【セロトニンの性質】私たちへの影響
セロトニンは、主に幸福感や満足感を与える脳内ホルモンで“幸せホルモン”と呼ばれています。セロトニンの増減は生活習慣による影響を受け、食欲・睡眠・精神・自律神経に影響を与えることも。まずは、セロトニンの働きについて確認しましょう。
◆セロトニンと食欲
「セロトニン」とは、脳内で働く神経伝達物質のひとつで、感情や気分のコントロール・精神の安定に深く関わっています。
セロトニンが不足すると?
セロトニンが不足すると脳の機能の低下が見られたり、心のバランスを保つことが難しくなります。そのため、精神を安定させようと食欲や睡眠欲が増加してしまうことに。
特に、夏が終わって秋~冬に向かう時期は、日照時間や日射量が大きく減少するとともに「セロトニン」も不足します。“食欲の秋”というのは、このような人間の性質による表現なのかも知れません。
◆セロトニンと間食
甘いものがやめられない… それは、セロトニン不足が影響しているのかも知れません。
甘いものが食べたくなるのはなぜ?
甘いものを食べることで、脳内から「セロトニン」が分泌され、幸福感で満たされるからです。
間食はガマンすべき?
甘いものを一切やめてしまうと、セロトニンが不足した脳は不安でいっぱいに。その結果、衝動的に甘いものを求めて「ドカ食い」に走ってしまうことも。
◆セロトニンと睡眠
眠りには“睡眠ホルモン”と呼ばれている「メラトニン」の分泌が、大きく関わっています。
メラトニンを増やす方法は?
メラトニンの分泌を促すのは「セロトニン」という物質。さらに、そのセロトニンを生み出すのが「トリプトファン」という必須アミノ酸です。
トリプトファンを増やす方法は?
トリプトファンは体内で合成することができないため、食べ物から摂取する必要があります(※食べ物の章を参照)
◆セロトニンと腸内環境
実は、セロトニンの90%は“腸”でつくられます。腸内細菌が良ければセロトニンが十分に分泌され、幸せや満足を感じやすい状態に。
腸内環境が悪化すると…
腸内環境が乱れるとセロトニンが不足して、イライラや不安感の原因につながります。便秘がちな人は特に注意して、腸内環境を整える生活習慣を心がけましょう。
◆セロトニンと冬季うつ
日照時間の短さ(日光の不足)は、過眠・過食・体重増加等の季節性のうつ状態に関与しているといわれています。
【セロトニンと食事】でも解説しましたが、冬は「セロトニン」の分泌が減少する傾向にあるため、精神の安定や自律神経のバランスが崩れやすくなります。
【食べ物・成分】セロトニンを増やす方法
セロトニンの生成の仕組みや働きを確認できたところで、セロトニンの分泌を促す食べ物を紹介していきます。自分の状態に合った食べ物・成分を意識すると、より効果が期待できるでしょう。
◆セロトニンを増やす成分
“朝の過ごし方”とともに大事なのが“朝食”です。トリプトファンやビタミンB6を含む食品の摂取を心がけましょう。
朝食メニューのおすすめ
・バナナ
・納豆
・豆腐
・牛乳
・ヨーグルト
トリプトファンやビタミンBが「セロトニン」に変化します。
◆不眠解消におすすめの組み合わせ
睡眠の質を高めるためには「トリプトファンを多く含む食材を摂取すればいい」というわけではありません。下記3つの成分をバランスよく摂ることがことが大切です。
深い眠りを促す3つの成分
・トリプトファン
・ビタミンB6
・炭水化物
トリプトファンを摂取するタイミング
トリプトファンは朝に摂取することが重要。昼間の意欲的な活動が後押しされ、上手に疲れることができるため、快適な眠りをサポートしてくれます。
◆バナナ
先ほどの図からも分かるように、トリプトファン・ビタミンB6・炭水化物をバランスよく摂取できるのがバナナです。
バナナにはほかにも、主要ミネラルのひとつである「カリウム」が多く含まれていて、熱中症や夏バテが気になる夏にもおすすめの食べ物です。
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◆レシピ|バナナと牛乳のてもみジュース
朝食におすすめ! トリプトファンを効率よく摂取できる『バナナと牛乳のてもみジュース』を、睡眠コンサルタント・友野なお先生に教えていただきました。
【材料】
・バナナ:1本
・イチゴ:5粒
・ヨーグルト:100g
・牛乳:100ml
・ハチミツ:小さじ1
【作り方】
食材をひと口大のサイズにちぎり、袋のなかに入れて約1分ほど手で揉むだけ。
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◆大豆食
止まらない食欲・体重の増加が気になる人におすすめなのは大豆食。
トリプトファンのほかに「たんぱく質」や「食物繊維」も多く含むため、代謝を高めたり腸内環境を整える効果も期待できます。
シンプルな味わいでアレンジがきくので、使い勝手が良く継続しやすい食材ですね。
◆高カカオチョコレート
「甘いもの・間食がやめられない・控えたい」という人に朗報! ダイエット中であっても“適度な量の甘さ=糖質”は摂らないといけません。おすすめなのは、小腹がすいたら『高カカオチョコレート』を少しずつ食べるという方法。
高カカオチョコレートがおすすめの理由
・適度な糖質を摂りながら「カカオポリフェノール」も効率よく摂れる
・カカオポリフェノールには、セロトニンの分泌を促す働きがある
・甘すぎないのに幸せな気分になれる
「食物繊維」が豊富なチョコレートは、便のカサを増やして腸の動きを刺激する働きがあります。また、食後血糖値の上昇を抑えたり、血中のコレステロール濃度を下げたりといった、ダイエットに嬉しい作用もあるのです。
【日常の行為】セロトニンを増やす方法
日常のふとした瞬間や、いつもの行動をちょっぴり変えるだけでも、セロトニンの分泌が期待できます。一日のはじまり・疲れを感じたとき・いつもの習慣で意識してみて。
◆口角を上げる
“チョコレート2,000個分から得られる幸福感”に匹敵するといわれているのが、「口角を上げる」という動作。女性専門の疲労外来ドクター・工藤孝文先生に、口角を上げることの効能について教えていただきました。
口角を上げるとどうなる?
・心から楽しいと思ってなくても、脳が「楽しい」と勘違いする
・「セロトニン」だけでなく、神経伝達物質の「エンドルフィン」も分泌する
・腸内細菌ののバランスが整って免疫力がアップする
脳と腸は深く影響し合っています。そのため、笑顔を絶やさずにいることは、心身の健康を保つためにも大切なことなのです。
◆“挨拶”でヤル気アップ!
食事前後の挨拶「いただきます」と「ごちそうさま」。この行為は、脳の環境を整える意味でも効果があります。教えてくださったのは、脳科学者・西 剛志先生。
“食事に感謝”という行為は、脳をストレスフリーにしてくれます。食事に限らず“感謝”という行為は、「セロトニン」をはじめ、脳内麻薬ともいわれる「エンドルフィン」、幸せな気持ちに満たされる「オキシトシン」といったホルモンの分泌を促してくれるからです。
それだけでなく、やる気のもとである「ドーパミン」の分泌も期待できます。
◆良い睡眠のためにも太陽の光を浴びる
上手に寝るためには、朝の起床の仕方が大切です! 毎日取り入れたい朝の習慣について、睡眠・疲労回復の専門家である、福田英宏さんに教えていただきました。
セロトニンは、朝や日中に太陽の光を浴びることで分泌されます。実はこのセロトニン、夜になると眠気を促す「メラトニン」に変わり、快眠へと導いてくれるのです。朝起きたらすぐにカーテンを開け、太陽の光をしっかり浴びましょう。
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◆おすすめの“リズム運動”
自律神経を整える方法としてもおすすめなのは“リズム運動”。1日の生活の中で簡単に取り組める方法です。
このような“リズム運動”について、自律神経のスペシャリスト・小林弘幸先生に教えていただきました。リズム運動は幸せホルモンともいわれる「セロトニン」の分泌を高め、自律神経を整えることが報告されています。
リズム運動とは?
・深呼吸
・ウォーキング
・ガムを噛む など
日常生活で“ガムを噛む”ことを取り入れると、気分がよくなったり自律神経のバランスが改善され、唾液中の免疫物質濃度が増加するということが、私たちの最新の研究でわかっています。
ガムは自律神経を整えるだけでなく、脳血流を増加させたり、集中力を高めるなど、様々なよいことが期待できますので、ぜひ取り入れてみてください。
意外と陥りやすい「秋バテ」。夏に弱った体をととのえるメソッド
最後に
「毎日忙しく、心も体もストレスMAX」「ストレスを癒して幸福感を取り戻したい!」という女性に試してほしい、セロトニンを増やす方法を紹介しました。睡眠・食事・便秘など、ストレスの原因はどこにありますか? 日常で手軽にできる習慣と合わせて、自分に必要な成分を含む食事も取り入れていきましょう。
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