体外受精の疑問に専門医が答えます! いくらかかる? 日数は?【後編】
近頃メディアでも紹介されている「体外受精」。
【前編】では、体外受精のスケジュールや成功率についてみていきました。後編となる今回は、体外受精にかかる費用はいくらか、どれくらいの頻度で病院に通うのかなど、より詳しい治療内容について紹介します。
◆「体外受精っていくらかかるの?」-体外受精の費用・補助金-
一回の体外受精にかかる費用は、薬剤や行う手術の種類によって異なりますが、およそ40万円~70万円とされています。ほかの治療法に比べても高額なことから、体外受精をあきらめてしまう方がいらっしゃるのも現実です。
体外受精のように高額な不妊治療を受ける方のために、費用の一部を助成してくれる制度が【特定不妊治療費助成制度】です。対象となるのは、
(1)特定不妊治療(体外受精・顕微授精)以外の治療法では妊娠の見込みがない・極めて少ないと医師に診断された夫婦
(2)治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦
(3)申請日の前年(1月から5月までの申請日については前々年)の夫婦の合算の所得額が、730万円以下である夫婦(夫婦合算での所得額)
※東京都は905万円以下となります。
と定められており、助成金の条件や金額・申請方法などは各自治体で異なります。そのため、まずはお住まいの市区町村の保健所や役場などへお問い合わせされることをおすすめします。
◆「1回の体外受精に何日かかるの?」―体外受精のスケジュール―
体外受精をおこなう場合の一般的な通院スケジュールは、月経の開始から妊娠判定までに約1~2か月を要するとされています。ここでは前回の記事で紹介した体外授精のステップを、より具体的なスケジュールでみていきましょう。
治療開始から1日目~3日目:検査
月経開始から1日〜3日目にあたるこのステップではホルモン値を確認し、問題がなければ排卵誘発剤の投薬・注射を始めます。注射は病院でおこなう場合と自宅でおこなう場合があり、忙しくて病院に毎日注射を打ちにいけないという方には医師の指導のもと、ご自身で注射を打っていただきます。
治療開始から9日目ごろ~:排卵日の決定
月経開始から7日ごろにあたるこのステップでは卵胞の状態を調べ、採卵日を決めます。採卵日を決めるまでには2〜3回の通院が必要となり、ホルモンや卵胞の状態が良いとされた2日後に採卵を行います。
治療開始から11〜16日目ごろ:採卵
月経開始から2週間ほど経つこのステップで採卵をおこないます。採卵の際には入院は必要ありませんが、朝来院し午後は安静に過ごすという流れで治療が進むため、お仕事をされている方はお休みされることをおすすめします。
治療開始から14~21日目ごろ:(新鮮胚の場合)胚移植
凍結胚ではなく、新鮮胚での胚移植をおこなう場合には、採卵から3~5日後に胚移植を行います。胚移植後には妊娠しやすい子宮環境を作るため、黄体ホルモン剤の投薬・注射を行います。
治療開始から28日~35日目ごろ:妊娠判定
採卵からおよそ2週間後にあたるこのステップでは、血液を測定し、妊娠しているかを判定することが出来ます。順調であればそこから1・2週間後には胎児の心拍が確認できます。
◆「リスクや副作用ってあるの?」―体外受精の副作用・リスク―
体外受精の技術は大幅に進歩し、現在では副作用が少なく安全な治療方法とされています。しかし、ごくまれに治療の過程で副作用やリスクが生じる場合もあります。体外受精をこれからおこなっていく方は、念のためこれらのリスクについても確認しておきましょう。
【採卵による出血・感染】
採卵時に針を刺すことで腹腔内や膀胱に出血が起こったり、腟内の細菌が腹腔内に入り骨盤内感染症と呼ばれる発熱や腹痛などの症状が起こったりします。予防として、腟内の十分な消毒と抗生剤を投与するため、これらの症状が見られることはごくまれです。
【卵巣過剰刺激症候群(OHSS)】
卵巣過剰刺激症候群とは、排卵誘発剤を使用することで、卵巣が腫れ上がってしまう病気です。
薬や注射の効き方には個人差があり、反応が強すぎた場合に過剰な数の卵胞が発育して卵巣過剰刺激症候群になる場合があります。排卵誘発剤の使用後に頻繁にのどが渇いたり、息苦しさや腹痛を感じたりした場合は医師に相談されることをおすすめします。
◆体外受精は日々発展し続ける治療法
不妊治療は保険適応外の治療が多く、心にも経済的にも負担がかかってしまいます。お住まいの地域の助成金制度を調べ、有効に活用していきましょう。また、病院に通う頻度も高くなるため、治療中でも働きやすい環境を整えることも大切です。
体外受精の成功率はこの10年で2倍になったといわれています。医師と相談しながら、あなたに合った治療を受けていきましょう。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
医師 杉山力一
杉山産婦人科院長。不妊治療の名医。日本における生み分け法の権威・杉山四郎医師の孫。
東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。
監修する女性向けアプリ「eggs LAB」では、独自ロジックにより、アプリでの問診で自身の情報を入力することで、これまでにない高い精度での生理日・排卵日予測を実現。不安定な生理周期にも対応した適切なアドバイスや、妊活に関する情報まで、個々の身体の状態にフィットした「あなただけの/あなたのための/今欲しい情報」を発信中。
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