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「寂しい」と「淋しい」の意味とは?
メールで「さびしい」を変換するときに、「寂しい」と「淋しい」どちらを選んだらいいか迷ったことはありませんか? それぞれ微妙にニュアンスが異なるため、違いを押さえて正しく使い分けましょう。今回は、「寂しい」と「淋しい」の意味や違い、使い方などを解説します。
「寂しい」の意味
「寂しい」の「寂」という文字は「ひっそりとして静かなさま」を表すことから、「物寂しい」情景や状況を表す際に使われます。例えば、全く人の気配のしない路地裏や荒廃した野原など、誰がみても「寂しい」状態であることがポイントです。
また、「○○がいなくて寂しい」というように感情を伝える際にも使えるため、幅広いシーンで使うことができます。メールや手紙で使い分けに迷った場合は、こちらを使ったほうが無難といえるでしょう。
「寂」を使った熟語には、静かなさまを表す「静寂(せいじゃく)」や、心が満ち足りず、「物寂しい」ことという意味の「寂寥(せきりょう)」などがあります。
「淋しい」の意味
「淋しい」は、情景や状況ではなく、主観的な感情に重きをおいた言葉です。例えば、自分の周りにいた人やものがなくなった時に、孤独感を覚えることがあるでしょう。心細くなって涙を流した場合や、人恋しい場合など、悲しい気分になった時に使われます。「淋」という文字は「水が絶え間なくしたたる」ことを意味していることから、思わず涙が流れるような情緒的なニュアンスが感じられますね。
ただし、「淋」は常用外の漢字なので、ビジネス文書では「寂しい」に統一したほうが無難です。手紙やメール、小説や詩などで孤独な心情をより深く表現したい場合にうまく使い分けてみましょう。
「さびしい」と「さみしい」正しい読み方は?
「寂しい」や「淋しい」は、いずれも「さびしい」「さみしい」と読みますが、どちらが正しいのでしょうか?
結論から言うと、「さびしい」と「さみしい」どちらで読んでも間違いではありません。しかし、公文書や新聞などのメディアでは、「さびしい」が一般的なので、公の場では「さびしい」と表現するのがベター。「さみしい」は、親しい人との会話やメールなどの話し言葉で使うようにしましょう。
「寂しい」の使い方を例文でチェック!
日常生活で「寂しい」を使う場合、どのような表現が正しいのでしょうか? 例文で確認しておきましょう。
・地元の商店街はシャッター街となっていて寂しい状態だ。
・縁側の風鈴が寂しげな音色を響かせた。
・友達から何の連絡も来なくて寂しい。
・彼女は一人で寂しい夜道を歩いていた。
このように「寂しい」は、静まり返った空間や、寂れた光景などを表すのに適しています。客観的にみても人気がなくひっそりとしていることが特徴です。
「淋しい」の使い方を例文でチェック!
一方、「淋しい」は以下のような表現が適切です。
・長年連れ添った妻を亡くし、淋しい日々を過ごしています。
・課長が退職すると聞いて、従業員は皆淋しがっていた。
・一人だと淋しいので早く結婚したいと彼女は言っていた。
・クラスに友達が一人もいなくて淋しい気持ちになる。
ひとりぼっちになり孤独を感じたり、悲しくて思わず涙を流すような気持ちになる時に「淋しい」は使われます。常用漢字ではないため、ビジネス文書では使用できませんが、手紙やメールで使うことで、「物寂しい」ニュアンスを伝えることができるでしょう。
類語や言い換え表現とは?
「寂しい」や「淋しい」の類語には、「閑散」「侘しい」「喪失感」などが挙げられます。使う場面やニュアンスの違いに着目してみていきましょう。
1:閑散
「閑散(かんさん)」とは、「ひっそりとして静まり返っていること」。「閑散とした店内」というように、人気がない場所に対して使うことが多いですね。「閑」は暇なことを指すため、仕事がなくて暇を持て余している状態を表します。活気のない状況を表す「寂しい」とほぼ同義語として使うことができるでしょう。
・平日の遊園地はひどく閑散としていた。
・近くに大型ショッピングセンターができた影響で商店街は閑散としている。
2:侘しい
「侘しい(わびしい)」は、「ひどくもの静かで淋しい」「貧しくてあわれなさま」「心が慰められず、心細い」など様々な意味が込められています。「寂しい」と同じように、孤独な状況と心情の両方を表すことができますね。「貧しい」という意味があることから、生活が困窮して辛く、心もとない様子を強調することができるでしょう。
・会社を退職してから侘しい日々を送っております。
・友達がいないので、一人侘しく食事をとった。
・父は学生の頃、侘しい下宿生活を送っていたようだ。
3:喪失感
大切な人やものを失った時の空虚な気持ちを「喪失感(そうしつかん)」といいます。家族を亡くしたり、恋人と別れた時などはショックで心にポッカリと穴が開いたような気持ちになるもの。「寂しい」や「淋しい」より、さらに大きな悲しみを感じた時に使われる言葉です。
・事故で友達を失ってからずっと喪失感を抱えている。
・あまりの喪失感で、食事が喉を通らなかった。
英語表現とは?
「寂しい」や「淋しい」は、英語ではどのように表現するのでしょうか? 心情と状況それぞれ適切な表現を覚えておきましょう。
1:I am lonely without him.(彼がいなくて寂しい)
日本語の歌詞などでも使われる「lonely」は、「寂しい」という意味。ひとりぼっちで孤独な状態を表します。会話の中では、「I feel lonely.」「I get lonely.」のように表現することが多いですね。「very」や「really」を付けて、「寂しい」ことを強調することもできます。
2:We arrived at the desolate place.(私たちはとても寂しい場所に到着した)
「desolate place」は、「寂しい場所、荒れ果てた場所」という意味です。人の気配がなく「うら寂しい」場所や光景を表現したい場合には、「desolate」を使ってみましょう。「a desolate town(住む人のいない街)」、「comfort a desolate heart(わびしい心を慰める)」と表現することもできます。
最後に
「寂しい」と「淋しい」は、辞書に明確な違いは記されていませんが、「寂」と「淋」という漢字に着目してみると、ニュアンスの違いが理解できます。状態や景色など客観的な事実が与えるさびしさは「寂しい」、心情的な孤独感には「淋しい」が適切であるといえるでしょう。
私的な手紙やメールにはどちらを使っても問題ありませんが、ビジネスシーンでは常用漢字である「寂しい」を使ったほうが安心です。2つの漢字の意味の違いを押さえ、うまく使い分けられるようになりましょう。
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