起承転結とは?わかりやすく解説
起承転結(きしょうてんけつ)とは、漢詩、特に絶句(ぜっく)の構成法のことです。
絶句は4つの句で構成される詩体の一つで、1句が5字の五言絶句と7字の七言絶句があります。いずれもまずは第1句の起句で詩意を言い起こし、第2句の承句でそれを受け、第3句の転句で素材を転じて発展させ、第4句の結句で全体を結びます。
また、起承転結は、物事の順序や組み立ての意味で使われることもある言葉です。たとえば次のように使います。
・もう少し起承転結を意識して、文章を書いてみてはどうだろうか
・その小説は起承転結が不明瞭なため、何が言いたいか理解しにくい。
き‐しょう‐てん‐けつ
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 漢詩、特に絶句の構成法。第1句の起句で詩意を言い起こし、第2句の承句でそれを受け、第3句の転句で素材を転じて発展させ、第4句の結句で全体を結ぶ。起承転合。
2 物事の順序や、組み立て。
起承転結のそれぞれの意味
起承転結は起・承・転・結それぞれに意味があります。各漢字の意味について見ていきましょう。
「起」とは?
「起」の漢字には、次の意味があります。
1.起き上がる、高くせり上がる
2.仕事・活動を始める
3.物事の始まり
起句の「起」は、物事の始まりの意味です。起句から詩が始まり、承句・転句・結句と続いていきます。また、起句と同じように始まりを意味する「起」を使う熟語としては、起源や起因などが挙げられます。
「承」とは?
「承」の漢字には、次の意味があります。
1.前のものを受け継ぐ
2.相手の意向を受け入れる
承句の「承」は、前のものを受け継ぐという意味です。承句は前のものである「起句」を受け継ぎ、次の転句へとつなぎます。また、承句と同じように「前のものを受け継ぐ」の意味の「承」を使う熟語としては、承継や継承、伝承などが挙げられます。
「転」とは?
「転」の漢字には次の意味があります。
1.くるくる回る。転がる、転がす
2.ひっくり返る。転ぶ
3.方向を変える。変わる、変化する
4.場所を変える。移る、移す
転句の「転」は、方向を変えるという意味です。起句・承句と続いてきた流れを「転句」で断ち切り、別の方向へと導きます。また、転句と同じように「方向を変える」の意味の「転」を使う熟語としては、転換や転向、急転などが挙げられます。
「結」とは?
「結」の漢字には、次の意味があります。
1.紐などで結ぶ。結びつける
2.組み立てる。構造物・組織体を造る
3.ばらばらのものを一つにまとめる。まとまる
4.固める、固まる
5.締めくくる、終わりになる
6.塞がる
結句の「結」は、締めくくるという意味です。「転句」によって変化が与えられた詩を「結句」で終わらせます。結句と同じように「締めくくる、終わりになる」の意味の「結」を使う熟語としては、結果や結局、完結などが挙げられます。
起承転結を文章の書き方に活かす方法
起承転結は漢詩だけでなく、小説やエッセイにも使われる傾向にある構成法です。文章全体を4つの部分に分け、それぞれ起区・承区・転区・結句に相当する役割を持たせることで緩急をつけます。
・起:状況の説明。筆者や主人公の紹介など
・承:「起」から物語がわずかに展開。「起」では説明できなかったことを補足的に紹介するなど
・転:「起」と「承」にはなかった事象が登場
・結:「起」「承」「転」の内容をまとめる
丁寧に「起」「承」「転」を描くことで、物語の最後の部分である「結」が輝きます。学校によっては、起承転結の構文を使って文章を書く練習をすることもあるようです。
起承転結を意識した文章のメリット
起承転結を意識して文章を書くことには、次のメリットがあげられます。
・シンプルな構造のため、文章を簡潔にまとめられる
・物事が大きく動く「転」の部分があるため、印象に残りやすい
・よく使われる構造のため、多くの人々に理解されやすい
・順序立てて話が進むため、説得力のある文章に仕上がる
「最初に状況や登場人物を紹介し、物語を穏やかに進め、急激な展開を見せて結論へとつなぐ」という起承転結のスタイルを使った文章は多く、読み手にも安心感を持って受け取られやすいといえます。
「転」の部分を工夫すれば、さらにインパクトのある文章に仕上げることも可能でしょう。たとえば「起」と「承」で事実を淡々と紹介し、「転」であえてその事実を否定して読み手の感情を揺さぶり、「結」で述べる結論を信じやすくするケースもあります。
起承転結を踏まえた文章のデメリット
起承転結を踏まえて文章を書くことには、デメリットも考えられます。よくあるデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
・複雑な議論を文章化できない
・結論が後回しになるため、読み手にストレスを与える
起承転結はシンプルな構造のため、転機が何度もあるストーリーや結論のない話を表現しにくいといえます。また、結論を最後に紹介するため、読み手によってはストレスを感じることもあるかもしれません。
起承転結をビジネスに活かす方法
最後に結論を述べるスタイルの起承転結は、結果が迅速に求められるビジネスとはあまり相性がよいとはいえないかもしれません。
ビジネスでは、最初に結果を説明し、その後に結果を導き出した流れやほかの話題・課題などについて触れることが一般的です。
しかし、あえて最初に背景や転機などを説明することで、話にストーリー性が生まれ、相手を引き込みやすくなることもあります。
たとえば、新しい商品・サービスが誕生したいきさつを説明するときや、創業者の思いを紹介するときなど、結論をすぐに述べる必要性が低いと思われるケースでは起承転結を使ってみてもよいかもしれません。
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起承転結の考え方を応用してみよう
起承転結は、物事を整理して文章化するときに活用できる考え方です。物事が複雑になりそうなときは、起承転結を使って「背景」「発展」「転機」「結論」のように4つの部分に分けて整理できるかもしれません。
また、シンプルな構造のため、わかりやすく説得力のある文章に仕上がるのも起承転結の特徴といえます。文章がまとまっていないと感じたときは、起承転結を応用してみるのも一つの方法です。
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