可哀相とはどのような意味? 可哀想との違いも解説
「可哀相(かわいそう)」とは、同情の気持ちが起こる様子や不憫(ふびん)に思える状況などを指す言葉です。なお、「可哀相」や「可哀想」はいずれも当て字です。当て字を避けるなら「かわいそう」とひらがなで表記しましょう。
意味1. 同情する気持ち
「可哀相」は、同情する気持ちを表現するときに使われます。例文から、使い方やシチュエーションを見ていきましょう。
・彼は全授業に出席してレポートも出したのに「可」しかつかなかった。可哀相に
・彼女は何かと言うと「お可哀相に」と同情してくる。かえって相手を傷つけると思わないのだろうか
・世間的には可哀相な境遇なのかもしれないが、本人は結構楽しく生きているようだ
相手の境遇や不運に対して同情の気持ちが沸き起こったときや、客観的に不遇と思われる状況を表現する際に「可哀相」の言葉を使うケースがみられます。
意味2. 不憫に思う気持ち
「可哀相」は不憫に思う気持ちを表現するときにも使われます。
・可哀相だとは思うけれど、ある意味、仕方のないことかもしれない
・休校だったの?わざわざ電車に乗って行ったのに、可哀相だね
・彼は近所で「可哀相な子」として知られていた
なお、不憫とは、憐れむべきことや可哀相なことという意味で、元々は「不便(ふびん)」の漢字が使われていました。しかし「不便(ふべん)」と同じ漢字であることから、混乱を避けるために「不憫」の漢字が使われるようになったといわれています。
かわい‐そう〔かはいさう〕【可▽哀相/可▽哀想】
出典:小学館 デジタル大辞泉
[形動][文][ナリ]同情の気持ちが起こるさま。ふびんに思えるさま。「―な境遇」「彼ばかり責めては―だ」「お―に」
[補説]「可哀相」「可哀想」は当て字。
可哀相の言い換え表現
「可哀相」は、次の言葉で言い換えられることがあります。
・哀れ
・気の毒
・惨め
・切ない
・心が痛む
それぞれニュアンスが異なるため、状況に合わせて使い分けることが必要です。例文を通して、使い方や使用するシチュエーションを見ていきましょう。

哀れ
「哀れ(あわれ)」とは、不憫と思う気持ちや可哀相な状態、無惨な姿を表す言葉です。
・彼の話は人々の哀れを誘った
・想像を超える哀れな様子に思わず目をそむけた
・哀れではあったが、表情からたくましさが見て取れた
また、「哀れ」は、しみじみと物悲しい様子や儚い様子、心を打つ風情のある様子を指すこともあります。
・夕暮れどきは何となく哀れに感じる
・時間が虚しく過ぎていくことに哀れを覚えた
・遠くから聞こえるカラスの鳴き声は哀れだ
古語では「しみじみとした愛情がある様子」や「感服させられる様子」といった意味で「哀れ」が使われることもあります。
気の毒
「気の毒(きのどく)」とは、他人の不幸や苦痛などに同情して心を痛めることや、他人に迷惑をかけて申し訳なく思うことです。
・気の毒な境遇ですね。私に何かできることはありますでしょうか
・不幸が重なることもあるのですね。お気の毒に
・彼が家に訪ねてくるとは思わず、留守にしていた。大変気の毒なことをした
気の毒は、元々「自分の気持ちにとって毒になること」という意味の言葉です。反対に「自分の気持ちにとってプラスになること」の意味で「気の薬(くすり)」という言葉を使うこともあります。
惨め
「惨め(みじめ)」とは、可哀相で見るに忍びない様子のことです。
・職と家を失い、惨めな暮らしをしている
・あんな惨めな負け方をするとは思わなかった
・彼の惨めな様子は見たくない
「惨め」は、痛々しい様子を指すこともあります。
切ない
「切ない(せつない)」とは、悲しさや恋しさで胸が締め付けられる気持ちや、身体が苦しいこと、身動きが取れないことを指す言葉です。
・彼女のことを思うと、切ない感情が押し寄せてくる
・あのとき父親に声をかけなかったことは、私の後悔でもあり、切ない思い出でもある
・切ないメロディーに思わず目頭が熱くなった
「切ない」は、「やりきれない」や「やるせない」といった意味で使われることもあります。
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心が痛む
「心が痛む」とは、罪悪感や悲しさ、申し訳なさなどにより、心が締め付けられるような辛い気持ちになることです。
・彼女のことを思うと心が痛む
・心が痛む話ではあるが、どうしてあげることもできない
・彼の成長のためには、突き放すことも必要だ。心が痛んでも、今は厳しく当たるしかない
「辛い」や「悲しい」といった直接的な表現を避けたいときにも便利に使えるでしょう。
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可哀相を安易に使わないほうが良い理由
「可哀相」は、相手に同情したり不憫に思ったりするときに使う言葉です。決して悪い言葉とはいえませんが、次の理由により、安易に「可哀相」と発言することは避けるほうが賢明と考えられます。
・不幸の烙印を押す言葉だから
・上から目線捉えられ得るから
それぞれの理由を見ていきましょう。

不幸の烙印を押す言葉だから
「可哀相」と発言することは、相手を「哀れで不幸だ」と見ていることを意味し得ます。相手が「私は不幸だ」とは思っていないのに「あなたは不幸だ」と烙印を押すことにもなってしまうため、注意が必要です。
たとえば、ある人があなたに「第一志望の学校に落ちた」と話したとしましょう。「可哀相」とあなたが反応するならどうでしょうか。相手は「自分の境遇は客観的に見て不幸なんだ」と、さらに落ち込んでしまうかもしれません。
上から目線と捉えられ得るから
「可哀相」という言葉は、相手を哀れで不幸だと思う「自分の気持ち」だけが含まれており、相手に寄り添う気持ちが含まれていないと感じる人も。そのため「可哀相」と発言することで、相手を下に見て、突き放しているような印象を与えてしまうかもしれません。
また、相手を不幸だと決めつけることで、「他人を憐れむ心の広い私」「他人と比べて幸せな私」と優越感を感じる人も中にはいるでしょう。いずれにしても相手に寄り添う気持ちが見えず、単に不快感だけ与えてしまう可能性が考えられます。
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「可哀相」を使うシチュエーションに注意をしよう
「可哀相」自体は失礼な言葉ではありませんが、他人に使うときには注意が必要です。相手に「君は不幸だ」と烙印を押すことになったり、相手を下げて自分を相対的に上げることになったりする可能性が考えられます。安易に「可哀相」と言わないほうが賢明でしょう。
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