目次Contents
肩のゴリゴリ音の正体&治し方とは
肩が痛いな… と肩を回すとゴリゴリと音が鳴ることってありますよね。その正体は、普段の姿勢や肩の使い方が原因で凝り固まった筋肉によるものといわれています。
今回は、姿勢のゆがみやつらい肩の疲れにまつわるゴリゴリ肩の解消法とストレッチを紹介します! 肩こりの原因を見極め、生活習慣の改善と簡単な運動で健康的な肩を手に入れましょう。
〈POINT〉
・頭が前に出ていると凝りの原因に!
・日常の動作自体が肩こりの下地になっている!?
・姿勢が悪くなって筋肉が緊張していると凝りやすい
・習慣的にストレッチで血行を促進しよう
肩を回すと音が鳴る… その【原因】は?
肩からゴリゴリと音が鳴る原因は、僧帽筋や菱形筋、肩甲挙筋など首・肩・背中の筋肉が過度に緊張して凝り固まることで血行が悪化し、老廃物の蓄積や「痛み物質」の産生が促されることと考えられています。
これらの筋肉に過度な緊張や血行の悪化を引き起こす原因は何なのでしょうか。
一般内科医の成田亜希子先生に教えていただきました。
【1】姿勢が悪い
肩こりを引き起こす主な原因が「姿勢の悪さ」です。普段から猫背や前屈みの姿勢の人は、僧帽筋などの筋肉が引き伸ばされて負担がかかった状態となり、血行悪化が生じやすくなります。
また、長時間のパソコン操作などで前屈み気味の体勢を長く続けることも血行悪化につながります。
【2】荷物が重い
肩・首・背中の筋肉は、物を持ち上げたりする際に動かされます。過度な運動は筋肉の血行を悪化させるだけでなく、筋肉の線維にダメージを与えて痛みを引き起こすことも少なくありません。
そのため、重たい荷物を持ったり、ショルダーバッグを長時間使用して肩周りの血行を悪くすることで肩こりを引き起こすことがあります。
【3】枕が合わない
十分な睡眠や休息をとっても肩こりが改善しない場合や、朝起床時に最も肩こりがひどくなる場合などは、枕やベッドマットなどの寝具がからだに合っていない可能性があります。
睡眠中は副交感神経が働くため、全身の血管が拡張して血行が良くなります。そのため肩こりは良質な睡眠をとることである程度は改善しますが、睡眠中に首や肩に負担がかかっていたり、余計な力が入って十分にリラックスできない状態続くと肩こりが改善しないばかりか、起床時に強い凝りを感じることも少なくありません。
【4】病気
頑固な肩こりは思わぬ病気が原因のこともあります。
具体例としては、全身の血行が悪化する高血圧や自律神経失調症、肩の筋肉に炎症を起こしうる肩関節周囲炎(五十肩)や頚椎症、歯の噛み合わせの悪さを引き起こす虫歯や歯肉炎、肩周りに余計な力が入りがちになる目や鼻などの病気が挙げられます。
肩こり以外にも思い当たる症状がある場合は、とくに注意が必要です。
【5】ストレス
肩こりとストレスはあまり関連がなさそうにも思えますが、実は綿密な関係があります。
日常的に多くのストレスを抱えがちな人は、自律神経のバランスが乱れがち。とくに、ストレスが強いときは交感神経が過敏に働くようになります。交感神経は血管の収縮を促すため、血行が悪化し肩こりが生じやすくなるのです。
また、ストレスを抱えている人は知らず知らずの内に身体に力が入っていることも多く、首や肩に余計な負担がかかることで肩こりを引き起こすことも少なくありません。
肩がゴリゴリなるときの【解消法】
ここでは、現代人を悩ませる肩こりの解消法を見ていきます。ポイントは温めることと血行促進です。
医師がすすめる肩こりの解消法
ふたたび、成田先生に教えていただきました。
肩こりの根本的な原因は、僧帽筋や菱形筋、肩甲挙筋など首・肩・背中にまたがる筋肉の血行が悪化し、筋肉が硬く張ることです。
このため、肩こりを根本から治すには、血行の悪化によって凝り固まった筋肉をほぐして血行そのものを改善する必要があります。
薬物治療であれば筋肉を柔らかくほぐすために筋弛緩薬の服用が挙げられますが、そのほかには以下のようなことを続けることが大切です。
・マッサージ
・温熱療法
・ストレッチ
・筋力強化トレーニングなどの理学療法
また、日頃の姿勢や長時間同じ体勢でいる生活習慣なども改善していくのも重要なポイントの一つです。
背中・肩回りをストレッチする
成田先生によると、肩こりは首や肩、背中などの筋肉を鍛えることで発症を予防することができます。筋肉は運動を行うために多くの酸素を必要とするため、毛細血管が非常に発達している部位です。
しかし、あまり使われず痩せた筋肉は毛細血管も減少し、血行が悪くなります。その結果、肩こりを起こしやすくなるのです。
加えて、あまり使われない筋肉は老廃物が停滞して「痛み物質」の産生が促されるため、痛みを伴う肩こりの原因となることも少なくありません。
このような筋肉の衰えによる肩こりを防ぐためにも、日頃から僧帽筋や菱形筋など肩こりに関係する筋肉のストレッチや筋力強化を行うことが大切です。
また、猫背の人や前屈みの姿勢をとりやすい人は、正しい姿勢を維持して首や肩の余計な負担を軽減するため、腹筋や背筋を鍛えるのもおススメです。
しかし、いずれの筋肉を鍛える際にも無理なトレーニングは筋肉にダメージを与え、かえって肩こりを悪化させるきっかけになることがあります。
やり方が分からないときは、整形外科などで理学療法を受けるのも一つの方法です。
普段から姿勢を意識する
私たちの体は、重力の関係で長く座っていると骨盤が後傾して背中が丸まりやすくなってしまうので、以下のことを日頃から意識すると、姿勢の崩れからくる僧帽筋への負担(=肩こり)を軽減できるでしょう。
・椅子に深く座る
・坐骨(左右のお尻にそれぞれある尖った骨)を椅子の座面につけるように座る
・PCのキーボードと体との距離が遠くなりすぎない、PC作業中は脇の下に卵1個分のスペースを設けるイメージを持つと◎
・スマホで長時間動画などを観るときは、手に持たず、スマホホルダーを使う
僧帽筋は「肩こり筋」! 簡単ストレッチでガチガチの肩こりをスッキリ!
肩こりの症状がひどく長引くなら整形外科の治療も視野に
ふたたび、成田先生に教えていただきました。
成田先生によると、生活習慣に関連する原因の場合には、その原因を改善し、ストレッチやマッサージなどを行って血行を改善することで自然と解消していくことが多いですが、長期間放置された肩こりは、これらの小手先のセルフケアを行っただけでは改善しないことも多く、肩や首の痛さやダルさ以外にも深刻な症状を引き起こすことがあります。
肩こりと共に次のような症状が長引く場合には、「単なる肩こり」を軽く考えずに病院での治療を受けましょう。
・非常に強い頭痛や頭重感
・吐き気
・めまい
・強い全身倦怠感
・首や肩が動かせない
成田先生曰く、こうした場合には整形外科での診療が適している一方、頑固な肩こりは高血圧や目の病気、頭の病気などが原因で引き起こされていることがあります。
肩こり以外にも気になる症状がある場合には内科や眼科など、それぞれの症状に合った診療科で相談するのも一つの方法です。
▼あわせて読みたい
凝り固まった筋肉をほぐす【おうちストレッチ】
一日の仕事終わり、長時間同じ姿勢をキープしていたことで、筋肉が固まっていると感じることはありませんか?ここでは肩こり解消のためにおうちで簡単ストレッチを紹介します。
お風呂上がりなど体が温まっている時に取り入れると◎。毎日続けて、深い凝りを少しずつ解消していきましょう。
◆座ったままOK! 背中をねじるストレッチ
【HOW TO】
1|両足を伸ばして座る
体がアルファベットの“L”の字になるように、尾骨から頭頂部までを一直線にして、背筋を伸ばして座ります。
2|右のひざを曲げ、かかとをお尻の横につける。左のひざも曲げて、足の甲を右足のつけ根に乗せる
左右の座骨(お尻の尖った骨)に、なるべく均等に体重を乗せた姿勢を保ちます。左右の足は、ひざ・足の甲の位置を調節して無理なく座りましょう。
3|息を吐きながら、上体を左にねじる。右手を左ひざに添え、左手は背中側にまわして左つま先を持つ
背中が丸まったり、反ったりしないように、頭頂部までなるべく真っすぐに保ったまま上体をねじりましょう。目線は後方に向け、肩を下げてうしろに引きます。呼吸を5回繰り返したら、反対側も同様におこないましょう。
※ 強度が高いポーズなので、まずは両足の甲を床につけまま上体をねじり、右手で左ひざを軽く持つところからスタートしてもOK。
◆寝たままおこなうストレッチ&ヨガ「橋のポーズ」
【HOW TO】
1|仰向けになる。ひざを立てる
足は腰幅程度に開き、左右の足先は平行にします。両手は体側に下ろして、手のひらを床につけましょう。腰が反りすぎないように、恥骨を天井方向に引き上げます。
2|息を吐きながら、お尻を床から持ち上げる
腰に負担をかけないように、お尻をゆっくりと持ち上げましょう。
3|腰~背中を床から持ち上げる
腕の力を使って、腰~背中を持ち上げます。足裏でしっかりと床を押し、骨盤をグーッと引き上げるようにして姿勢を保ちましょう。ひざ~肩が緩やかなカーブを描くように意識して、呼吸を5回。
4|続けて、両手の指を体の下で組み、ヨガ「橋のポーズ」をおこなう
腕をさらに絞るようにして肩を引き寄せ、胸を斜め上方へと押し出します。ここで、もう少し背中のカーブを意識して、呼吸を5回。首で体重を支えるのではなく、肩を使いましょう。
【背骨ストレッチ】でゆがみ改善。プチ不調は凝り固まった背中が原因!?
◆僧帽筋全体を伸ばすストレッチ
【HOW TO】
1|あぐらの姿勢で座り、両腕を頭上に伸ばしたら、右手で左手首を持って上に引っ張り60~90秒キープ
腰が反りすぎないように、尾骨(背骨の延長線上にあるお尻の尖った骨)を引き下げて、骨盤を立てて座ります。腕は、耳の位置よりも前に倒れないように注意。
2|上体を右側に傾け60~90秒キープ
左右のお尻に、バランスよく体重を乗せた状態を保ちます。左の肩甲骨周辺が心地良く伸びているところで、呼吸を繰り返しましょう。
3|背中を丸め、上体を右斜め前に倒し60~90秒キープ
あごを引き、首のうしろ側をリラックスさせます。上体を起こしたら、反対側も同様におこないます。
◆僧帽筋の上部~中部を伸ばすストレッチ
【HOW TO】
1|あぐらの姿勢で座り、両腕を頭上に伸ばしたら、手の指を組む
ここでも、骨盤をしっかりと立てて座ります。
2|ゆっくりと背中を丸めていき、腕が肩の高さに下りてきたところでストップし60~90秒キープ
手と肩甲骨で前後に引っ張り合うように、軽く力を入れてストレッチをおこないます。あごを引いて、首のうしろの伸びを感じましょう。
【背骨ストレッチ】でゆがみ改善。プチ不調は凝り固まった背中が原因!?
◆ヨガの「針の糸通し」のポーズ
ヨガのポーズで、肩甲骨周辺を広くゆるめます。
【HOW TO】
1|四つ這いになる。右手のひらを上に向け、左脇の下をくぐらせて右肩と右側頭部を床につける
股関節の下にひざをつくようにします。目線は右手を見るように。
2|左手を天井方向に持ち上げて、胸を開く
お尻が左側に流れないように、体の中心にとどめて姿勢を保ちましょう。
3|左腕を背中側にまわしたら、手の指先を右太ももの付け根に添える
ゆったりとした呼吸を5回、もしくは60~90秒キープ。この姿勢がツライ場合は、STEP 2でキープします。四つ這いに戻ったら、反対側も同様におこないます。
◆寝ながらOK! ストレッチローラー×僧帽筋ほぐし
【HOW TO】
1|肩甲骨の下あたりにストレッチローラーがくるように、ひざを立てた仰向けになり、床からお尻を持ち上げます。
2|足の裏でしっかりと床をとらえたら、体を前後に動かしながら、首の下~肩甲骨の下をほぐしていきましょう。
目安は、3分程度。慣れるまでは、腕を体の横に下ろしていてもOK。ストレッチローラーがない場合は、テニスボールで代用することも可能です。
あとは、体重のかけ具合を調節したり、長時間同じ場所に使用しないことを意識したりしてみてください(痛みが強く出ないように、気をつけながら使用すること)。
僧帽筋は「肩こり筋」! 簡単ストレッチでガチガチの肩こりをスッキリ!
▼あわせて読みたい
オフィスもOK! 座ったままできる【ストレッチ】
仕事や家事に集中していると、ついつい筋肉がこわばった状態が続き、疲れたなぁと感じることがありますよね。
そんなときにも、休憩がてら簡単なストレッチをしてあげるだけで体が楽に感じられます。ここでは、オフィスでも取り入れやすい、座ったままできるストレッチを紹介します。
◆座ったまま! 30秒でできる「三日月のポーズ」
ふだんあまり動かすことのない脇腹を伸ばす「三日月のポーズ」は、上半身を気持ちよく伸ばして、血流促進、肩凝り改善、姿勢改善に効果的だと言われているポーズです。
【HOW TO】
1|姿勢を正して座る
肩の力を抜いてリラックス!
2|息を吸いながら左手を左耳の真横に伸ばす
肩が上がりがちなのでできるだけ耳と肩の距離を遠ざけましょう。
3|息を吐きながら上半身を横に倒す。反対も同様に!
ふぅ~っと息を吐いて… 左腕を天井斜め上に刺すようなイメージで。左の骨盤が浮かないように、腕と骨盤を引っ張り合います。
吐く息ごとに、左の肋骨の間がぐーっと広がって呼吸が入りやすくなっていくのを感じて。大きく呼吸しながら15秒キープ。余裕がある人は視線を天井方向に向けても◎。
仕事の合間に! 座ったままの簡単ストレッチで肩こり解消〈Oggi専属読者モデル 賀来みな美〉
◆タオルを上げ下げ!「肩甲骨のストレッチ」
タオル1枚あれば、会社のデスクでも簡単に取り入れられるストレッチ。仕事の合間に、猫背になってこり固まった肩甲骨をリセットするのに、効果的!
【HOW TO】
1|肩幅の長さにタオルを持つ
坐骨を立たせて、背筋を伸ばし、正しい姿勢で座る。
2|タオルをまっすぐ上げる
息を吸いながら両腕を伸ばして、タオルをまっすぐに上げます。このときタオルは頭の真上にくる位置に持っていきましょう。
3|頭の後ろを通るようにしてタオルを下ろす
息をゆっくりと吐きながら、タオルが頭の後ろを通るようにして、腕を下ろしていきます。頭の位置を固定しつつ、反り腰にならないように注意して。
◆肩の凝らない重心を知るストレッチ
日本唯一のパーソナルフェイストレーナーとして活躍する木村祐介さんに教えていただきました。
木村さんによると、「肩こりって自分で作ってしまう。だから自分で改善できる」のだそう。例えばPCを打つ際に首が前に出ていたり、猫背になってスマホを見たり… 日常のありとあらゆる動作が肩こりにつながることも。
今回は、木村さんおすすめの【肩を凝らない重心】を教えていただきます。
【HOW TO】
1|まずは指先で肩に触れます。
2.|触れている手よりも前に胸を突き出します。
\木村さんのワンポイントアドバイス/
「肩や肘を引くのではなく、息を吸いながら胸や胴体を斜め上に伸ばすんです。これが、肩が凝らない姿勢。要は肩よりも胸が後ろに下がっていると相対的に肩が前に出るので、肩まわりが緊張して凝ってしまうのです」(木村さん)
肩が前に出ると見た目にもきれいとは言えないので、肩の位置に気をつけるとよさそうですね。
立ってでも座ってでもできるので、気づいた時に「肩よりも身体を前に出す」を意識するようにしましょう。木村さんによると、1週間ほど続けると変化が感じられるそうです。
在宅勤務の辛い肩こりに効く!【こらない重心】をマスターして|パーソナルフェイストレーナー木村祐介
◆首から肩にも効く! 緊張をほぐす「僧帽筋ストレッチ」
首を倒す正解の方向は人それぞれ。首から肩にかけて筋肉が心地よく伸びていると感じられる方向へ。僧帽筋(そうぼうきん)をじんわり伸ばして。
【HOW TO】
1. 椅子に浅く座わり、足首に手をかけます。
2. 頭に手を置きます。
3. 心地いい方向へ首を倒します。
4. 背筋は伸ばしたまま、足首の重みで体を引っ張りましょう。
〈POINT〉
・心地いい方向へ首を斜め前に倒す
・頭の先端を持つ
・背筋は伸ばしたまま
・足首の重みで体を引っ張る
※トレーニングは体調に合わせておこないましょう。痛みを感じた場合は無理をしないでください。
Oggi流「筋肉体操」大公開! 筋肉指導者&イケメン弁護士が伝授します♡【肩こり・腰痛】
最後に
今回紹介したような運動や正しい姿勢は、一瞬にして肩こりを治すような特効薬ではありません。しかし、肩こりのない体づくりには適度な筋力が必要。
ストレッチやエクササイズを続けてしなやかなヘルシーボディを手に入れつつ、少しずつ深いコリを改善していきましょう。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
▼あわせて読みたい