ユートピア(utopia)とは? 意味をわかりやすく紹介
ユートピア(utopia)とは、ギリシャ語を組み合わせて作られた言葉で「どこにもない場所」の意味です。イギリスの政治家であり思想家でもあるトマス=モア(1478~1535)が、1516年に発表した長編小説のタイトルとしても知られています。
なお、トマス=モアは政治家や大法官としても活躍しましたが、カトリック教徒の立場からヘンリー8世の離婚に反対したことをきっかけとして、投獄されて処刑されました。
意味1.どこにもない場所
元々ギリシャ語では「ou」が英語の「not(ではない)」、「topos」が「place(場所)」に相当します。つなげた造語「outopos」で「どこにもない場所」という意味で使われていたようです。
意味2.理想郷
長編小説「ユートピア」のなかでは、ユートピアはトマス=モアが考える理想的な社会として位置づけられています。そこから転じて、ユートピアという語も「理想郷」や「理想の国」の意味で使われるようになりました。
ユートピア(Utopia)
出典:小学館 デジタル大辞泉
《ギリシャ語からの造語で、どこにもない場所の意》
トマス=モアの長編小説。1516年刊。原文はラテン語。架空の国ユートピアの見聞録というかたちで、当時のヨーロッパ社会を批判、自由平等な共産主義的社会、宗教の寛容を説く。
(utopia)《から転じて》空想された理想的な社会。理想郷。理想の国。無可有郷むかうのさと。
ユートピアと類似する意味の言葉
ユートピアのように、実際には存在しない場所や理想郷を指す言葉としては、次のものが挙げられます。
・桃源郷
・別天地
・シャングリラ
・華胥(かしょ)の国
それぞれの意味やニュアンスの違いについて紹介します。
桃源郷
桃源郷(とうげんきょう)とは、陶淵明の伝奇小説「桃花源記」に描かれている平和で豊かな村のことで、そこから転じて、俗界を離れた別世界や理想郷の意味で使われるようになりました。
桃花源記は、ある漁師が桃の花が咲き乱れる平和な村を見つけたものの、もう一度行こうとしても果たせなかったというストーリーです。なお、陶淵明は詩人で、一度は官職に就いたものの、束縛を嫌って職を辞し故郷に戻りました。その後は自然を愛して田園生活を送り、「飲酒」などの優れた詩を多く残しています。
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別天地
別天地(べってんち)とは、現実とはまったく異なる理想的な世界のことです。唐王朝時代の詩人・李白の詩から広まった言葉とされています。
シャングリラ
シャングリラ(Shangri-la)とは、イギリスの作家ジェームズ=ヒルトンの小説「失われた地平線」に描かれた理想郷の名前です。そこから転じて、シャングリラは「理想郷」や「桃源郷」の意味で使われるようになりました。
華胥(かしょ)の国
華胥の国とは、中国の黄帝(こうてい)が夢のなかで見たという無為自然で治まる理想の国のことです。華胥の国を使った言い回しとしては、「華胥の国に遊ぶ」というものがあります。これはよい気持ちで昼寝をするという意味で実際に遊ぶという表現ではありません。
なお、黄帝は実際に存在した帝王ではなく中国古代の伝説の帝王とされており、衣類や貨幣、暦、音律、医薬などの基礎を作ったとされています。
ユートピアの反対語はディストピア
ユートピアの反対語は、ディストピア(dystopia)です。暗黒世界や反理想郷の意味で使われます。また、暗黒世界を描いた小説や映画などの作品を指すこともあります。
・彼の新作はディストピア小説だ。絶望的な描写が続き、気が滅入る
・世の中がおかしな方向に進んでいる。ディストピアが現実になりそうで怖い
たとえば、非人道的な行為が当たり前になっている社会や、極度の貧困、抑圧的な政府などが存在する未来はディストピアと呼ばれることがあります。
ユートピアの意味を押さえよう
ユートピアは存在しない場所や理想郷を指す言葉です。とりわけ理想郷の意味で使われることが多く、社名や施設名、芸術作品のタイトルなどで見かけることがあります。
ユートピアの意味を理解していると、「なぜこの施設にユートピアという名前をつけたのか」がわかり、オーナーや創業者の思いに思いを巡らしやすくなるかもしれません。また、ユートピアと同様に、理想郷の意味で使われる言葉も覚えておきましょう。
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