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「神算鬼謀」という四字熟語、どこかで見かけて気になったという人もいるでしょう。『三国志』を舞台にしたゲームや小説の中で登場することがあるため、その響きに惹かれる方も少なくないはずです。
もしこの言葉を日常で使いこなすとしたら、どんな場面でしょうか? この記事では、「神算鬼謀」の意味や成り立ち、使い方を確認しながら、『三国志』との関わりも見ていきます。
神と鬼の策謀とは? 「神算鬼謀」の意味と読み方をチェック
すぐれた戦略や計略を表す「神算鬼謀」。まずは読み方を確認し、基本的な意味を整理しましょう。
「神算鬼謀」の読み方と意味、語の成り立ち
「神算鬼謀」は「しんさんきぼう」と読みます。「神算」と「鬼謀」、それぞれの辞書の記述を確認しましょう。
しん‐さん【神算】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
非常にすぐれたはかりごと。「―鬼謀」
き‐ぼう【鬼謀】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
人が思いも及ばないような、すぐれたはかりごと。「神算―」
「神算」は、非常に優れたはかりごとです。「鬼謀」は、人が思いも及ばないような巧妙な策略を指します。どちらも「知恵」や「計略」に関係する言葉であり、特に人並み外れた巧みさを含んでいます。
このふたつが合わさった「神算鬼謀」は、「人並みはずれた策略」をあらわす四字熟語として使います。

『三国志』での「神算鬼謀」と、その印象
「神算鬼謀」は、ゲームや小説、アニメなどの二次創作で用いられることがあります。ここには『三国志』とのつながりがあるので、簡単に紹介していきましょう。
『三国志』の中の「神算鬼謀」
「神算鬼謀」という言葉は、『三国志』に登場する人物やエピソードと関連づけて用いることがよくあります。ただし、これは後世の小説やゲームなどによって生まれたイメージに基づくものであり、原典である陳寿(ちんじゅ)の『三国志』に「神算鬼謀」という言葉が使われているわけではありません。
「神算鬼謀」という言葉は、特に『三国志』に登場する軍師たちを表す際に使うことが多いでしょう。なかでも代表的な人物が次の二人です。
諸葛亮(しょかつりょう):三国時代、蜀漢の丞相。字(あざな)は孔明。「臥龍(がりょう)」の異名を持ち、卓越した知略で知られています。
司馬懿(しばい):三国時代、魏の武将・政治家。大将軍として実権を掌握し、孫の司馬炎による晋建国の基礎を築きました。諸葛亮と並び称される存在です。
このように、卓越した戦略と政治的手腕を持つ人物たちが、「人知を超えた計略」を用いた存在として語られるなかで、「神算鬼謀」という言葉があてはめられたようです。歴史上の評価だけでなく、後世の創作や物語の中でも、両者は「非凡な知略家」として描かれてきました。
『三国志真戦』での「神算鬼謀」
『三国志真戦(さんごくししんせん)』は、『三国志』の世界をテーマにした戦略シミュレーションゲームです。
『三国志真戦』では、プレイヤーが君主となって自国を統治しながら、他プレイヤーと同盟や戦争を通して領土を広げていきます。登場する武将たちには、さまざまな「戦法」が用意されていて、その中に「神算鬼謀」が含まれています。その名の通り「神がかり的な計算と鬼のような謀略」を意味する強力なスキルです。
「神算鬼謀」という言葉がゲームのスキル名としても登場していることで、より身近に感じますね。
「神算鬼謀」はどんな場面で使える? 使い方を例文で確認
「神算鬼謀」は、堅い印象のある言葉ですが、知的でスマートな印象を表現できる場合もあります。日常での使用例を通じて、使える場面を見ていきましょう。
「部長の策略は、まさに神算鬼謀だった」
職場での意思決定や商談、交渉の中で、他の人には思いつかないような方法で成果を出したときに「神算鬼謀」が使えます。
「すごい戦略だった」と言う代わりに、「まさに神算鬼謀だった」と伝えると、驚きと尊敬をこめた印象になりますね。

「あの選挙戦は神算鬼謀の連続だった」
例文のように、政治の話題だけでなく、チーム戦や試合展開の話にも応用できます。意表を突くような戦略が次々と見られたときに、「神算鬼謀の連続だった」と表現することができます。作戦がうまくハマった場面に目を向けると、日常でもあてはまる機会がありそうですね。
「神算鬼謀」の類語や、言い換え表現は?
「神算鬼謀」と近い意味を持つ言葉や似たニュアンスの表現を知っておくと、場面に応じて言葉を使い分けることができるようになりますよ。知略や策略に関する語彙をいくつかおさえておくことで、文章や会話の表現力が広がります。
「神機妙算(しんきみょうさん)」
「神機妙算」は、「神のような計略」とされるほど、優れたはかりごとを意味します。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
「策士(さくし)」
「策士」とは、戦略や計略を考えることが得意で、自分から積極的に物ごとを動かそうとする人物像を表します。「政界の策士」といった使い方のように、駆け引きの場でその知恵や読みを発揮する人を評価する意味があります。
「神算鬼謀」が知略の中でもとびぬけて鋭い才覚を強調するのに対して、「策士」はもう少し現実的で、組織や社会の中で立ち回る知恵者という印象がありますね。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
英語でどう言う?|「神算鬼謀」の英語表現
「神算鬼謀」は英語に直訳できませんが、近い意味の言葉で伝えることは可能です。「神算鬼謀」のような巧みさを含み、卓越した知略や計略を表す英語表現を紹介します。

“mastermind
名詞の“mastermind” は、「考えや計画の立案者」「指導者」「黒幕」などの意味を持ち、知略に長けた人物を称する表現です。「神算鬼謀」のような、影で巧みに策略を巡らす人物像と重なりますね。
“He was known as the mastermind behind the international art theft ring.”
(彼は国際的な美術品窃盗団の黒幕として知られていた。)
“plot”
「神算鬼謀」のように、優れた知略や巧みな計略を表す英語表現として、“plot” という語が挙げられます。
“plot” は「ストーリーの構成」などの意味でも使いますが、政治的な企てや密かな計画といった場面では、「陰謀」や「たくらみ」といった意味合いが強くなります。密かに策略を巡らす場面では、「はかりごと」の訳語としても用いられます。
“A plot must be hatched in secrecy.”
(策は密かに立てられるべきである。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
最後に
「神算鬼謀」は、非常に優れた戦略や計略を表す四字熟語です。『三国志』をはじめとする物語やゲームを通して、この言葉に触れた人もいるでしょう。作品の中で印象的に使われることも多い表現ですから、工夫や策に注目したい場面で、知的な響きを添える言葉として、取り入れてみるのもいいかもしれませんね。
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