「盗人猛々しい」ということわざを聞いたことはありますか? あまり日常生活で使う言葉ではありませんが、意味を知らなくてもなんとなく漢字からよくない意味であることが分かりますね…。本記事では「盗人猛々しい」について、詳しく見ていきましょう!
「盗人猛々しい」の意味や由来は?
まずは「盗人猛々しい」について、読み方や意味など、基本的な情報から解説していきます。漢字自体は難しくないのですが、いざ読もうとすると、ちょっと自信がなくなる人もいるのでは…?
読み方
「盗人猛々しい」は「ぬすっとたけだけしい」と読みます。または、「ぬすびとたけだけしい」とも。うっかり、「盗人」を「とうじん」、「猛々しい」を「もうもうしい」と読まないように注意したいですね。
意味
盗みなど悪事をはたらきながら、それを咎められても平気な様子でいる様子を非難したことわざです。図々しく、無礼な印象があります。非難の気持ちが込められており、良い意味ではないので、使う際は注意してくださいね。
語源は?
「盗人」は、文字通り、「人の物を盗む者、どろぼう」という意味の他に、そもそも「人をののしる時に使う言葉」という意味もあります。「盗人」という言葉自体が、それだけで相手をののしっているのですね。
「猛々しい」にも、二つの意味があり、一つ目は、今回のことわざで使われている通り「悪事に対する反省心がなく、平然としている」というもの。二つ目は、「行動や気性が勇ましい、荒々しい、強く激しい、勇猛である」というものです。
二つ目の意味は、一つ目のように悪い意味だけではありません。言葉の持つ複数の意味を知っておくといいですね。
使い方を例文でチェック!
「盗人猛々しい」という言葉は、相手を非難し、ののしるような強い言葉であることが分かりましたね。使うときも慎重に使いたいもの。しかし、カッとなった時に、つい感情的な汚い言葉で表現してしまうよりも、「盗人猛々しい」ということわざを使った方が、知性を感じて自分も周りの人も冷静になれるかもしれません。
1:友人だと思っていた人が、財布からお金を盗んでいるところを目撃してしまい、問い詰めたが、盗人猛々しい態度を取られたので縁を切った。
「盗人猛々しい」の「盗人」は、「悪事をはたらいた人」という意味で、「物を盗んだ人」に特定するものではありませんが、実際に「物を盗んだ人」に対して使われることも多いです。人の物を盗んでおきながら、開き直るような態度を取っては、絶交されてもしかたがありませんね。
2:彼は「浮気をした原因はお前にある」と、盗人猛々しく彼女を攻めて、振られただけでなく友人からの信頼も失った。
物を盗むこと以外の悪事にも、幅広く使えます。自分の浮気=悪事を棚に上げ、相手を責めるなんて、図々しいにもほどがありますね。反省せず開き直った態度をとり続ければ、周りからの信頼を失い、気づけば一人ぼっちになってしまうことも…。
3:社長から直接叱責されたのに平然と出社するなんて、あの新人は盗人猛々しいな。
盗人猛々しいは、その人をののしり、非難する言葉です。このセリフは、「新人は勇気がある」「肝が座っている」「おもしろいやつだ」などと、その意外性を評価しているのではありません。呆れられ、見放されていると捉えられますね。
類語や言い換え表現は?
「盗人猛々しい」を日常の会話の中で使うには、少し堅苦しく、長い気もしますね。同じような意味を持つ、よりシンプルな表現も、同時にチェックしておくと便利です。
1:厚かましい
よく耳にする言葉ですね。「あつかましい」と読み、行動や態度に遠慮や慎みがないことを意味します。「厚かましい人」「厚かましいお願い」などと使いますね。「面の皮が厚い(つらのかわがあつい)」ということわざもあり、同じような意味で使われます。
「面の皮」は「面皮」と書いて「つらのかわ」と読んだり、「めんぴ」と読むこともあり、どれも間違いではありません。
2:図々しい
こちらもよく聞く言葉ですね。「ずうずうしい」と読み、恥を知らないという意味です。なぜ「図」という漢字が使われているのか疑問に感じる人もいるかもしれませんが、「図」は当て字だそう。「図太い(ずぶとい)」「野放図(のほうず)」など、「図」を使った同じような意味をもつ言葉は他にもあります。
3:太々しい
読み方は、ふとぶとしい、ではなく、「ふてぶてしい」が正解。開き直っていて、図太いことを意味する言葉です。大胆不敵という意味も。「太々しい態度」「太々しい面構え」などと言いますね。
英語表現は?
最後に、英語表現もチェックしておきましょう。「盗人猛々しい」と全く同じ意味を持つイディオムはありませんが、類語でも紹介した「厚かましい」「図々しい」「太々しい」という意味を持つ単語をいくつか紹介します。
1:impudent
「impudent」は、厚かましい、図々しい、生意気な、という意味を持つ言葉。「impudent attitude」(厚かましい態度)、「impudent lie」(厚かましい嘘)などのように使います。
(例文)
・You should change your impudent behavior.(あなたはその厚かましい態度を改めるべきです)
2:brazen
「brazen」は、「真鍮製の」という意味の他に、図々しい、恥知らず、厚かましい、鉄面皮という意味を持つ言葉です。「impudent」と同様に、「attituude」や「lie」、「behavior」とともによく使われ、他に「brazen manner」(図々しいやり方)という表現も。
(例文)
・She is brazen and doesn’t care anything.(彼女は図々しくて、何も気にしない)
3:shameless
「shameless」は、恥知らずなという意味の言葉。「shame」は恥、「less」は否定の意味を持つため、もし「shameless」という単語を知らなくても、意味を推測しやすいですね。
(例文)
・He took a shameless attitude to his boss.(彼は上司に対して恥知らずな態度をとった)
最後に
「盗人猛々しい」ということわざについて、読み方から意味、使い方、言い換えや英語表現まで解説しました。もともとこのことわざの意味を知っていた人も知らなかった人も、今回の記事を読んで何か新しい発見はありましたか?
言葉はそれぞれつながっていて、ひとつの言葉を調べるだけでも、それをきっかけに多くの新しい言葉に出会える点がおもしろいですね。
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