「見てください」は敬語として正しい?
「見てください」は、相手に何かを見てほしいときや、確認をしてもらいたい場合に使われる言葉です。しかし、お願いをする表現としてはやや丁寧さに欠けるため、ビジネスシーンでは使用を控えた方がいいとされていることはご存知でしょうか? 今回は、「見てください」の敬語表現や注意点、正しい使い方などを解説します。
「見てください」の意味
まずは、「見てください」の言葉の成り立ちについてみてきましょう。「見てください」は、「見る」に「くれ」の尊敬語「ください」を付けた言葉です。「見る」が敬語表現でない上に、「ください」が相手に物を要求する意味があるため、人によっては命令されていると受け取られる可能性もあります。よって、ビジネスの場面では適切な表現とは言えません。
「見てください」の敬語表現は「ご覧ください」
「見てください」の敬語表現は、「ご覧ください」になります。「ご覧」は「見ること」の尊敬語で、「覧」は「見る」「眺める」という意味です。「ください」と組み合わせることで、相手を敬った丁寧な表現になります。上司や取引先などの目上の相手にも問題なく使うことができますよ。
例えば、「資料を見てください」は「資料をご覧ください」と言い換えると、丁寧でスマートな印象に。時と場合に応じて、「ご覧くださいませ」「どうぞご覧ください」などとアレンジしてみましょう。
使い方を例文でチェック!
それでは、実際に「ご覧ください」はビジネスシーンでどのように使われるのでしょうか? よくあるシチュエーションを例文で紹介します。
1:お手元の資料をご覧ください。
企画のプレゼンや会議などで、資料を見てほしい場合に使う定番のフレーズですね。「ご覧ください」は目上の人に使える丁寧な表現なので、会議などで不特定多数の人たちが集まる場においても問題なく使うことができます。「ご覧ください」は、相手に失礼にあたらず、自然に行動を促すことができる便利な表現です。
2:こちらが夏季の新商品となっております。どうぞご自由にご覧くださいませ。
「ご覧くださいませ」は、「ご覧ください」をより丁寧にした言葉です。語尾に「ませ」をつけることで、命令のニュアンスが抑えられ柔らかい印象を与えることができます。特に接客業などでお客様に何かを見てもらいたい時には、「ぜひ、お手にとってご覧くださいませ」「ごゆっくりとご覧くださいませ」などと表現するといいでしょう。
3:プランの詳細をメールにてお送りいたしました。ご覧くださいますようお願いいたします。
「ご覧くださいますよう」は、相手に「どうか見てほしい」という思いを伝える言葉。大抵は、「お願いいたします」「お願い申し上げます」とセットで用いられます。取引先やお客様に対して、丁寧かつ確実に何かをお願いしたい場合に使われる言い回しです。
類語や言い換え表現とは?
見てほしいものによっては、「ご覧ください」だと違和感があることもありますよね。そんな時には「ご確認ください」「ご参照ください」などの言い換え表現を押さえておくと便利ですよ。詳しい意味を解説します。
1:ご確認ください
書類の内容などをチェックしてほしい場合には、シンプルに「ご確認ください」を使います。「ご確認」は、「確認」に尊敬の接頭語「ご」を付けた言葉。相手に「はっきりと確かめてください」とお願いする時に使います。「ご覧ください」が「目を通してください」というニュアンスであるのに対して、「ご確認ください」は、内容をチェックしてほしい、きちんと確かめてほしいというニュアンスがあります。
・お手隙の際に、こちらの資料をご確認いただけますか?
・契約内容に誤りがないかどうか、ご確認ください。
2:ご参照ください
「参照」とは、「照らし合わせて、参考にすること」。参考程度に見ておいてください、読んでおいてくださいといった意味合いで用いられます。会議では「手元の資料をご参照ください」「送付資料をご参照ください」と使うため、覚えておくと便利な表現です。
・詳細につきましては、こちらの資料をご参照ください。
・詳しくはこちらの見積書をご参照ください。
3:ご査収ください
「ご査収ください」とは、「よく調べて受け取ってください」という意味。契約書や見積書など、相手に内容をよく確認してもらいたい場合に使います。かしこまった言葉なので、口頭以外にメールや文書でも用いられます。ただし、相手が確認する義務がないものに使用することができないため注意しましょう。
・ご意見を参考に見積書を作成しましたので、ご査収ください。
・契約書をお送りいたしますので、ご査収いただければ幸いです。
英語表現とは?
海外のビジネスパーソンとのやり取りでも、「資料をご覧ください」などとお願いすることがありますよね。英語で「ご覧ください」は、「please see〜」と表現することができます。また、「見る」対象によっては「look」や「watch」などをうまく使い分けてみましょう。
1:Please look this document.(こちらの資料をご覧ください)
「look」は、何か特定のものや場所を見る場合に使います。そのため、手元にある資料や書類を見てほしい場合にはこちらの表現を使ってみましょう。
2:Please see the view from the observatory.(展望台からの景色をご覧ください)
「see」は、自然と目に入ってくるものを表します。目の前の景色など、こちらが意識しなくても見えるものが対象です。「look」よりも、見ることに対して受け身である場合が多いですね。
3:Please watch the image on the screen.(スクリーンの映像をご覧ください)
「watch」は、動いているものを目で追ったり、じっと見る場合に使います。例えば、テレビや映画、人の動きなど変化のあるものが対象です。
最後に
「見てください」は敬語ではありますが、ビジネスシーンで使うにはやや丁寧さに欠ける表現です。そのため、会社で何かを見てもらいたい場合には、「ご覧ください」を使うことを頭に入れておきましょう。メールや文書では「ご確認ください」「ご参照ください」なども頻出の表現なので、うまく使い分けてみてくださいね。
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