不妊症の原因とは?
妊娠しようと思って婦人科受診される方も多くおられます。
一般的に妊娠する力が正常なカップルでは、3ケ月で約50%、6ケ月で70~80%、1年で約90%が妊娠します。そのため、1年以上避妊せず性交渉を行っているにも関わらず、妊娠に至らない場合を不妊症といい、赤ちゃんを希望するカップルの10~15%に見られます。
まずは妊娠のメカニズム、ステップについて学びましょう。
◆妊娠までの4ステップ
1. 卵巣の中にある卵胞が卵巣の外へと飛び出すことを排卵と呼びます。排卵が起こるためには、脳にある視床下部から出ているFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)というホルモンが必要であり、正常に分泌されることで卵胞を発育させ排卵を起こします。
2. 排卵した卵子は、卵管采に取り込まれ、卵管のなかに入ります。
3. 排卵近くになると、精子が子宮に入りやすくなるよう子宮頚管粘液が大量に分泌されます。膣内に射精された精子がこの粘液を通り抜け、卵管にいる卵子と巡り合い受精します。
4. 受精した受精卵は、分割しながら子宮内膜までたどり着き、着床することで妊娠が成立します。
以上の4つのステップを経て妊娠が成立するわけです。逆に言うとこれらのステップのどれか一つにでも問題があれば妊娠が困難となってきます。次に上記1~4のそれぞれの項目について述べていきます。
不妊の原因と検査方法
1. 排卵因子
排卵しているかどうか、つまりホルモンバランスが整っているかどうかは採血で調べます。視床下部から出ているFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)は生理周期によってその値が変動します。
これらは生理中に採血することが勧められています。LHは排卵直前に分泌量が増加します。ちなみに薬局で購入できる排卵チェックキットはこのLHに対する検査キットです。また、排卵したことの証明となる黄体ホルモンは排卵後から分泌量が増加するため生理予定日の1週間くらい前に採血で評価するとよいでしょう。
この他にも排卵障害の原因となる甲状腺機能障害も採血で評価します。このほかに本来授乳期間に分泌量が増加して授乳を促すプロラクチンというホルモンがあります。授乳期間中はこのホルモン値が高く排卵が安定しません。授乳期間でもないのにこのプロラクチンが高く排卵障害を起こしている場合があります。
基礎体温の測定は排卵の評価に役立つと言えるでしょう。生理周期前半が低体温、生理周期後半が高体温であれば排卵していることが推定されます。ただしなかには卵胞が卵巣の外に飛び出すことなく体温が上がっていることもあり注意が必要です。
2. 卵管因子
排卵した卵子が卵管を通過できない場合があります。卵管が炎症などによって詰まっていると、妊娠は起こりません。卵管炎や骨盤腹膜炎の原因となるクラミジア感染症にかかったことがある方で、ほとんど無症状のうちに卵管が詰まっていることもあります。
また、強い生理痛がある女性の場合、子宮内膜症が潜在していることがありますが、この子宮内膜症の病変によって卵管周囲の癒着が起こり、卵管が詰まっている場合もあります。造影剤を卵管が通るかどうかの検査を行って卵管が詰まっていないかどうかを調べます。
子宮頸管は子宮の出口を巾着のように閉めてバリアをしている筒のような部分です。排卵が近づくとその筒の内部を満たす粘液が精子の貫通しやすい状態に変化しますが、この粘液の分泌が少なかったり、精子の貫通に適していなかったりすると、精子は子宮内に侵入しにくくなり、妊娠が起きにくくなります。
3. 頸管因子
性交後に頸管内の精子をみる検査としてフーナーテストがあります。フーナーテストは、性交から数時間後の子宮頸管粘液を採取し、その中の精子の数や活動状態を調べる検査です。性交から検査までの時間に関しては、3〜24時間以内と施設によって幅があります。
4. 子宮因子
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープや子宮の先天的な形態異常などにより、子宮内膜の血流が悪かったり、子宮内に過去の手術や炎症による癒着などがあると、子宮内に到達した受精卵の着床妨げ、妊娠に至らないことがあります。子宮のなかの状態を見る検査としてエコー検査、子宮鏡検査、MRI検査などがあります。
以上、1. 排卵因子、2. 卵管因子、3. 頸管因子、4. 子宮因子についての問題点、その検査方法について説明しました。
さいごに
ひとことに不妊といってもその原因は多岐にわたります。しかし忘れてならないのが不妊カップルの約50%に男性側の原因が存在すると言われています。これは1996年にWHO(世界保健機関)が発表しています。
今すぐ妊娠希望のある女性でなかなか妊娠に至らない場合はパートナーの検査をお勧めします。パートナーの検査は泌尿器科で行ってもらいましょう。今すぐに妊娠希望のない女性もこのことを覚えておいてくださいね。
不妊検査については施設によりできる検査は異なります。まずは、お近くの婦人科を受診して先生に相談してみてはいかがでしょうか。
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直レディースクリニック 院長 竹村直也
2000年神戸大学医学部卒業
2008年神戸大学医学部大学院修了
兵庫県立こども病院、日高医療センター勤務の後神戸大学病院産科婦人科助教。
淀川キリスト教病院産科婦人科部長、
竹村婦人科クリニック勤務後、2020年5月直レディースクリニック開業
資格:医学博士 産婦人科専門医 母体保護法指定医