日本に帰国。家族の大切さを痛感する
猛暑で「暑い暑い」が口癖だった時期が嘘のように、めっきり涼しくなり、日本の四季の移ろいを楽しめる余裕があることが幸せと感じています。
日本に帰国してから半年が経ち、東京での子育ても板についてきました。
なんてったって、とにかくアメリカと比べて医療費が安い!
東京都は現在中学生まで医療費が無料という、アメリカ帰りの私にとっては奇跡の制度が存在するので、その恩恵を受けて、娘に少しでも心配なことがあるとすぐに病院に行っています。子供を持つ親にとって、医療へのアクセスが平等に与えられていることの大事さは、日本を出てみないと気づけないことだったなと痛感します。
そんなわけで、家族3人で東京で落ち着いた時間を過ごし始めたわけですが、次なるテーマが当然ですが私の前に現れます。
そう、ニューヨークにいつ戻るかという判断です。
長期に渡って日本から仕事を続けるのはマネージメントに影響が出るので、娘の通院終了に目処が出たところで戻ることを想定していました。もちろん、また母娘2人で戻ることになります。
私はフルタイム勤務、いや経営者なのでフルタイムというより、ずっと会社のことを考えていると言った方が正しい。
いつもうまくいくわけではない日々のマネージメントに頭を悩ませながら、1日の大半をベビーシッターに頼り、仕事が終わったら毎日ワンオペ。これからまた訪れる激動の毎日を乗り越えるために、どういう準備が必要かを考えていました。
そんな折、私はすっかり忘れてしまっていた、とっても大事なことに気付かされることになったのです。
現状にこだわらずに、今大事なものを見誤らずに、身軽に変化していく
転機は突然訪れるものです。
娘が寝た後に、いつも通り夫と夕飯を食べている時のことでした。
毎日成長を見せる我が子の写真を見返して、「こんなに可愛いって思えるって、幸せだね」と、毎晩毎晩同じ会話を繰り返しては、微笑ましく笑みが溢れる私たち。
親になって、共有できる幸せが増え、夫婦の絆はより強いものになっていました。
そう思いながら、私が何気なく放った質問。
「ニューヨークに戻ったら、またしばらく会えなくなるけど、寂しいよね〜?」
「うん、心の底から寂しいよ。でも、麻衣子の仕事も大事だから仕方がないけど」
読者の方からしたら、旦那さんはそりゃそうだろと驚きがないかもしれませんが、その時の夫の言葉が、その時の表情が、信じられないくらい私の心臓に突き刺さってしまったんです。
私は自分がアメリカで子育てを1人でやっていく大変さばかり考えていて、夫の気持ちは正直全く想像していませんでした。
約3年前、私がアメリカの会社に単身転職する話をしたときも、妊婦の状態でアメリカに1人で戻るときも、いつも「頑張ろうね!」と笑顔だった夫が、その時、心の底から本音を言っているのが分かりました。
それでも背中を押そうと我慢している夫を見て、私は初めて立ち止まりました。
一度しかない人生、やりたいことに身軽にチャレンジしていこうと走ってきた3年間。ここまで人生を変革できたのは紛れもなく、夫の存在があったからです。たった1人では絶対にこんなに素晴らしい時間を送れなかった。
そんな夫の人生を私は豊かにしてあげられているのだろうか?
人生には色んなフェーズがやってきます。ライフステージが幾重にも重なっています。大事な局面にぶち当たった時に、そこでの判断が未来をいかようにでも変えてしまいます。
現状にこだわらずに、今大事なものを見誤らずに、身軽に変化していく。それが私だ。
その晩、私は大事な決断をする準備に入ることになりました。
そう、家族3人で日本で暮らすことを最優先事項にしようと心が動き始めたのです。
もちろん、妊娠した瞬間から、こんな時が来るかもしれないと考えていなかったわけではありません。
でも産んでみて、我が子に対面してみて、3人家族になってみて、初めて分かることだってある。
一歩一歩進んできて、そこに至ったわけです。
ニューヨークより、キャリアより大事な時期もある。それだけです。
その先のお話はまた次回。
古瀬麻衣子
1984年生まれ。一橋大学卒。テレビ朝日に12年勤務。「帰れま10」などバラエティ番組プロデューサーとして奮闘。2020年、35歳で米国拠点のweb会社「Info Fresh Inc」代表取締役社長に就任。現在NY在住。日本人女性のキャリアアップをサポートする活動も独自に行なっている。
Instagram:@maiko_ok_
HP