【卵子の話】私たちが年をとる以上に卵子は早く年をとる
いま、日本人女性の平均寿命は約87歳になっています。昔に比べると女性の生き方は多様化していて、結婚適齢期という言葉も最近ではあまり聞かなくなりました。ただ、結婚適齢期について聞くことがなくなっても「妊娠」適齢期は昔も今も変わっていないことを忘れるわけにはいきません。
40代の女性が30代に見えようとも、高齢出産に関する医療技術が進もうとも、どれだけ平均寿命が延びようとも、妊娠出産できる期間は昔とほとんど変わっていないのが現実です。
ときどき有名人の高齢出産のニュースもありますが、誰もが同じように高齢出産ができるわけではありません。適齢期を過ぎてからの出産は、なにより母体に危険を伴います。また適齢期のうちに出産しないと困難をともなう理由のひとつに「卵子の老化」があります。
卵子の老化とは?
卵子のもとになる細胞は、女性がお母さんのおなかのなかにいる時に一度だけ作られます。500~700万個ある卵子のもとになる細胞は、これ以降に作られ増えることはありません。作られないということはつまり、40歳の女性であれば卵巣に残っている卵子も40年としをとっているということです。
卵子の老化によりどんな影響が起こるのでしょうか。卵子が老化すると卵子としての機能、とくに受精後の機能障害が少しずつ増えていき、その後の細胞分裂や染色体分離等がうまく進まなかったりします。結果的に妊娠しずらくなるということです。すべての卵子がいっぺんに機能を失ったりするわけではありませんが、年齢と共に徐々に妊娠する力が弱まり35歳頃から顕著に妊娠率が下がってきます。
また、皮膚などの体の組織は幹細胞が新しい細胞を作り入れ替わっているので、年をとっても若々しさを維持できますが、卵子は新しい細胞を作りません。加齢の影響をうけてひとつひとつの細胞がそのまま老化するので、アンチエイジングができないということ、覚えておきたいことのひとつです。
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浅田レディースクリニック 理事長 浅田義正(あさだ・よしまさ)
日本でも有数の体外受精成功率を誇り、愛知・東京でクリニック展開する「医療法人浅田レディースクリニック」の理事長を務める。海外での体外受精研究実績を持ち、顕微授精の第一人者。妊娠という“結果”を重視した「浅田式」不妊治療を行っている。