伝わるビジネスフレーズには必ず「数字」が入っている
数字とはコトバである。これはこの連載を通じてお伝えしている重要なコンセプトです。前回までの計算というテーマにおいても、実はその本質はコトバの組み合わせに過ぎないと解説しました。
ではどうすれば私たちビジネスパーソンはもっと数字というコトバを味方につけられるのか。そろそろ実践的な内容をご紹介していくことにしましょう。今回からしばらくはテーマを「ビジネスフレーズ」とします。言い換えれば、ビジネスでよく使う“言い回し”のことです。
さっそくですが、職場で上司がよく言うことやビジネス誌などによく書かれていること、それらはおそらく「はいはい、わかっていますよそんなこと…」と心の中で呟きたくなるような内容ではないでしょうか。いくつか具体例を挙げましょう。
「プレゼンは、簡潔にわかりやすく!」
「残業を減らす努力をしよう。生産性の時代だしな」
「けっきょく、基礎がわかっていない奴はいつか行き詰まるんだよな」
「まず前提が何かを説明しないと、議論できないよ」
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いかがでしょう。今さら言われなくても「はいはい、わかっていますよそんなこと…」なフレーズではないでしょうか。
こんなことを“ドヤ顔”で言ってくる上司に対して、おそらくあなたはいい感情を抱かないでしょう。でもそれは言い換えれば、あなたがそういったフレーズを誰かに対して言うときにも同じことが言えるはず。
今さら言われなくてもわかっていることを“そのまま”言われても、ちっとも相手には伝わらないし、響かないのです。
一方で、仕事をしていればいろいろうまくいかないことも。そんな今さら言われなくてもわかっていることをあえて言わなければならないシーンがあるのもまた事実です。そこで私が提案したいのは、伝えている内容は同じだけれど、伝え方を変えるということです。
具体的には、あえて(無理やりでもいいので)数字を使って表現するのです。
たとえば先ほどの例からひとつピックアップしましょう。
「プレゼンは、簡潔にわかりやすく!」
このビジネスフレーズも、私は企業研修やセミナーなどの場では次のように変換して参加者に伝えています。
「プレゼンは、3-1-3」
いきなり3つも数字が登場して戸惑われるかもしれませんが、伝えていることはとてもシンプル。どんなプレゼンも必ず、3分間で、1つのことを、最大3つの要素で説明するように設計しなさいということです。お気づきのように、伝えていることは「簡潔にわかりやすく」ということに他なりません。
ところが、この数字を入れた言い回しで伝えた方が、実際は頷いたりメモをとったりする人が圧倒的に多いのです。
「プレゼンは、簡潔にわかりやすく!」ではあまりに当たり前すぎて聞き流してしまう。ところが、「プレゼンは、3-1-3」と伝えるとノウハウっぽく(?)聞こえるのか、しっかり伝わるのです。
そして驚くことに、その後は研修の演習時間中などにこの「3-1-3」というフレーズを参加者が自然に発するのです。もちろん私は何の強制もしておりません。数字で伝えた方が、相手のアタマに残るのでしょう。
あなたが同僚や後輩に普段から当たり前のように言っていることはありませんか。もしそれがイマイチ伝わっていないと感じていたら、あえて数字を使って表現してみてはいかがでしょう。伝わり方が劇的に変わることを実感できるはずです。やはり数字は「コトバ」だと思って使ったほうが、ビジネスパーソンにはメリットがありそうです。
深沢真太郎 ビジネス数学の専門家/人材教育コンサルタント
深沢真太郎 ビジネス数学の専門家/人材教育コンサルタント
BMコンサルティング株式会社代表取締役/多摩大学非常勤講師/理学修士(数学)
ビジネスパーソンの思考力や数字力を鍛える「ビジネス数学」を提唱し人財育成に従事。著作多数。
文化放送「The News Masters TOKYO」ニュースマスター
ラジオ『深沢真太郎のビジネス数学カフェ』パーソナリティ
パールハーバープロダクション所属(文化人タレント)
国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者
公式チャンネル「ビジネス数学TV」