肩こりは現代人によく起こりうる症状の一つ。日常生活上の好ましくない習慣や首や肩の病気などによって引き起こされるものですが、なかにはストレスが発症に関わっていることもあります。
【目次】
・【肩こり原因】ストレスも大きな要因のひとつです
・【肩こり原因】鍛える、動かすなら僧帽筋と菱形筋
【肩こり原因】ストレスも大きな要因のひとつです
厚生労働省による平成22年度「国民生活基礎調査」によれば、女性が普段感じている最も多い不快症状は肩こりであるとのデータが示されています。
全ての年代の女性1000人当たり129.8人が肩こりを自覚しているとされており、女性にとって肩こりは非常にありふれた症状と言ってよいでしょう。
肩こりの根本的な原因は、僧帽筋や菱形筋、肩甲挙筋など首・肩・背中の筋肉が過度に緊張して凝り固まることで血行が悪化し、老廃物の蓄積や「痛み物質」の産生が促されることと考えられています。
では、これらの筋肉に過度な緊張や血行の悪化を引き起こす原因にはどのようなものがあるのでしょうか? 詳しく見てみましょう。
肩こりを引き起こす原因
姿勢が悪い場合
肩こりを引き起こす主な原因は、「姿勢の悪さ」です。普段から猫背や前屈みの姿勢の人は、僧帽筋などの筋肉が引き伸ばされて負担がかかった状態となり、血行悪化が生じやすくなります。また、長時間のパソコン操作など前屈み気味の体勢を長く続けることも血行悪化につながります。
荷物が重い場合
肩・首・背中の筋肉は物を持ち上げたりする際に動かされます。過度な運動は筋肉の血行を悪化させるだけでなく、筋肉の線維にダメージを与えて痛みを引き起こすことも少なくありません。このため、重たい荷物を持ったり、ショルダーバックを長時間使用して肩周りの血行を悪くすることで肩こりを引き起こすことがあります。
枕が合わない場合
十分な睡眠や休息をとっても肩こりが改善しない場合や、朝起床時に最も肩こりがひどくなる場合は、枕やベッドマットなどの寝具が身体に合っていない可能性があります。
睡眠中は副交感神経が働くため、全身の血管が拡張して血行が良くなります。そのため、肩こりは良質な睡眠をとることである程度は改善しますが、睡眠中に首や肩に負担がかかっていたり、余計な力が入って十分にリラックスできない状態続くと肩こりが改善しないばかりでなく、起床時に強いこりを感じることも少なくありません。
病からくる場合
頑固な肩こりは、日常生活上の原因で生じる単なる肩こりではなく、思わぬ病気が原因のことがあります。
具体的には全身の血行が悪化する高血圧や自律神経失調症、肩の筋肉に炎症を起こしうる肩関節周囲炎(五十肩)や頚椎症、歯の噛み合わせの悪さを引き起こす虫歯や歯肉炎、肩周りに余計な力が入りがちになる目や鼻などの病気が挙げられます。
肩こり以外にも思い当たる症状がある場合には、とくに注意が必要です。
ストレスの場合
肩こりとストレスはあまり関連がなさそうにも思えますが、実は綿密な関係があります。
日常的に多くのストレスを抱えがちな人は、自律神経のバランスが乱れがち。とくに、ストレスが強いときは交感神経が過敏に働くようになります。交感神経は血管の収縮を促すため、血行が悪化することで肩こりが生じやすくなるのです。
また、ストレスを抱えている人は知らず知らずの内に身体に力が入っていることも多く、首や肩に余計な負担がかかることで肩こりを引き起こすことも少なくありません。
このように、肩こりは姿勢や運動習慣などの日常生活上の習慣や病気などが原因となる他にも、ストレスが大きく関与していることがあります。とくに、ストレスによる肩こりはそれ自体がさらにストレスを助長し、肩こりの悪化を招く悪循環に陥るケースも多々あります。
頑固な肩こりに悩んでいる人は、一般的なセルフケアや生活の見直しだけでなく、ストレスが溜まりにくい生活を心がけるようにしましょう。
【肩こり原因】鍛える、動かすなら僧帽筋や菱形筋!
肩こりは首や肩、背中などの筋肉を鍛えることで発症を予防することができます。
筋肉は運動を行うために多くの酸素を必要とするため、毛細血管が非常に発達している部位です。しかし、あまり使われず痩せた筋肉は毛細血管も減少し、血行が悪くなります。その結果、肩こりを起こしやすくなるのです。
また、あまり使われない筋肉は老廃物が停滞して「痛み物質」の産生が促されるため、痛みを伴う肩こりの原因となることも少なくありません。
このような筋肉の衰えによる肩こりを防ぐためにも、日頃から僧帽筋や菱形筋など肩こりに関係する筋肉のストレッチや筋力強化を行うことが大切です。
また、猫背の人や前屈みの姿勢をとりやすい人は、正しい姿勢を維持して首や肩の余計な負担を軽減するため、腹筋や背筋を鍛えるのもおススメです。
しかし、いずれの筋肉を鍛える際にも無理なトレーニングは筋肉にダメージを与え、かえって肩こりを悪化させるきっかけになることがあります。やり方が分からないときは、整形外科などで理学療法を受けるのも一つの方法です。
成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。