、世は情け」の意味や使い方、類語などを解説します。
「旅は道連れ、世は情け」の意味
「旅は道連れ、世は情け」は、「たびはみちづれ、よはなさけ」と読みます。辞書で意味を見ていくと、
旅では道連れのあることが心強く、同じように世を渡るには互いに情けをかけることが大切である。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
と記載されています。慣れない土地へ旅する時は仲間がいると安心するように、人生においても周りの人に優しい気持ちを持って助け合うことが大切だ、という教えが込められています。
会社の上司などが、世渡りの秘訣として後輩に話すこともあるでしょう。現代では、人と人とのつながりが希薄になっていることも多いため、心に留めておきたい言葉ですね。
使い方を例文でチェック!
「旅は道連れ、世は情け」は、目上の人が人生論のように述べたり、旅路で使われることが多いことわざです。よくある例を3つ紹介します。
1:「旅は道連れ、世は情け」とも言いますし、ここからは一緒に歩きませんか?
1人で旅をしていたものの、立ち寄った先で知り合った人と仲良くなり行動を共にした、という経験をしたことはありませんか? 「ここで出会ったのも何かのご縁だから」というニュアンスで「旅は道連れ、世は情け」が使われることも多いですね。
2:ここからが山頂です。「旅は道連れ、世は情け」ですから、みんなで助け合って登りましょう。
ここから先は大変な道になるという場合、前もって例文のように声をかけることもあります。困難に立ち向かおうとする時ほど、仲間と一緒に頑張ろうという気持ちにもなれますよね。
3:旅は道連れ、世は情けというものだから、人とのつながりを大切にしなくちゃいけないよ。
旅ではのんびりと穏やかな時もあれば、過酷な時もあるように、人生も浮き沈みがあるもの。しかし、そんな時でも困った者同士、手を取り合い助け合って生きていくことが大切だということですね。会社の上司や恩師から、このように教わったことがあるという人もいるかもしれません。
類語と対義語
「旅は道連れ、世は情け」の類語と対義語をそれぞれ見ていきましょう。
類語:旅は情け人は心
「旅は情け人は心」とはどのような意味でしょうか?
旅では人の情けが何よりもありがたく感じられるし、また、人は心の持ち方が最も大切である。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「旅は情け人は心」も、思いやりの心の大切さを説いたことわざです。旅の途中、道に迷っている時に、現地の人から道を教えてもらったり、励ましの言葉が身に沁みたという経験を持つ人も多いのではないでしょうか? 旅路で人の優しさに触れることで、改めて人の繋がりの大切さに気づくこともあるかもしれませんね。
(例文)
・旅は情け人は心。人は心の持ちようが大切だよ。
・海外一人旅を通して、旅は情け人は心であることを学びました。
対義語1:孤立無援
「孤立無援(こりつむえん)」とは、「仲間がおらず、ひとりぼっちで援助する人のいないこと」。支えてくれる人がなく、周囲から孤立している状態を表します。
(例文)
・孤立無援のお年寄りを救うべく、コミュニティの場を作りました。
・開業当時は孤立無援でしたが、徐々に仲間が増えてきました。
対義語2:孤軍奮闘
「孤軍奮闘(こぐんふんとう)」の意味は以下の通りです。
[名](スル)援軍もなく孤立した中でよく戦うこと。また、だれの援助も受けずに一人で努力すること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
日常会話では、だれの援助も受けずに1人で頑張っていることを表す時に「孤軍奮闘」が使われますね。例えば、まだ世界で成功したことがない研究に挑戦したり、大企業が市場を占拠している分野にあえて参入するなど。だれもが「そんなことはできるはずがない」と相手にしてくれない中、1人で果敢に挑戦する姿は「孤軍奮闘」です。
(例文)
・自分が開発した美容器具を世に出すために、彼女は孤軍奮闘していた。
・彼が孤軍奮闘している姿を見て、応援したいと思いました。
「袖振り合うも多生(他生)の縁」との違い
「旅は道連れ、世は情け」と同じような意味だと勘違いしやすいのが、「袖振り合うも多生(他生)の縁」ということわざです。意味を辞書で確認してみると、
道で人と袖を触れあうようなちょっとしたことでも、前世からの因縁によるものだ。袖すり合うも多生の縁。→多生の縁
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
[補説]「多生」は、仏語で、何度も生まれ変わること。「他生の縁」とも書くが、「多少の縁」と書くのは誤り。
となります。ちょっとした出来事も単なる偶然ではなく、深い因縁によるものだという仏教の考えに由来しています。現代では、そこまで深い意味ではなく、「これも何かのご縁ですね」と軽い気持ちで使われることが多いですね。
最後に
「旅は道連れ、世は情け」は、旅では道連れのあることが心強く、同じように世を渡るには互いに情けをかけることが大切ということ。人と助け合って生きていくことの大切さを説いたことわざです。
旅先での経験を人生に置き換えて考えてみることで、日常生活でも互いに手を取り合って生きていこうと、優しい気持ちになれるかもしれませんね。
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