不妊治療って何をするの? Vol.3 〜体外受精・顕微授精について~
今回は不妊治療でおこなわれる、体外受精・顕微授精についてお話をします。
体外受精・顕微授精とは、卵子と精子を体外に取り出して、受精・発育させたのち子宮へ戻す治療法です。
受精方法は、卵子と精子を容器の中で受精させる「ふりかけ(C-IVF)」と、人の手で器具を使って精子を卵子に注入する「顕微授精」の2通りあります。
卵子と精子が受精するには、卵子の成熟度が重要です。成熟した卵子を獲得するために、エコーで卵巣内の卵胞の成長を観察し、血液検査でホルモン値をはかりながら、薬を使って約2週間ほど卵子を成熟させていきます。そして排卵する前に、タイミングを見きわめて卵巣から卵子を取り出します。これを採卵といいます。
十分な運動精子がある場合は「ふりかけ」、受精障害や精子の数が少ない場合は「顕微授精」で受精させます。培養器で受精卵を育てたのち、採卵から数日後、もしくは凍結した受精卵はホルモン剤で子宮内膜をととのえてから子宮へ戻します。
「体外受精まで進んだのだから、すぐに妊娠できるはず!」は本当?
体外受精・顕微授精は高度な治療のため体への負担がありますし、4月に保険適用されたとはいえ一般不妊治療とくらべるとお金もかかるので、そのぶん期待も大きくなりますよね。
しかし、体外受精・顕微授精では受精卵をつくることはできますが、それが育つかどうかは年齢、夫婦の遺伝子の組み合わせ、遺伝子の偶然の組みかえなどの要因が影響します。
アメリカとヨーロッパの学会がまとめたデータによると、一人の赤ちゃんがうまれるまでに平均25.1個の卵子が必要とされ、30~34歳は12.2個、41~42歳では40.2個というデータがあります。
ヒトは生まれる前に一度だけ卵子がつくられますが、それを使うまでの期間が長いので、卵子がすでに傷んでいます。また、ヒトは高度に進化した分、他の動物とくらべて子どもを授かることが難しくなったといわれていますが、生殖補助医療技術は年々進歩しています。一人でも多くの人に子どもを授かるという願いを叶えてもらいたいと思います。
最後に、体外受精・顕微授精では、採取された卵子・精子をあつかい、受精操作から受精卵の発育をみまもる「胚培養士」が重要な役割を担っています。治療を考えている方は、培養室の設備や胚培養士の充実度にも注目してみるとよいでしょう。
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浅田レディースクリニック 理事長 浅田義正(あさだよしまさ)
日本でも有数の体外受精成功率を誇り、愛知・東京でクリニック展開する「医療法人浅田レディースクリニック」の理事長を務める。海外での体外受精研究実績を持ち、顕微授精の第一人者。妊娠という“結果“を重視した「浅田式」不妊治療を行っている。