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「わざわざありがとう」の真意って?
「わざわざ」には、“本来ならしなくてもいいことを、手間をかけて行ってくれた”や“忙しいなか、時間を割いてくれた”といった相手の労力への敬意・ねぎらいが含まれます。
そのため「わざわざありがとう」と言うときには「そんなに気を遣わせてしまって、申し訳ない」という恐縮のニュアンスが含まれる場面も多いでしょう。
しかし一方で「わざわざ」には「わざわざ○○しなくていいのに」といった否定的なニュアンスや皮肉、さらには目上の相手に使えば軽視しているようにも受け取られやすいので、マナーが求められる場面では控えたほうが無難な表現でもあります。
【実例】「わざわざ」は諸刃の刃!? 大失敗のエピソード

「ありがとう」に「わざわざ」がつくだけで、言葉の印象は大きく変わってしまいます。
アラサー世代がリアルに体験した「わざわざありがとう」にまつわる失敗談を、筆者が見聞きした事例からピックしました。
♦︎失敗談:取引先に「わざわざありがとうございます」とメールして先輩に怒られた
Aさんは20代後半のときに社外の相手に資料の送付を依頼し、送ってもらった返信に「わざわざ送ってくれてありがとうございました」と書いたそう。しかしメールのCCに入っていた先輩から、即座に「失礼すぎるよ!」とお叱りを受けてしまいました。
先輩からはカジュアルすぎる表現かつ相手への敬意が足りない言い回しだと判断され「ご多忙のところご対応いただき、誠にありがとうございました。資料を送っていただき大変助かります」のように書くべきだと指導を受けたそうです。
♦︎失敗談2:同僚に「わざわざありがとう」と送りイヤミだと受け取られた
Bさんは終業したあとで仕事が残っていたのを思い出し、残業をしている親しい同僚に「手が空いたときに○○もしておいてもらえると嬉しい!」とLINEを送ったそう。
同僚はBさんからの依頼を快く引き受けてくれて、Bさんの代わりに業務を進めてくれたそうです。しかし、そのお礼を伝えるときに「わざわざありがとうね!」とBさんが送ってしまったことで、空気が一変。「こっちは忙しいの知ってるよね? “わざわざ”とか言って、なんか偉そうじゃない?」と、同僚が不機嫌になってしまったそうです。
Bさんは相手が日頃から親しくしている同僚だったからこそ「わざわざありがとう」と労いと感謝を伝えたつもりでしたが、LINEの文面に「わざわざ」が書かれていたことや「ありがとうね!」との組み合わせによって、上から目線な印象を与えてしまったと反省したそうです。
【カジュアル・フォーマル別】ベーシックな言い換えをマスター!

「わざわざ」を使わない会話をスムーズに進めるには、ビジネスシーンを含む汎用性の高いフレーズを覚えておくと安心です。
「わざわざ」に代わる相手や状況に合わせやすい基本形から紹介します。
♦︎友人や同僚にカジュアルな言い換えをするなら?
「助かったよ、ありがとう」や「今日は本当にありがとう!」など、「わざわざ」を入れなくても感謝の気持ちは十分に伝えられます。
むしろ「わざわざ」を入れると嫌味や皮肉に受け取られかねないだけでなく、文脈によっては上から目線な感謝の仕方に思われてしまうことも。
「わざわざ」をあえて入れなくてもいいシーンでは思い切って省いてしまうほうが、感情はストレートに届きます。
♦︎上司や取引先にフォーマルな言い換えをするなら?
上司や取引先には「ご丁寧に」や「お手数」など、「わざわざ」よりも丁寧な言い回しが求められます。
「ご丁寧にありがとうございます」「お手数をおかけし申し訳ありません。ありがとうございます」「先日はお時間をいただき、ありがとうございました」など、“わざわざ”は使わずに場面に応じた丁寧な感謝やお礼を伝えるのが無難と心得ておきましょう◎。
【ビジネスシーンで使える】「わざわざありがとう」の万能な言い換え方

目上や取引先に無用な不快感を与えないためには「わざわざありがとう」の使用をビジネスシーンでは思い切って封印するのも一案です。
万能な言い換え方を解説します。
♦︎「お手数をおかけし」
「お手数をおかけし」は相手に手間をかけさせてしまったニュアンスを、丁寧かつフォーマル に言い換えられる言い回しです。
たとえば「わざわざ送っていただき、ありがとうございます」は「お手数をおかけしました。送っていただき、ありがとうございます」と言い換えられます。
目上の相手や取引先にも使える表現です。
♦︎「ご丁寧に」
相手が“必要以上にきちんと対応してくれたとき”の「わざわざ」は「ご丁寧に」と言い換えるとスマートです。
相手からの丁寧な説明や詳細のメール、礼儀正しい連絡へのお礼に用いることができます。
たとえば「わざわざ連絡をくださって、ありがとうございます」は「ご丁寧にご連絡をいただき、ありがとうございます」と言い換えられます。
「わざわざ」を用いるよりも、柔らかさがあって品のある言い回しです。
♦︎「お気遣いをいただき」
「あなたの配慮の気持ちが嬉しい」という感情が含まれる「わざわざ」 は「お気遣いをいただき」で言い換えることができます。
差し入れや贈り物、労いのメッセージなど自分に対して気にかけてくれた相手には「わざわざ差し入れをありがとうございます」と言うよりも「お気遣いをいただき、ありがとうございます」と伝えたほうが、スマートかつ丁寧な印象を与えられます。
言葉は相手と場面を意識して選ぶ
「わざわざありがとう」は、使い方次第で印象が変わる言葉です。
アラサーともなれば、職場でもプライベートでも“ほどよく丁寧な礼儀”が求められる年代。相手との距離感、場面、求められている関係性を意識して、適切な言い換えができるとスマートでしょう。
「わざわざ」が口癖になっていると、取引先や目上の相手にもつい使いがちに。ビジネスシーンで失敗を避けるならば、口癖にならない程度にしておくほうがベターかもしれません。
TOP画像/(c)Adobe Stock

並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。



