プレゼン成功の秘訣は、「100−99=1」
仕事がデキる人は「表」ではなく「裏」で数字をうまく使う。
この連載でお伝えしてきたことです。具体的には、「法則っぽい」ものを数字でつくり、それを忠実に実行しています。ここまでご紹介してきた「3−1−4」「1グラフ・1オブジェクト・1メッセージ」などがその典型ですね。
そこで今回もいわゆる「プレゼン」で必要となる考え方を、数字を使って法則っぽく説明してみたいと思います。
「100−99=1」
もちろんこれだけでは何のことだかわかりません。少しずつ意味づけをしていきたいと思います。
たとえばあなたが上司ひとりに対して行うプレゼンであれば、その内容はその上司向けのものであればよく、もっとも簡単な仕事といえるでしょう。
そこで「100名の前でしなければならないプレゼンの場合はどうなのか」と考えてみます。実際のところ、100名全員が同じように納得できるプレゼンなど可能なものでしょうか。私は「そんなことは不可能」と考えます。
たとえばインターネット書店でのレビューなどを見ると、同じ本でも驚くほど読者によって評価や捉え方が違うことに気づきます。100名全員が「Good!」と評する本など、存在しないと言っても過言ではないでしょう。
1人から「Good!」と言われない本は、2人から「Good!」と言われることはありません。2人から「Good!」と言われない本は、3人から「Good!」と言われることはありません。そう考えると、本というものは究極的には1人から「Good!」と言われるようにつくらなければなりません。
(理屈っぽいかもしれませんが、数学の人間はこのように考えるものなのです)
プレゼンもこれと同じものではないでしょうか。100名全員が同じように納得することを目指すのではなく、たった1人に納得してもらうように準備する。つまり、100名のうち99名は捨てるのです。
ビジネスシーンならば、そのプレゼンはどういう人に納得してもらうか、満足してもらうかを具体的に定義することが重要になります。私も講演会などに登壇してお話をする機会はたくさんありますが、必ず「1人」を具体的に定義しています。たとえば……
「数字が苦手だと思っていて、でも上司から数字で説明することを求められていて、かつそれにストレスを感じていて、でもやっぱり上司から評価されたいと心のどこかで思っている、いまの仕事は大好きな30代女性ビジネスパーソン」
といった具合です。
でもこうして具体的にすることで、話す内容や事例に統一感が出ますので、そのひとりにとっては最高に共感できる(学べる)講演会になります。不思議なもので、そういうプレゼンは話がわかりやすく構成されていますから、結果的に多くの方が共感できる(学べる)内容になっているのです。
上司ひとりが相手でも、100名の聴衆が相手でも、プレゼンはあくまで1人に向けてする。「100−99=1」を意識してプレゼンの準備をしてみてください。
仕事上手な人は、表面上は誰もわからないコツを隠れてうまく使っています。まさに「表」ではなく「裏」で数字を使うのですね。
深沢真太郎 ビジネス数学の専門家/人材教育コンサルタント
BMコンサルティング株式会社代表取締役/多摩大学非常勤講師/理学修士(数学)
ビジネスパーソンの思考力や数字力を鍛える「ビジネス数学」を提唱し人財育成に従事。著作多数。
文化放送「The News Masters TOKYO」ニュースマスター
ラジオ『深沢真太郎のビジネス数学カフェ』パーソナリティ
パールハーバープロダクション所属(文化人タレント)
国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者
公式チャンネル「ビジネス数学TV」