「袖の下」とは?
「袖の下」とは、文字通り、袖の下に隠されたものを指している言葉です。本章では、袖の下という言葉の意味・例文・語源を解説します。
「袖の下」の意味
「袖の下」とは、秘密裏に取引される金品や情報のことを指す言葉です。たとえば、賄賂や贈収賄、違法な手段での利益誘導など、法律や規則に反する活動(不正行為)に関連して使われます。この言葉は、手袋や袖の中に隠して持ち歩くことから派生したとされています。
そで‐の‐した【袖の下】
出典:小学館 デジタル大辞泉
人目につかないように袖の下から贈る物。内密に贈る品物や金銭。そでした。わいろ。「袖の下を使う」「袖の下を握らせる」
袖の下に隠されたものは公に見えないため、秘密や隠匿の意味合いがあります。組織の内部での不正や汚職、または個人的な利益のための不正行為など、さまざまな文脈で使用される言葉です。
「袖の下」の例文
以下、「袖の下」という言葉を使った例文です。
1. 彼は、役所の職員から情報を手に入れるために袖の下を渡した
2. 政治家が建設会社から袖の下を受け取り、公共事業の入札を操作した
3. 企業の幹部が競合他社に対して、競合情報を得るために袖の下を使った
4. テスト中に生徒が先生に袖の下を渡して、答えを教えてもらった。
いずれも、あまりよい状況とはいえないでしょう。そもそも袖の下という言葉がネガティブな意味をもつため、プラスの意味の文脈ではほとんど使われません。
「袖の下」の語源
「袖の下」という言葉の歴史は古く、正確な時代は判明していないものの、人々が普段着として着物を着用していた時代からという一説も。当時、袋状になっている着物の袖にお金を入れて渡していたようです。
「袖の下」の類語・言い換え表現4つ
社会において、秘密の取引や贈収賄などの概念を表す言葉はさまざまです。ここでは「袖の下」という表現の他に、その類語や言い換え表現を4つ紹介します。
これらの言葉は、しばしば公正性や透明性に欠く取引を指し示すために用いられ、その背後には不正や隠れた動機が存在することを示唆しています。それぞれの単語も「袖の下」とあわせてチェックしていきましょう。
1. 賄賂(わいろ)
「賄賂(わいろ)」とは、法に違反し、不正な手段で人に金品やサービスを与えることを指す言葉です。一般的に公務員や役人を対象に使われる表現であり、特定の利益を得るためにやりとりされます。
企業や個人が賄賂のやりとりをおこなうこともあり、ビジネスにおいても問題とされている行為です。賄賂は社会の健全な発展や経済成長に悪影響を及ぼすため、その防止や摘発が重要視されています。
2. 裏金(うらがね)
「裏金(うらがね)」とは、秘密裏に持ち出された金銭のことを指す言葉です。通常、公的な取引や活動には関与せず、非公式なやり取りに用いられます。
裏金はしばしば法的、倫理的な問題を引き起こし、腐敗行為の典型的な形態として批判されるケースも。透明性や誠実性を重視する社会では、裏金の存在や使用は不正とみなされます。企業や政府機関では、厳格な監査や規制が設けられ、裏金の使用を防ぐための対策が取られています。
3. リベート
「リベート」とは、商品の購入価格から一部を謝礼金・報奨金として返金することを指す言葉です。一般的に、製品やサービスを購入した顧客が一定の手続きを経て、後日一定額の金額を返金される仕組みです。これにより、顧客は実質的な割引を受けられます。企業はリベートを利用して製品の販売促進や顧客獲得を図ります。
リベートにはもう1つ意味があり、それは手数料や世話料です。これに関連して、賄賂と同様の意味でリベートが用いられるケースもあります。
4. コミッション
「コミッション」とは、委任や委任状という意味をもつ言葉です。一見すると、袖の下とは無関係な言葉であるように感じるかもしれません。しかしコミッションには「委任」と関連して、委託業務に対する手数料や賄賂という意味もあります。賄賂という意味で用いられる場合は、袖の下の言い換え表現といえるでしょう。
ただし「委任」という意味で用いられることも多いため、コミッション=よくないものというイメージは、認識に齟齬を生む原因になるかもしれません。
袖の下という名前がついた「饅頭」もある
「袖の下饅頭」と名付けられた和菓子があるのをご存じでしょうか。饅頭の下に、山吹色の小判型クッキーが隠されているお菓子です。「袖=饅頭」ということなのかもしれません。
「袖にお金を隠す」という、言葉の由来をもとにしたお菓子です。商品を紹介する文章には「取引先へのお土産にどうぞ」と書かれており、ブラックジョークの効いた一品ですね。
「袖の下」を正しく活用しよう
「袖の下」は、非公式で不正な手段や秘密裏におこなわれる不正な取引や贈与を指す言葉です。着物の袖の下が袋状になっていることを利用し、周囲の目につかないよう金品のやり取りをすることに由来しているとされます。
「袖の下」は、信頼や信用を損なう行為といえるでしょう。ビジネスや社会活動では公正さや透明性を保ち、法律や規制を順守することが求められます。言葉の意味を正しく理解するとともに、くれぐれも袖の下を使って不正なやり取りはおこなわないようにしたいところです。
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