卵子凍結について
卵子凍結は、がん患者さんが抗がん剤や放射線治療を始める前に卵子を凍結したり、がんでなくても様々な理由で「卵子の老化」を防ぐため、若いうちに卵子を保存したりすることがあります。
卵子は年齢とともに老化し徐々に妊娠しにくくなるため、卵子を凍結すれば年齢による妊娠率の低下はなく、凍結時の妊娠率は維持されます。
卵子凍結はどんなことをする?
卵子を凍結するためには、卵巣から卵子を取り出す必要があります。体外受精の場合と同様、お薬で複数の卵子を育て、タイミングをみきわめて卵巣から採卵。未受精のまま凍結し、将来使用するまで液体窒素タンクで長期保管します。
近年の凍結技術の進歩により、受精卵だけでなく未受精の卵子凍結も可能になりましたが、凍結卵子は凍結受精卵と比較して融解(凍結状態から溶かすこと)による影響を受けやすく、受精卵の融解後の生存率はおおよそ99%に比べ、卵子の融解後の生存率はおよそ95%ぐらいとなっています。
また、採卵の際には、卵巣刺激や採卵術といった、大きくはないですがリスクが懸念されることや、一人の赤ちゃんがうまれるまでに30~34歳の時の卵子の場合で少なくとも12個ほど必要であることは、念頭においておいたほうがよいでしょう。
がん患者さんのための卵子凍結(妊孕性温存療法・にんようせいおんぞんりょうほう)について
年間約2万人の思春期・若年成人の方が、新たにがんの診断を受けるといわれていますが、がん治療は、手術をはじめ、抗がん剤や放射線治療などの治療によって、妊娠するために必要な能力(妊孕性)がダメージを受けることが知られています。
もともと卵子凍結は、思春期・若年成人のがん患者さんが将来お子様をもつことができるよう、治療前に妊孕性を温存するために実施されていました。令和3年からがん患者さんの妊孕性温存に対する費用助成も始まっています。
生殖医療の進歩や技術向上により、女性や夫婦のライフプランの選択肢は広がっていますので、妊娠や出産に関する悩みは、生殖医療専門医へお気軽にご相談いただければと思います。
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浅田レディースクリニック 理事長 浅田義正(あさだよしまさ)
日本でも有数の体外受精成功率を誇り、愛知・東京でクリニック展開する「医療法人浅田レディースクリニック」の理事長を務める。海外での体外受精研究実績を持ち、顕微授精の第一人者。妊娠という“結果“を重視した「浅田式」不妊治療を行っている。