以心伝心とは?
以心伝心は「いしんでんしん」と読む四字熟語です。ここでは、以心伝心の意味や言葉の由来を解説します。
2つの意味がある
以心伝心は、文字や言葉を使わず心から心へ意思が通じ合うことを表す言葉です。お互いに深い理解や共感がある場合に使われます。親子や夫婦、長い付き合いのある友人など、深い絆がある人間関係で使われることが多いでしょう。
以心伝心は、職人や芸術家などがその技を伝授することを指して使う場合もあります。言葉で説明するのではなく、行動や態度を通じて伝えるという意味です。
なお、「意心伝心」と書くのは誤りであるため、注意してください。
いしん‐でんしん【以心伝心】
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 仏語。仏法の奥義を、言葉や文字を借りず師の心から弟子の心に伝えること。主に禅宗で用いる。→不立文字 (ふりゅうもんじ)
2 無言のうちに心が通じ合うこと。「—の間柄」
[補説]「意心伝心」と書くのは誤り。
言葉の由来
以心伝心は「心をもって心に伝う」と訓読し、仏教の教えが由来とされる言葉です。
仏法の極意は経典に記されてはいるものの、それだけでは悟りの極意が伝えられるわけではありません。言葉や文字で表せない神髄は、師の心から弟子の心へと、直接伝えられるものであることを指しています。
現代ではより幅広く、気心の知れた仲を表す言葉として使われています。
以心伝心の使い方・例文
以心伝心の使い方について、例文を通して確認していきましょう。
・あの夫婦は長年連れ添っただけに、以心伝心でお互いの気持ちがわかる
・彼とは幼なじみで、昔から以心伝心といえるほどの間柄だ
・以心伝心とまではいかないが、課長とは良好な関係が続いている
・あの2人はチームの中心となり、以心伝心のコンビネーションで活躍している
・以心伝心とまでいわれていた2人が別れたことで、みんなが驚いている
以心伝心の類義語・言い換え表現
以心伝心には、次のような類義語・言い換え表現ががあげられます。
・阿吽の呼吸(あうんのこきゅう)
・同調(どうちょう)
・意気投合(いきとうごう)
・暗黙の了解(あんもくのりょうかい)
お互いの心が通じ合うという意味で以心伝心と共通していますが、それぞれニュアンスは異なります。場面に応じて使い分けるとよいでしょう。
ここでは、以心伝心の類義語を紹介します。
阿吽の呼吸
阿吽の呼吸とは、2人以上で一緒に物事を行う際、お互いに息が合っていることを表す言葉です。
言葉がなくても意思の疎通ができており、行動やタイミングが一致している様子を指します。以心伝心とよく似ている言葉といえるでしょう。
(例文)
・チームメンバーは阿吽の呼吸でプロジェクトを進め、見事に成功させた
・講師が話を中断するタイミングを逃さず、彼は阿吽の呼吸で次のスライドをセッティングした
同調
同調とは、他のものと調子を合わせることです。調子が合うという点で、以心伝心と似ています。
ただし、以心伝心は言葉にしなくても分かり合えるという意味であるのに対し、同調は言葉や態度になったものに対して、自分が合わせるという点が異なります。
(例文)
・時間をかけて説得すれば、彼女はこちらの考え方に同調してくれるはずだ
・人の意見に対し、よく考えずにすぐ同調してしまうのはあまり感心しない
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意気投合
意気投合とは、お互いの気持ちや考えなどが一致するという意味です。
「意気」は心にあふれる元気や気概という意味で、「投合」は2つのものがぴったりと合うことを指します。これらを合わせ、お互いの気持ちがぴったりと合うことを表した言葉です。
(例文)
・彼女とは初めて会ったときから意気投合し、今ではかけがえのない親友になった
・セミナーで隣り合わせになった2人はすっかり意気投合し、一緒に会社を設立するまでになった
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暗黙の了解
暗黙の了解は、口に出しては明言しないものの、当事者では理解や納得が得られていることを指します。「暗黙のルール」といわれることもあります。
暗黙の了解は、職場や友人同士など限られた場所で共有されていることもあれば、常識のように広く認識されている事柄もあるでしょう。
(例文)
・職場では、来客へのお茶出しは新入社員が行うことが暗黙の了解になっている
・電車内では、優先座席でなくとも高齢者や妊婦に席を譲るのが暗黙の了解だ
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以心伝心の対義語
以心伝心には、次のような対義語もあげられます。
・同床異夢(どうしょういむ)
・隔靴掻痒(かっかそうよう)
いずれも、周囲や相手と気持ちが通じ合わないという意味で以心伝心の対義語になるといえるでしょう。
詳しくみていきます。
同床異夢
同床異夢とは、同じ寝床に寝ても、それぞれ違った夢を見ることです。これが転じて、同じ立場にありながら、考え方や目的が違うということを表しています。
職場の仲間や夫婦でも、別の意見や考えを持っているという意味で使われています。
(例文)
・あの部署の人たちは同床異夢で、それぞれの価値観がかけ離れている。仕事では協力し合っているが、退社後の付き合いは一切ないらしい
・彼との結婚は同床異夢で、家庭に対する考え方がまったく異なっていた
隔靴掻痒
隔靴掻痒とは、靴の上から足を掻くという意味です。思いどおりに物事が進まず、歯がゆい様子を表しています。自分の心とはかけ離れているという意味で、以心伝心とは反対の言葉といえるでしょう。
(例文)
・会議では議論が空回りしていつまでも結論が出ないため、彼は隔靴掻痒の思いを強くしていた
・周りの社員は年代が離れており、いつも話が噛み合わないため、彼女はいつも隔靴掻痒の感を抱いている
以心伝心の意味と使い方を理解しよう
以心伝心は、言葉にしなくても相手と心が通じ合っている様子を表します。夫婦や長年の親友、チームの仲間など、気心が知れて息の合う関係性を指して使われる言葉です。
類義語には、阿吽の呼吸や意気投合などがあげられます。一緒に覚えれば、以心伝心の理解がより深まるでしょう。
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