卵子は老化する?
卵子は毎月卵巣でつくられ、排卵していると思っている方も多いでしょう。
卵子のもとになる細胞は、女性がお母さんのおなかのなかにいる時に一度だけつくられ、誕生時に約200万個蓄えています。その卵子のもとになる細胞は、これ以降増えることはなく、毎月卵巣でつくられているというわけではありません。
卵子のもとになる細胞は思春期になると、第二次性徴以降に一定の割合で目覚めて、卵子として成長。その後排卵していきます。
30歳であれば30年前につくられた卵子が、毎月排卵されていることになりますね。
皮膚などの体の組織は、幹細胞が新しい細胞を作り入れ替わっているので、年をとっても若々しさを維持できますが、卵子は新しい細胞をつくらないので、加齢の影響をうけてひとつひとつの細胞がそのまま老化します。
卵子が老化すると、どのようなことが起きる?
卵子が老化すると、見た目は若い卵子と変わりませんが、卵子としての機能、とくに受精後の機能障害が少しずつ増えていったり、その後の細胞分裂や染色体分離等がうまく進まなかったりします。つまり結果的に妊娠しずらくなるということです。
卵子の老化によって、すべての卵子がいっぺんに機能を失うわけではありませんが、年齢と共に徐々に妊娠する力が弱まり、35歳ごろから顕著に妊娠率が下がってきます。
妊娠しにくい原因は男女ともにありますが、今から30年以上前の女性側の原因は、排卵しない、両方の卵管が詰まっている、子宮外妊娠で卵管を切除した、子宮の形が妊娠しにくい子宮奇形といったものが要因でした。しかし現在は、夫婦ともに検査をしてもこれといった問題が見つからない、原因不明不妊が多くなっています。妊娠しにくいのは、加齢による「卵子の老化」が大きな要因と考えられています。
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今年の4月に不妊治療の保険適用が開始されました。
今まで自由診療のため高額となっていた不妊治療ですが、保険適用により治療を受けやすくなりました。なかなか赤ちゃんを授からないと気になった夫婦は、先延ばしせず早めに医療機関を受診することをおすすめします。また将来お子さんを望んでいる方も、正しい知識を身につけて人生設計をしてほしいと思います。
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浅田レディースクリニック 理事長 浅田義正(あさだよしまさ)
日本でも有数の体外受精成功率を誇り、愛知・東京でクリニック展開する「医療法人浅田レディースクリニック」の理事長を務める。海外での体外受精研究実績を持ち、顕微授精の第一人者。妊娠という“結果“を重視した「浅田式」不妊治療を行っている。