不妊治療で起こりがちな「パートナーとの知識の差」
保険適用で不妊治療をおこなう場合、治療計画の作成時はご夫婦同席のもと同意が必要となります。夫婦の足並みをそろえて治療にのぞむことが大切になりますが、意見や感情のすれ違いで悩まれている患者さんも多くいらっしゃいます。
不妊治療をおこなっている20~40代男女300名にアンケート調査したところ、不妊治療を開始・継続していくうえで、「パートナーとの知識の差」をストレスに感じる人は男女ともに8割を超える結果に。またこのストレスが治療の継続にも影響していることがわかりました。
詳細を見てみましょう。
知識の差をどこで感じるかについて、男女ともに1位は「不妊の原因やからだのメカニズム」でした。また男女間で結果に差が開いたのは「治療におけるリスクや身体的負担」「国や自治体の支援制度」です。
つぎに、ストレスを感じる理由については、下記のような点があげられました。
・検査結果を見た時に、パートナーが重大さに気がついていない
・検査結果が出るまでの不安感を共有できない
・身体的な負担を軽視しがち
・どちらにも原因が見つからないときでも、やはり女性に原因があるとおもっていること
女性は排卵・月経があり、自身のからだのメカニズムや治療のベースとなる知識がある一方、男性は普段の生活で情報に触れる機会も少ないため、知識差がうまれ当事者意識も低くなりがちになっているのではないかと推察します。また不妊治療は夫婦同じ身体的負担があるわけではなく、女性側の身体的負担のほうが大きいため、男性側が共感しにくい状況になっているように感じます。
前向きに不妊治療をしている夫婦が取り組んでいることとは?
前向きに不妊治療をしている夫婦は、どのような取り組みをしているのでしょうか? アンケート結果によると、
・お互いに話しあう時間を設ける
・一緒に動画やテレビを見る
・同じ本や雑誌、記事を読む
など知識の差を埋めるための取り組みをしていることがわかりました。
一緒に調べて教え合う関係づくりが、前向きに不妊治療をつづけられるコツのようです。
男女のからだの仕組みや、治療に関して基本的な知識が夫婦で共有されていれば、避けられるすれ違いもあります。過去の記事ではからだの仕組みや不妊治療の基礎的な知識についてお話しました。ぜひ夫婦で正しい知識を身につけて、不妊治療にのぞんでいただければと思います。
データ出典:「不妊治療の男女間の知識差に関する実態調査」
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浅田レディースクリニック 理事長 浅田義正(あさだよしまさ)
日本でも有数の体外受精成功率を誇り、愛知・東京でクリニック展開する「医療法人浅田レディースクリニック」の理事長を務める。海外での体外受精研究実績を持ち、顕微授精の第一人者。妊娠という“結果“を重視した「浅田式」不妊治療を行っている。