孟母三遷とは?
孟母三遷(もうぼさんせん)とは『古列女伝‐母儀・鄒孟軻母』に由来する四字熟語です。中国・戦国時代の思想家である孟子の母は、子供の教育環境を重要視していたそうです。
子供が周囲から悪影響を受けないよう居所を三度変えた逸話から、孟母三遷という四字熟語が生まれたといわれています。
一度目は墓地の近くに住んでおり、子供が葬式の真似事ばかりするようになってしまったのだとか。二度目は市場の近くに移動しました。すると今度は商人の真似事ばかりするようになり、最後は学校の近くに転居したという逸話です。
学校の近くに住み始めると、子供は礼儀作法を真似するようになったそうです。その姿を見て、孟母は「ここがわが子のいるべき場所」と結論づけたといわれています。
孟母三遷の教え
出典:小学館 精選版 日本国語大辞典
《「古烈女伝」母儀・鄒孟軻母から》孟子の母は、はじめ墓場のそばに住んでいたが、孟子が葬式のまねばかりしているので、市場近くに転居した。ところが今度は孟子が商人の駆け引きをまねるので、学校のそばに転居した。すると礼儀作法をまねるようになったので、これこそ教育に最適の場所だとして定住したという故事。教育には環境が大切であるという教え。また、教育熱心な母親のたとえ。三遷の教え。
孟母三遷の使い方
前章で解説したように、孟母三遷は子供の教育にまつわる四字熟語です。しかし、普段は聞きなれない熟語であるため、いざ使おうとしても使い方がわからない人もいるかもしれません。
本章では「孟母三遷」の使い方として、会話例や例文を紹介します。
孟母三遷の会話例
A「この町は教育意識が高く、孟母三遷の教えを守る母親が多いらしいよ」
B「そうらしいね。教育制度を意識して引っ越してくる家族も多いとか」
A「たくさん習い事している子がたくさんいるって、子供から聞いたわ」
B「うちも、教育水準を考え直そうかな」
孟母三遷の例文
・孟母三遷の教えにあるように、子供は周囲の環境から影響を受けやすい。子供が見るテレビ番組や情報には、十分に考慮したいものだ
・孟母三遷の教えを信じて、有名な私立学校に入学した
・引っ越し先では、孟母三遷の教えに従って、教育環境の整った場所にしたいと考えている
中国故事に由来する4つの四字熟語
孟母三遷は、中国故事に由来する四字熟語です。中国故事に由来する四字熟語は他にも複数あり、たとえば「臥薪嘗胆」「画竜点睛」「朝三暮四」「四面楚歌」などが挙げられます。
本章では、上記4つについて解説。1つの熟語を覚える場合、関連した言葉も合わせて覚えておくことで、ボキャブラリー向上が期待できるでしょう。
1. 臥薪嘗胆(がしんしょうたん)
臥薪嘗胆は、復讐を心に誓い、辛苦する様を表す四字熟語です。復讐だけでなく、目的を成し遂げるために苦労しながら努力を重ねるといった意味をもちます。
中国春秋時代、呉王夫差が父の仇打ちをするために、薪の上に寝ながら復讐心をかきたてた話に由来しているとされます。
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2. 画竜点睛(がりょうてんせい)
画竜点睛(がりょうてんせい)とは、物事を完成させるために必要となる「最後の仕上げ」を意味する言葉です。言葉のポイントは、最後に加えるということです。
また、注目したいのが「睛」という漢字。間違えやすい漢字に「晴」がありますが、こちらは単に天候を指す言葉です。一方で「睛」は「瞳」という意味をもちます。
つまり画竜点睛は、竜の画(絵)に瞳の点を打つという意味です。
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3. 朝三暮四(ちょうさんぼし)
朝三暮四(ちょうさんぼし)とは、物事をうまく丸め込むことを意味します。他にも、対して差がない2つのものや、目先の利益に囚われて対局を見失うことも指す四字熟語です。
朝三暮四とは、朝三つ夕方四つと書きますが、これは数字を入れ替えても意味は同じです。変わらないにもかかわらず、相手を言いくるめることを指します。
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4. 四面楚歌(しめんそか)
四面楚歌(しめんそか)とは、周囲が敵だらけの状況を指す四字熟語です。また、一人も味方がいないことを指す言葉でもあります。
四面とは文字通り四方向のこと、楚歌とは楚の国(現在でいう中国の中南部)を指す言葉です。敵に囲まれて、絶体絶命な様子を「四面楚歌」と表します。楚の項羽(こうう)と漢の劉邦(りゅうほう)の争いに由来しているとされます。
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子供の「教育」に関する四字熟語
教育に関する四字熟語は、孟母三遷のほかにも複数あります。たとえば、「麻中之蓬」や「知育偏重」、「格別致知」、「孟母断機」です。
いずれも教育について、何が重要なのかを説いた熟語です。同じく「教育」にまつわる四字熟語でも、ややニュアンスが異なるので、注目してみましょう。
1. 麻中之蓬(まちゅうのよもぎ)
麻中之蓬(まちゅうのよもぎ)とは、よい環境や教育、人脈があれば真っ直ぐな人間になるという意味をもつ四字熟語。曲がりやすい性質を持つよもぎも、麻の中で育てばまっすぐに育つということが由来となっているようです。
人間の成長には環境が重要であるという考えは、孟母三遷と共通しているといえるでしょう。孟母三遷はあくまでも住環境を元にした四字熟語ですが、麻中之蓬は人間関係や教育すべて含めて「環境」と考えられています。
2. 知育偏重(ちいくへんちょう)
教育とはおもに、徳育や知育、体育といった三要素からなると考えられています。知育偏重(ちいくへんちょう)とは、三要素の中でも「知育」だけを重んじる考え方のことです。
「偏る」という漢字が入っていることからもわかるように、知識を詰め込むことを重視した教育体制への批判を込めているともいえる言葉です。
3. 格物致知(かくぶつちち)
格別致知(かくぶつちち)とは、物事の道理を極め、学問や知識を高めることを意味する四字熟語です。これに加えて、表面的な知識を学ぶだけでは、真の学問といえないという教訓も込められています。
4. 孟母断機(もうぼだんき)
孟母断機(もうぼだんき)とは、学問を途中で放り出すことの愚かさを伝える四字熟語です。孟母とは、孟母三遷の由来で登場する母親と同一人物であり、断機とは織かけの糸を切断する行為を表しています。
由来となった故事では、孟母は子供が勉強を投げ出そうとするたびに、機織りの糸を途中で切り、「学問を途中でやめることは、この機織りと同じだ」と諭したそうです。
「孟母三遷」の戒めを心に刻もう
孟母三遷とは、子供の教育には育つ環境が大切だという意味をもつ四字熟語です。孟母三遷のように、中国故事から誕生した四字熟語には「臥薪嘗胆」「画竜点睛」「朝三暮四」「四面楚歌」などがあります。
また、孟母三遷と同じく「教育」に関連した四字熟語には、「麻中之蓬」や「知育偏重」、「格別致知」、「孟母断機」があげられます。セットで覚えておくとよいでしょう。
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