いまこそ知りたい!働く私と卵子凍結の現在
最近、耳にする機会が増え、キャリアを持つ女性として気になっている人も多い「卵子凍結」。「早く産んだほうがいいのはわかっているけれど、今はそのタイミングじゃない」という場合の新たな選択肢のひとつになるかも? 現状やメリット、気になることをまとめました。
Oggi読者に聞きました!
Q 卵子凍結※に興味はありますか?
「仕事が忙しくてまだ子供は考えられないので検討したい」(32歳・IT)など、約半数が興味あり。ただ「どうやって卵子を採るの?」(27歳・事務)など具体的な内容を知らない人も多数。すでに凍結済みの人は全体の2%。
※「卵子凍結」とは、受精させていない、自身の卵子単独での凍結を指します。
今、卵子凍結に注目が集まっています!
芸能人やスポーツ選手などが「卵子凍結済み」と次々報告
昨年、タレントの指原莉乃さん(31歳)などの著名人が卵子凍結したことを公表。フィギュアスケートの小松原美里選手(31歳)も「競技を続けたい」と、アスリートのキャリアを考慮しての実施を告白。出産とキャリアの間で悩む女性の選択肢として認知されるように。
東京都の卵子凍結費用助成事業の説明会に約9300人が申し込み
東京都内に住む18~39歳の女性に対し、東京都が昨年9月に卵子凍結にまつわる費用を最大30万円支給すると発表。助成の条件となっているオンライン説明会への参加者が約6か月間で約9300人に上るなど、関心度の高さがうかがえる結果に。2024年度の実施・継続も検討されている。
卵子凍結費用を福利厚生でサポートする企業も
ここ数年、パナソニック コネクト、サイバーエージェントなど企業の福利厚生として卵子凍結を支援する動きが加速。卵子凍結にかかる費用の一部負担のほか、通院にともなう休暇を取りやすい環境をつくるなど、職場内の理解を促す取り組みも始まっている。
「卵子凍結」の基礎知識
「いつか子供がほしい」と考える女性は少なくないけれど、その「いつか」はいつくるの…? 悩み多き働く女性にとって、卵子凍結が新たな選択肢になりうるのか。その実情を、スペシャリストに伺いました。
教えていただいたのは…
●浅田レディースクリニック 理事長 浅田義正先生
あさだ・よしまさ/医学博士。高度生殖医療を中心とした診療を行う不妊治療のスペシャリスト。『不妊治療を考えたら読む本〈最新版〉 科学でわかる「妊娠への近道」』(講談社ブルーバックス)など著書多数。
身近になるのはもう少し先?
ただ、出産の可能性は広がります
「働く女性にとって、子供の〝産みどき〟は大きな問題。『しばらく仕事に集中したい』『今はパートナーがいない』『子供を産みたいかどうかまだわからない』など、ライフプランによって悩みもさまざま。
そこで注目を集めているのが卵子凍結です。卵子凍結とは、卵巣から採取した未受精の卵子を凍結させ、出産したい/できるタイミングまで保存すること。
年齢とともに低下する卵子の質を、採取した時点の若い状態のまま維持し、将来の出産に備える方法のことです。
ただ、卵子凍結はもともとがん患者の方などが、子供を産むことをあきらめずに済むよう、治療前に行ってきたもの。
健康な女性の卵子凍結に関しては、『妊娠を先送りにする人が増える』といった声や、費用が高額、融解した卵子を使って出産に至った事例が現時点では少ないといった懸念もあります。
また、採卵は40歳未満の使用、卵子は45歳未満の使用が推奨されるといった年齢制限も。それを理解したうえでなら、将来の妊娠の可能性が広がる、非常に有効な手段といえます。
女性の人生設計の選択肢がひとつ増えると考えてみては」(浅田先生)
「卵子凍結」の基本のキ Q&A
Q そもそも、どうして卵子を凍結するの?
A 加齢によって卵子が老化するから
「卵子は、母親の胎内にいるときに一生分がつくられ、新たに増えることはありません。胎児のときがピークで、500~700万個の卵子が次々と自然消滅していき、35歳で1~2万個ほどに。卵子は年齢とともに老化していくため、質が低下し、染色体異常を起こす確率が上昇します。若いうちに卵子を採取すれば、それだけ質のいい状態の卵子を残しておけます」(浅田先生)
▲採取した卵子。大きさは針先ほど
Q 卵子凍結はいつから始まったの?
A 日本では1983年。急速に広まったのは昨秋、東京都が支援を発表してから
「卵子凍結は40年ほどの歴史があります。当初は凍結技術が未熟でしたが、2000年前後にガラス化法(超急速ガラス化保存法)という優れた凍結技術が登場したことで普及。さらに昨年、東京都が支援策を発表してからは注目度がUP。女性たちの関心が一気に集まるように」
Q 卵子は何個くらい採取すればいいの?
A 子供ひとりにつき30代前半なら約20個
「採取した卵子がすべて妊娠に至るわけではありません。従来の不妊治療では、ひとり産むには平均12.2個の卵子が必要とするデータが。さらに未受精卵は受精卵より融解後の生存率がほんの少し下がるため、当院では受精卵の2割増し、30代前半で20個の採取を目指しています」
◆生殖補助医療(ART)で妊娠・出産のために必要な卵子の数
Q 卵子を凍結させて安全性に問題はない?
A 凍結によるリスクはありません
「採取した卵子は、-196℃の液体窒素で瞬時に凍らせるためダメージは最小限に抑えられます。また、超低温の環境下では化学変化が起こらないため、半永久的な保存が可能に。融解した後の卵子の生存率は95%以上です」
Q 費用はどのくらい?
A 自費診療なので、30万円~100万円と幅があります
「卵子凍結は個人の意思で行われるものなので、保険適用にならず、クリニックにより差があるのが実情。クリニック選びの際は料金体系も忘れずにチェックを。最近は受診回数や採卵数に左右されない、パッケージ型の料金プランを採用するクリニックも増えています」
2024年Oggi5月号「働く私と『卵子凍結』の現在」より
イラスト/ヤマサキミノリ 構成/佐々木 恵・酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部